【読書記録】〝三途の川で落としもの〟西條奈加 著
みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル・ヨムノスキーです。
今回は、西條奈加さんの物語から、最近読んだ〝三途の川で落としもの〟をご紹介します。
西條奈加さんといえば、〝心淋し川〟で第164回直木賞を受賞されたこともあって、時代小説家というイメージが強いと思いますが、実はSFやミステリー、政治小説など様々なジャンルの物語の書き手でもあります。
2021年の春ごろ、高田郁さんの〝みをつくし料理帳〟シリーズを読み終えて、そのままの勢いて飛び込んだ西條作品。時代モノをほぼ読破して、現代モノに手を出し始めたところで、ちょうど本屋大賞の発表が…。
慌てて候補作を読んでいるうちに、つい手が遠のいてしまい、今回Twitter上でこの本の読了ツイートを見つけ、そういえばと手に取ってみました。
まず、ミステリー要素として、叶人はなぜ端から落ちたのか?一緒に渡守をする十蔵と虎之助はなぜ成仏できずに渡守をしているのか?この二つの謎が大きな読みどころだと思います。
そして物語中に大きな問いが投げかけられます。
一つ目は「親が子供を傷つけることと、子供が親を傷つけることは、どちらの方が罪が重いか」
そしてもう一つが「街中で人を殺すと罪になるのに、なぜ戦争で人を殺しても罪にならないのか」
あなたならこの問いにどう答えますか?
様々な理由で成仏できずにいる幽霊たちや、上に挙げた問いと向き合うことで、叶人は少しずつ成長していきます。
全体としては、重厚で哲学的なテーマを秘めた物語ですが、現代人の叶人と江戸時代に死んだ渡守の十蔵と虎之助との会話が軽妙というかチグハグで笑わせてくれるし、ところどころに織り込まれる色彩表現がとても鮮やかで最後まで読み終えると、自然に笑顔が溢れてくる物語でした。
この物語、12歳の少年、侍姿の渡守、金髪碧眼美女の奪衣婆、チビデブハゲ茶瓶の懸衣翁などなかなか個性的なキャラが勢揃いしてわちゃわちゃする話なので、メディア展開するなら映画やアニメではなくて、是非舞台で観てみたいです。できれば演劇集団キャラメルボックスの舞台で。
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
最後に、
「読書っていいよね!」
【この記事で紹介した本】
タイトル:三途の川で落としもの
著者:西條奈加
出版社:幻冬社
レーベル:幻冬社文庫
ページ数:326
解説:小池啓介(書評ライター)
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