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Toshl『IM A SINGER VOL.3』発売記念イベント感想

 大分県のトキハわさだタウンで開催された、Toshlの新作アルバム『IM A SINGER vol.3』リリース・イベントに行ってきた。

 案内役の野口真美が、イベント開始前の注意事項で、撮影・録音は一切禁止だとアナウンスするときに「心のシャッター」と言っていた。なんて良い言葉だ!

 これはまったくその通り。せっかくの本物のパフォーマンスに触れる機会だ。現場にいながら、わざわざカメラ越しに見ることはないだろう。画面も電波も何も介さず、生歌を直接心に受け止めるのが一番響くのだ。

 
 まずはMVが大型ビジョンに上映される。曲目は『葉ざくら』。
 その後、いよいよ本人がステージへ上がる。衣装は、白地のジャケットに赤いペンキをぶちまけたような柄が入ったものだ。Toshlの歌唱はTVで何度も観ているが、実際にお目にかかるのは初めて。登場の瞬間は「おお〜っ、本物だぁ!」と、興奮した。
 まずは新作の説明から。人生50年間の集大成だと言っていた。内容はウェブ上の記事などで既に発表されている通りだが、本人の肉声で直接聞くと感慨深い。MCの語り口も非常に丁寧で、誠実な人柄を伺い知ることができる。

 X JAPANのボーカリストとして、既に大成功していながら、一切驕りたかぶるところがない。歌に入る前から、「頑張って欲しい!」と自然に聞き手に思わせるような雰囲気だ。過去の活動を知らないリスナーなら、この人が「紅だー!」と叫んでいるなんて、想像できないだろう。
 歌に入るや否や、持ち歌の『紅』さながらの勢いで、新作から『タマシイレボリューション』を披露する。礼儀正しい紳士から、一瞬にして荒々しいロック・スターへ変身。会場をアツくした。
 

 1曲歌い終えると、ステージ・ドリンクを口に含んでから、再びMCへ。世の中の窮屈なことに耐えながら、ほふく前進のように少しずつ前に進んで、やっとのことで今に辿り着いたと言っていた。おそらく巷に流行する疫病が、音楽活動の妨げになったということなのだろう。ようやく有観客で歌を届けられる。その喜びを噛み締めていたに違いない。

 その後はオリジナル曲の『しあわせになるんだよ』だった。芯が太く圧の強い声で、「胸にーー」と、高音でのロングトーンを響かせる。この音の波動を直接受けたときの感動といったら!言葉にならない。メロディーの音程が上にも下にも動いていない部分でさえ、自らの声色だけでリスナーの胸を打つことができる。それがToshlだ。

 TV出演ですでに体感してはいるものの、やはり電波を通さない生の歌声はワケが違う。今回はわずか2曲だったが、心を熱く震わすライブだった。

 退場のときは「早すぎないか!?」と思ったが、この日のリリースイベントは、昼間が大分県、夕方が福岡県でのダブルヘッダーだ。アルバム購入特典は、歌唱後にToshlと対面できる権利。それを持つ観客は、二百数十名はいた。その全員を見送ってから次の会場へ向かうわけだから、これでも間に合うかどうか、スタッフは冷や冷やしていたことだろう。本当は3曲以上用意していたが、あまりの盛況ぶりに曲数を減らしたのだろうか。そんな風に勘ぐってしまった。

 より多くの聴衆に歌を届けるという目的においては、今回は成功だろう。先述の二百数十名は座席に着けた観客だ。その後ろにはそれ以上の立ち見客がいて、さらにショッピング・モールの2階・3階にも観客の姿がみえた。全部合わせると800人いてもおかしくない。広島クラブ・クアトロならソールド・アウトしそうなほどの人数だ。

 さすがに、たった2曲ではお腹いっぱいにはならない。それでもToshlの生歌に触れる機会を持てたことは貴重だった。ひとりでこれだけ会場を盛り上げられるのだから、X JAPANが5人揃ったときには、一体どんなことになるのか。

 想像の域をはるかに超える、とてつもないステージになるに違いない。


【今回のセットリスト】

タマシイレボリューション

しあわせになるんだよ


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