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MOTSUがラジオ番組にゲスト出演!(後編)

(前編のつづき)

 男性陣2人の間で、過去と現在でのアニメソングをとりまく状況の変化についても、意見交換がなされた。
「すごくエグイ言い方をすると、アニソンの方が(J-POPよりも立ち位置が)下にあったような気がします。」と、MOTSUが切り出すと、Akiraは「言い辛いことをズバッ!と言ってくれた」と、MOTSUの言い回しに感謝する。MOTSUは「当事者だから言える」のだそうだ。
 今ではアニソンが一番!みたいな雰囲気で、昔、アニオタと口に出すのもはばかられていたのが、「アニオタ=マウント取りにいってるみたいな意味もきっとあるんじゃないかな」とMOTSUがいうほど、アニソンが幅を利かせている。このジャンルのステータスの上がりっぷりを語った。

 リアルタイムで体感していないと、なかなか掴みにくいかも知れない。筆者が過去に聞いた話を例に出すと、昔はギターを持っているだけで不良だと言われていたのが、今は学校の先生が文化祭の催事でギターを持ち、ステージに上がることもあるぐらいだ。こういうのに似た感覚だろうか。
 THE ALFEEの坂崎幸之助は、学生時代にこうした潮流に反旗を翻して、自らギターの同好会を立ち上げた。それは今なお存続している。その後輩の音楽活動が坂崎自身の目にとまり、やがてTV番組で共演するまでに発展している。ひとつのシーンを長く観察していると感じられる面白みだ。

 2000年前後から頭文字Dのおかげで外国に呼ばれるようになったMOTSU。海外のファンの間での、m.o.v.eの二次創作の盛り上がりを目の当たりにして、アニソンが上昇気流にあることを、自分たちでも気がつき出した。

 新曲の『JUNGLE FIRE feat.MOTSU』は、旅行先の熱海で思いついたという。MFゴーストは知ってたけど、そこを走っているときは「そういえばここだな」ぐらいにしか思ってなかったのが、家に帰ってきて1週間ぐらいで主題歌のオファーがきたそうだ。
 「場所がドンズバじゃないですか!」と、このタイミングの良さを語り、「なんというシンクロニシティ!」と感情たっぷりに言い表していた。
 実際に自分が作品の舞台を車で走ったばかりなので、情景が全部浮かぶ。ひねり出して創作するというよりも、溢れんばかりイメージをそのまま写し変えて表現するという作り方をしたそうだ。「すっごい書きやすかった」と嬉しそうな口調で言っていた。
 MOTSUは「メロディーも歌詞も2秒でできました!」と、作り上げたときの心境を興奮気味に振り返るものの、笑いまじりに「まあ、2秒は大袈裟ですけど」と訂正。
 Akira Sunsetも嬉しそうに笑みを浮かべながら「わかります、わかります」と、同調する。「サビ頭が出てきたら、もう全体できたようなもんですからね」と話を補足した。このやりとりで男性陣2人は、作家として共通する感覚を分かち合っていた。
 Akira Sunsetは「歌詞、書き足りなかったんじゃないですか?もっと入れたいの、いっぱいあったでしょう」と、MOTSUの心境を察するような質問をする。これにはMOTSUもその通りだと答えた。おゆいは2人のやりとりを、ただただ固唾を飲んで驚くばかりだったが、この場に同席できていたのは貴重な体験だっただろう。
 いわゆるポエムとは違って、言葉が音程に乗った状態で効果を発揮するように作るのが、作詞という作業だ。特にダンス・ミュージックというジャンルでは、繰り返しが重要なファクターになる。ここに尺を割く分、言いたいことを全部詰め込むわけにはいかず、カットせざるを得ない場面も出てくるのだ。今作で惜しくも削られたアイデアは、また別の機会にどこかで形を変えて披露されるのかも知れない。制作側の視点で見ると、MOTSUにオファーにかけるなら今だと思える。今後の作品にも、ますます要注目だ。

 音楽制作を志している方は、作品のテーマで場所が特定されているのなら、実際に現地に赴くといいだろう。MOTSUのように傑作を生みだすことができるかも知れない。また、オファーの有無にかかわらず、普段のプライベートでの旅行などを歌詞にしたためておくのもいい。この経験が後々活きてくるということもあり得る。

 長きに渡り第一線で活躍するMOTSUに敬意を払うAkira Sunset。MOTSUは「1.5線ぐらい」というユニークな言い方で謙遜していた。Akira Sunsetによると、その秘訣はMOTSUにしかできない唯一無二のラップ・スタイルにあるという。「MOTSU節」という言葉も挙がり「一個、核があるってめちゃくちゃ強いなと思いました」と感想を述べていた。ここで、妖怪ウォッチのオープニングテーマ曲「ゲラゲラポーのうた」を例にとり、誰にも真似できないMOTSUの独自性を語る。
「名前隠してるけど、いや!MOTSUやん!!当時、全員がツッコんだと思うんですよ」というリスナーの気持ちを代弁する、Akira Sunset。これを聞いた当人のMOTSUも、声高らかに笑っていた。

 現在のMOTSUは、アニメと音楽とゲームを多方面に展開する、クロス・プラットフォームに興味津々のご様子。MOTSUは、自身の過程をこのように振り返る。最初はダンスだけだったが、作曲を覚えて、その次にはデザインも覚えた。イベントのフライヤーも自作したという。今はゲーム・プログラミングをマスターしている。こうして、「新しいことを覚えていくのが大事」だと語った。この対談でAkira Sunsetは、MOTSUの貪欲な姿勢を見習いたいという気持ちになっていた。

 デビュー以前のことから、今思い描いていることまで、MOTSUのすべてに迫った2週連続の出演だった。MOTSUのリリース作はもちろん、番組にどんなゲストが呼ばれるのか、今後の動向にもご注目いただきたい。


芹澤優『JUNGLE FIRE feat.MOTSU』


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