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TM NETWORKがステージで緊張する共演者

 TOKYO FMで放送されている、坂本美雨のレギュラー番組『ディアフレンズ』の8月22日・23日の放送分を聴いた。ゲストは彼女がかねてからの大ファンだというTM NETWORK。2日間に渡るTM NETWORKのオンエア曲は、どれも坂本美雨の選曲だ。『Self Control』、『STILL LOVE HER』、『I am』など。中でも、新曲『How Crash ?』が、ラジオの電波から届けられたことは大きい。この作品のリリースを知らない層にも、偶然耳にする良い機会だからだ。

 坂本美雨は、彼らの今年のツアーを観に行ったそうだ。3人揃っての出演ということもあり、熱くこみ上げる気持ちを抑えられない様子。興奮が空回りして、言いたいことが伝わっているか心配になると言っていた。

 番組のナビゲート役というのは、しっかりと落ち着き払って、出演者の魅力を引き出すべきだと、局アナの場合なら本来はそう教えられるのだろう。だが、坂本美雨はそうではない。本職はミュージシャンである彼女が、自らのルーツともいえるアーティストを迎えて、そわそわしてどうにも落ち着かない様子。これが逆にファン心理を分かち合えて、リスナーとしても聴いていて楽しい。なんだか不思議な感覚だった。訓練を受けたアナウンサーによる、カッチリと滞りなく進行する番組もいいが、ミュージシャン自身で発信する番組も、そこにはない面白さがある。


 今までの音楽生活の中で、一番緊張した共演者は誰か。こんな話題で語らう一同。 

 まず最初に口を開いたのは、小室哲哉だ。もう瞬間に出てきたという。MCの坂本美雨に向けて、「(あなたの)お父さん。」と回答した。坂本龍一のことである。
 1995年に開催された野外イベント・TK DANCE CAMPで、『VOLTEX OF LOVE』という楽曲を、小室哲哉が坂本龍一と共に披露している(2018年発売の4枚組CD・TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T"に収録)。坂本龍一から「間違うなよ」という視線を浴びていたが、「間違えましたけどね」と言っていた小室哲哉。僕はこの映像作品を購入して何度もリピートで視聴したが、とても落ち着き払っているように見えたし、どこで間違ったのかも分からない。


 木根尚登の回答は、吉田拓郎。10代の思春期の時に最も強く影響を受け、自身のデビュー以降も吉田拓郎のライブに関係者席で観覧、楽屋へ挨拶しに行くまでに至ったらしいが、これが緊張するそうだ。最近は自分でチケットを購入して見に行っているが、こちらの方が気が楽なんだとか。好きなんだけど、接近し過ぎると落ち着かない。この距離感には坂本美雨も共感の声を上げていた。


 メンバー2人の話の間、どうにか回答しようと思案を巡らす宇都宮隆。だが結局は該当者なしのようだ。TV番組ではそれこそいろいろなアーティストと共演するのだが、誰が一番とか人が対象なのではなく、それより何よりTVそのものに緊張してしまうと言っていた。

 宇都宮隆にとっての緊張を伴うアーティストは誰なのか。僕はロッド・スチュワートが頭に浮かぶ。さすがに共演の機会はないだろう。実現したらどうなるのか。ただ、坂本龍一や吉田拓郎と違って、日本語が通じる相手ではない。話のタネになるような印象深いエピソードは、生まれそうもない。

 ステージで本番を迎えるにあたって、緊張を解くにはどうするか?ということにも話題が及んだ。

 本番直前まで歌詞のチェックをしていたりすると、かえって間違うという坂本美雨。これにはTM NETWORKの面々も同意していた。

 やはり準備万端で余裕を持って本番に臨むのが、良いパフォーマンスをするための秘訣ということになるのだろう。宇都宮隆も、自らの失敗談を語って場が和む。小節数が、本来16あるとろを8と間違う話で、MCの坂本美雨も共感していた。彼女も小室哲哉とのステージ共演の際に同様の不安を抱え、小室哲哉の顔色を伺いながら歌っていたそうだ。

 ライブでは、オリジナル音源とは雰囲気をガラリと変えてくるのが小室哲哉の醍醐味。だが、経験豊富な出演者自身でさえも、内心は落ち着かないのだ。小室哲哉に憧れて、アッと驚くアレンジでステージに立とうとしているのなら、サウンドを構築できた時点で完成した気になってしまわないようにしよう。共演するボーカリストは十分な準備を整える環境ができているか、いまいちど振り返るべきだ。

 TM NETWORKのこれまでのエピソードを追っていくと、かなり無茶なスケジュールでもことごとく対処してきた例がいくつもある。それは、小室哲哉の瞬間の閃きに即座に応えられる、宇都宮隆の才能があればのこと。

 どんなボーカリストにも、宇都宮隆のような対処ができて当たり前だとは思わない方が良い。アレンジの大胆な変更はおろか、曲のサイズを縮めるだけのわずかな変更であっても、急なTV出演だと歌詞を間違うことはおおいに考えられる。スタッフはアーティストに十分な準備ができる環境を作りたいところだ。またアーティストには些細な変更でも決して侮らない入念さが求められる。

 9月のアリーナ公演を節目に、3人それぞれのソロ活動へ移行していくTM NETWORK。その予定も番組でザッと紹介された。今年はぜひ個別でも、またこの番組にご出演いただきたい。

 出演中に、番組から提供されたお茶が3人に振る舞われた。小室哲哉が飲んだのはレモネード割りだったような気がする。宇都宮隆と木根尚登は炭酸。宇都宮隆は「なるほど!」と、今まで飲んだことがなかったようなリアクションをしていた。再出演すればまた飲めるかも知れない!


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