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【読書記録】2024年2月11日〜2月17日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 春一番が吹いて鼻がムズムズ、眼がショボショボする季節となりました。
 おまけに朝晩と日中の気温差が激しくて、もう身体はガタガタ。
 テレビではほとんど報道されなくなったけど、なんだかコロナも蔓延しているみたいだし、今年は例年になくインフルエンザも流行っている様子。
 電車で通勤するようになり、朝晩満員電車に揺られるようになって思うことは、あの頃の自粛ムードはいったいどこに行ってしまったのかということ。
 確かに、経済を回すことは大切らしい。
 確かに、コロナウイルスの症状は当初に比べて軽くなったらしい。
 しかし、インフルエンザでいうところの「タミフル」のような特効薬が完成したという話は、少なくとも私は聞いたことがない。
 これで本当に大丈夫か??

 なーんて難しいことを考えていても仕方ないので、早速今週出会った本たちを紹介します。

【2024年2月11日〜2月17日に出会った本たち】

⚪️夜市
 著者 恒川光太郎

【内容紹介】
 何でも売っている不思議な市場「夜市」。幼いころ夜市に迷い込んだ裕司は、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた――。直木賞の候補にもなったホラー大賞受賞作!

出版書誌データベースより

【感想】
 SNSで時々見かけて気になっていた本書。
 角川ホラー文庫ということで、グロテスクな物語を想像していましたが、血がドバッとか、内臓がグチャッといった感じではなく、収録されている2編ともちょっとファンタジーでノスタルジックな、そしてダークな大人の童話みたいな物語でした。
 子供の頃確かに夜祭とか偶然見つけた抜け道というものに、何か特別なドキドキワクワク、そして漠然とした不安というか恐怖みたいなものを感じて、1人でトイレに行くのが怖くなり…。
 とにかく独特の世界観で、これが本好きの間で語られている「恒川ワールド」の原点かと。

⚪️草祭
 著者 恒川光太郎

【内容紹介】
 たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。理由も分らずたどりつく、この世界のひとつ奥にある美しい町“美奥”。母親から無理心中を強いられた少年、いじめの標的にされた少女、壮絶な結婚生活の終焉をむかえた女…。ふとした瞬間迷い込み、その土地に染みこんだ深い因果に触れた者だけが知る、生きる不思議、死ぬ不思議。神妙な命の流転を描く、圧倒的傑作。

裏表紙より

【収録作品】
けものはら
屋根猩猩
くさのゆめがたり
天化の宿
朝の朧町

【感想】
 ちょっと不思議で懐かしく、温かいような怖いような独特の雰囲気の町「美奥」の物語。
 一言では表現できないこの世界観は、誰もが持つ心象風景なのか。多分テーマやメッセージはいろいろあるんだろうけれど、あれこれ考えすぎないほうがこの物語を楽しめるのではないかと。
 解説によれば5編全てがなんらかの形で繋がっているらしいのですが、言われて初めて「そうだったのか!?」と声をあげる始末。読解力だけでなく思考の柔軟さが試される物語でした。
 5編の中では、女子高生のいじめを題材にした〝屋根猩猩〟がオチも含めてお気に入りです。

⚪️竜が最後に帰る場所
 著者 恒川光太郎

【内容紹介】
 しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった――(「夜行(やぎょう)の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。

出版書誌データベースより

【収録作品】
風を放つ
迷走のオルネラ
夜行の冬
鸚鵡幻想曲
ゴロンド

【感想】
 全5編の中短編集。ちょっとわかりにくい話もありましたが、どれもそれぞれ違った味の不思議な読後感でした。
 DVを軸として話が進む第2話の〝迷走のオルネラ〟は、なんか現実にありそうな話で、一番怖いのはやっぱり人間なのかと。
 最も驚いたのは〝鸚鵡幻想曲〟。気がつけば途中から主人公が変わっていて、読みながら「あれっ、そっち!?」と思わず口に。
 ドラゴンの成長を描く〝ゴロンド〟は…。ゴロンドはこの後、自分の帰る場所をちゃんと見つけられたのだろうか。
 今とは違う人生を生きることを夢見る人には〝夜行の冬〟がおすすめ。ちょっと苦いけど。

⚪️異神千夜
 著者 恒川光太郎

【内容紹介】
 鎌倉の山中に庵を結ぶ僧に、謎めいた旅の男が語り聞かせる驚くべき来歴―数奇な運命により、日本人でありながら蒙古軍の間諜として博多に潜入した仁風。本隊の撤退により仲間とともに取り残されるが、やがて追われる身となった一行を、邪神「窮奇」に仕える巫女・鈴華が思いのままに操りはじめる。元寇に際して渡来した一匹の獣は姿形を変え、時に悠然とたたずみ、時に妖しく跳梁する。傑作ダークファンタジー。(『金色の獣、彼方に向かう』を改題)

出版書誌データベースより

【収録作品】
異神千夜
風天孔参り
森の神、夢に還る
金色の獣、彼方に向かう

【感想】
 元寇の時代から現代まで、イタチのような神獣(?)で繋がった3編と、他1編の短編集。
 どの話も突飛といえば突飛ですが、もしかしたら本当にあるかもしれないと思わせてくれる物語たち。
 特に異世界に通じる孔を探して旅をする第2話の〝風天孔参り〟が心に残りました。簡単に言ってしまうと多分「自殺」ということなんだろうけれど、皆それぞれ事情があって、自分で決めてこの旅に参加したんでしょう。
 この辺りを掘り下げた長編として読んでみたい気もするけれど、それだといわゆる「恒川ワールド」ではなくなってしまうような気も。

⚪️白昼夢の森の少女
 著者 恒川光太郎

【内容紹介】異才が10年の間に書き紡いだ、危うい魅力に満ちた11の白昼夢。人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは(「白昼夢の森の少女」)。巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという(「銀の船」)。この作家の想像力に限界は無い。恐怖と歓喜、自由と哀切―小説の魅力が詰まった傑作短編集。文庫書き下ろしの掌編「ある春の目隠し」も特別収録!

出版書誌データベースより

【収録作品】
古入道きたりて
焼け野原コンティニュー
白昼夢の森の少女
銀の船
海辺の別荘で
オレンジボール
傀儡の路地
平成最後のおとしあな
布団窟
夕闇地蔵
ある春の目隠し

【感想】
 雑誌やアンソロジーに掲載された全く毛色の違う11編の中短編。
 このうち特に心に残ったのは〝銀の船〟そして表題作の〝白昼夢の森の少女〟。
 〝銀の船〟は誰もが持っているであろう「何もかも放り出して、ここではないどこかへ行ってみたい」という気持ちのその先を描いています。いろいろ大変なことはあるけれど、やっぱり今この瞬間が大切だということかな。
 〝白昼夢…〟は、植物と人間が同化した世界というこれまた突飛な物語。まさに独特の世界観。大事件が起こった後でも生き残る植物の神秘。
 時には現実を離れて、頭を空っぽにしてこんな物語世界に身を委ねるのも良いかも。

⚪️あいまい・ぼんやり語辞典
 森山卓郎 編

【内容紹介】
 二通り以上の解釈ができて意味が一つに決まらない「あいまい語」。指すところが漠然としていて解釈に幅ができてしまう「ぼんやり語」。日本人の特性を象徴する「あいまい」「ぼんやり」を正確・的確に伝えるにはどうすればよいか。
コミュニケーションとことばを考える楽しい辞典。

出版書誌データベースより

【感想】
 職場でも外国籍のスタッフを見かけるようになりました。ここで問題になるのがやっぱりコミュニケーション。さすがに大体の日本語は通じるけれど、微妙で抽象的な日本語独特の表現はやっぱり通じにくい。
 この本はそんな日本語の曖昧表現を約100語集めて解説。一応辞書とあるので気になった項目だけ拾い読みしてもいいのだけれど、読み始めたら面白くて一気に全部読んでしまいました。
 読みながら自分も曖昧な言葉で駄文を書いてるなぁと。せっかくなので手元に置いて折に触れてこの本を開こうかと。そういえば「折に触れて」は載ってなかったなぁ。

⚪️正しく怖がる感染症
 著者 岡田晴恵

【内容紹介】
 新型インフルエンザ、ジカ熱、エボラ出血熱、結核、梅毒…。多種多様な感染症をその経路別に整理して正しい知識を持ち、いたずらに怖がり過ぎず来たるべき脅威に備えよう。

筑摩書房書誌情報より

【感想】
 国立感染症研究所の研究員だった著者が代表的な感染症を例に挙げ、その原因、病態、治療法や予防法を解説している本。
 取り上げるのは感染経路別に、デング熱やマラリア、梅毒とエボラ出血熱、結核、風疹、コレラなど。…そう、この本は2017年3月の刊行なので、COVID-19感染症については一切触れられていないんです。
 この本の中で未知のウイルスとして著者が恐れているのは強毒性の鳥インフルエンザ。これについては著者が2007年に小説という形ですでに警鐘を鳴らしていました。まさかこの本刊行の3年後に、こんな事態になるとは。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 今週はなんといっても「恒川ワールド」。
 私のような凡人には想像もつかない独特の世界観は、いわゆる「ホラー」というジャンルのイメージを大きく変えてくれました。
 それにしても、作家さんの想像力ってすごいなぁ。いったいどこからあんな発想が出てくるんだろう。
 時々現実世界に戻りながら、もうしばらく恒川ワールドを堪能したいと思います。

最後に、
読書っていいよね。


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