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週刊ユグド通信Vol.81『ユグド大陸の通貨事情』

 チェンクロプレイヤーとってはストーリー進行上全く気に留める必要はありませんがユグド世界には国毎の通貨があり価値は概ね一定と考えられます(※)。そんなユグド世界の聖王国通貨が破綻すると黒の軍勢と戦えなくなる理由。作中でも解説はされていますがAinはもう少し通貨の話を掘り下げ解説してみようと思います。

(※)メタな話をすると必然性がないのにリアリティーの為に作中経済に相場変動を起こすと都度物価の整合性が問われて矛盾潰しに労力が割かれます。


1.聖王国通貨の発行元

 ユグド世界の通貨の発行元については言及はされていませんが自給自足と物々交換交換が一般的な精霊島、ケ者の大陸を除けば他の地域も外貨は流通している模様。では聖王国の通貨を発行しているのは何処でしょう。可能性が高いのは王都の王宮、貴族の有力諸公、聖都の大神殿、副都の評議会でしょうか。順番に検証してみましょう。

1.王宮の場合

 通貨というものは偽造の危険性も加味すると一元管理するのが望ましい。そうであれば王政国家である聖王国の王宮が国営の造幣局を持つのが確実ですが、王都は三年近くに渡り黒の軍勢の占領下にありました。例え王立造幣局が一元管理していたとしても王都以外に造幣所がないと流通が滞りかねません。王宮が管理している場合は副都や聖都にも造幣所がありそうです。

2.貴族の有力諸公の場合

 連邦制や連合国家では各地域の有力者が独自の通貨を発行する例もあります。これは炎の九領、砂漠の湖都なら成立しそうですが、聖王国の商業都市と言えば副都くらい。聖都は大神殿の管理下であることから如何に有力貴族と言えど自身の領地向けの貨幣を作る程の経済力を持った人物はいなそうです。

3.大神殿の場合

 宗教国家では国と信仰が一体化していることから造幣事業も担う例がありますが聖王国の場合は大神殿に貨幣流通の権限まで与えると大神殿の力が強くなり過ぎる恐れがあります。これは歴代聖王も看過出来ませんし、神殿長も大神殿が聖王国経済を牛耳ることは望まないのでほぼないでしょう。

4.副都の評議会

 聖王国経済の中心地である副都には商人ギルドを中心とした副都評議会(現ギルド同盟議会)があり多くの銀行を始めとする金融業が本店を構えています。そうなると政府管理の下に造幣業務を請け負っている可能性はありそうですよね。

5.検証

 元々聖王国はユグドの盟主を迎え入れる【王都】(+副都)と大神殿を中心とした信仰の中心地【聖都】に分かれていたものが現在の聖王家が政権を担うようになって(円卓会議の形骸化)から現在の形になったと言われています。なので当初は王都と聖都で別々の通貨が発行されていた可能性はあるでしょう。現在の発行元は王家から議会が承認を受けて造幣所で発行している可能性が高いと思われます。しかし聖王国は勿論のこと湖都や九領との取引に両替商が介入する話がありませんのでユグド大陸では地域毎に通貨は発行しているのでしょうが価値は等価なのでしょうね(※)。

(※)大海を初めて訪れた時に『夜明けの海商会』が使っている共通通貨に両替する話はありました。

2.ユグド諸地域の通貨発行元

 他の諸地域は如何なるものでしょうか? まず賢者の搭と迷宮山脈についてですが、どちらも経済規模が小さいのですよね。賢者の搭は元々国家ではなく独立研究機関と学園都市で構成されており、周辺には幾多の貴族領(ヴェルナーやフィリアナの実家)が広がっています。金、銀を産出する地域でもないので聖王国の通貨が出回っていると考えて良いと思います。次に迷宮山脈内は元々物々交換の文化圏。(義勇軍も度々素材発掘に駆り出されましたね)諸外国との取引にお金は必要ですが、わざわざ土妖精の職人が人間の都合に合わせて通貨を発行するとは思えないので流通しているのは基本的に外貨でしょうね。

 では砂漠の湖都はどうでしょうか? さすがに湖都は国土も広く聖王国からも離れており金が産出されることから独自の通貨を発行している可能性はありそうです。ただし砂漠の各領主が自己都合な通貨を発行すれば度々トラブルになりかねませんので王宮が一元管理している可能性が高そうです。

 九領はどうでしょう? 印象的には千両箱から大判小判が飛び出しそうなイメージがありますが通貨は等価のものが使われています。鬼の気質からいって人間達が発行する通貨に頼るとは思えませんし宵越しの銭は持たなそうですから金貸しはともかく金融機関(銀行)もないでしょう。なので筆頭管理の下発行している形と思われます。

3.関税

 ユグド大陸にも関税はあります。商売を生業としない義勇軍にとっては日常無縁な代物なのでほとんど物語に絡む機会はありませんが、2014年『義勇軍強化クエスト』では税関役人の悪事を暴く話がありました。とは言っても税関がありそうなのは港と大都市に限られるでしょうね。

4.通貨の価値喪失

 それでは本題に入りましょう。商人が逃げることで聖王国貨幣の価値が失われる……とは言っても金貨や銀貨は紙幣と違って国の後ろ楯がなくとも通貨そのものに含まれる金属に価値があるので一見すると価値そのものは失われないように見えます。では何故価値が失われるのでしょうか。

1.後ろ楯の喪失

 前述の通り金貨や銀貨は金属の含有量で価値が判断されますが、それ以上に大きいのが発行元の信頼性になります。もしも聖王国経済が破綻した場合、仮に聖王国貨幣に元々の価値(金属の含有量)以上の信用価値が付随していた場合は信用分の価値が喪失してしまいます。

2.発行元の信用性

 聖王国貨幣に限りませんが、お金には『私が作りました』という農家のキャッチコピーのような生産者の顔(国家)が貨幣の信用に繋がっています。しかし発行元が破綻した場合「これは本当に聖王国政府が発行したものか?」という疑念が生じます。仮に偽金が市場に出回った場合すぐに鑑定できる人間がいなければ信用が失われます。

3.イメージの悪化

 敗北した国の通貨なんて縁起が悪いと敬遠する商人も出るでしょう。これでは諸外国との取引も出来なくなります。

4.取引先の喪失

 銀行でも商会でも聖王国貨幣を主軸で決済する組織がなくなれば取引先は受け取った貨幣を両替に回すしかありません。両替された金融機関も使い道がないので鋳潰して別の貨幣に変える手間がかかります。

5.信用取引

『伝承シルヴァ伝』

 代金後払いの信用取引も銀行が逃げてしまえば肩代わりをしてくれる後ろ楯の金融機関が消失します。更に貨幣も使えないとなると物々交換となりますが、一都市の経済を物々交換だけで回すのは不可能です。

5.結論

 使う人間が少ない貨幣は信用性が下がりますし、偽金の鑑定も後手に回りかねません。そうでなくとも縁起を重視する商人なら敗北者の通貨を敬遠するでしょう。商人は国外に持ち出して両替すれば済むかもしれませんがギルドや議会はそうもいきません。そもそも国内の流通を担う商人がいなくなれば物資の補給も受けられなくなります。以上の点から経済が破綻する(商会が軒並み逃げる)と早晩補給が持たずに敗れていたでしょう。だから多くの金融機関の元締めであるドムノ商会(※)だけでも踏ん張らないと「あのドムノ商会すら逃げた以上副都は終わりだ!」と連鎖的に商人が逃げかねなかったのでしょうね。

(※)戦士ギルドの元メンバーでシルヴァとロレッタの親友ゼロスが頭取を勤める商会。

今回は以上となります。

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