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globe・マーク・パンサーの近年の活動を追ってみた

 globeのMix CD『globe NONSTOP BEST 〜Essential songs for you〜』が今月リリースされたばかりだ。ひさびさの新アイテム。ファンにとっては吉報だろう。

 青春J-POP Project 〜memories & melodies〜のホームページでは、2月22日のNEWS欄でマーク・パンサーのコメントを紹介している。

 さて、今回の音楽鑑賞は、マーク・パンサーの近年の活動にスポットを当てたい。

 デビュー当時のglobeのサウンドメイキングは、小室哲哉が一手に担っていたが、徐々に他のメンバーもより深く楽曲制作に関与するようになっていく。KEIKOは曲によってはコーラス・パートや作詞にも着手するようになった。

 マーク・パンサーはバック・トラックの制作も手掛けるようになる。また、後にDJとしても独り立ちして、単独でクラブイベントにも出演しだした。

 母体となるglobe、他アーティストとのコラボレーション、それから新しいユニットに至るまで、いろいろな角度からマーク・パンサーの活動に触れていこう。


globe『Love again - 2013 ORIGINAL PANTHER KOZY.H REMIX』

 globeのリミックス盤『globe EDM Sessions』には、マーク・パンサーによる勢い重視で踊り心地の良い音源が多数収録されている。その中でも、ひときわ個性が光る楽曲だ。

 序盤は地味な幕開けながら、サビでのシンセサイザーのアップリフティングな音程の動き方はたまらなく最高だ。これは盛り上がる。

 それから、中盤では打楽器がすべて姿を消し、伴奏が付点音符のシンセサイザーだけになる場面がしばらく続く。拍の頭をまったく感じることができなくなるので、普通ならダンス・ミュージックには向かない展開に思えるだろう。

 ところが、この歌うにも踊るにも非常に不安定な状態が、不思議な揺らぎを醸し出す。それまで気持ちよく踊っていた観客に、ビート感を一瞬見失わせて、「ん…何だ何だ?何が起きたんだ?」という驚きを与えることができるのだ。

 もちろん終盤には、消えていた打楽器隊が再び姿を現すのだが、この全パート復帰してからの盛り上がりはひとしおである。楽曲の急激な展開に翻弄されて、キョロキョロしているうちに止まっていた足のステップが、再びより元気よく動き出すだろう。この仕掛けには、「マーク・パンサーやってくれるぜー!」と叫ばずにはいられない。

 この手法には、ぜひ注目しながらご鑑賞いただきたい。これはあくまで変化球。ノープランに使っても良い結果は得られない。まずはスタンダードなビートを刻む曲を複数流しておいて、オーディエンスの気持ちの高まりを軌道に乗せておく。この状況までもってこれたら、満を持してこの楽曲を投下するのだ。

 ダンスフロアの熱が不十分なままプレイしても、盛り上がりに水を差しかねない。筆者なら1曲目にかけるのは躊躇してしまう。アルバムでは7曲目に収録してある。なるほど、良い所に配置してあるなと思う次第だ。

 音楽は好きだけど楽器を弾くほどではないという方や、駆け出しのクリエイターなら単に楽しく鑑賞すればいいだろうが、ある程度ストックを持っているクリエイターは、楽曲の構造にも要注目だ。マンネリ打破のヒントが得られることだろう。


TeddyLoid 小室哲哉 マーク・パンサー『Above The Cloud - INFINITY』

 globeの新曲が出なくなってから随分経過した。KEIKOが最後にボーカル・ブースに入ったのは、一体いつなのかは分からない。淋しい思いをしているファンの方もいるかも知れないが、こちらの楽曲のチェックは漏れていないだろうか。globeという名義で出しているわけではないものの、メンバーのうち2人が絡む楽曲だ。Teddy Loidが2018年にリリースしたアルバム『SILENT PLANET:INFINITY』に収録されている。

 ダンスフロアを大きく震撼させる、激しさ満点のナンバー。マーク・パンサーによる、骨太なライミングがアツい。TV番組の出演などでは、「DEPARTURES」のような、静かに囁く語り口の印象が強いという方も多いだろう。筆者はこの曲のように、もっと感情を爆発させるようなスタイルを大衆に披露する機会が増えてもいいのにな、と思っている。


ELECARGOT『DANCE WITH ME』

 マーク・パンサーが絡む最新のプロジェクトがこちら。彼に加えてトラックメイカーのJessy、ボーカリストのLISA、この3人で活動する。ELECARGOTと書いてエレカルゴと読む。リリースする楽曲はどれも魅力的なものばかり。中でも、筆者にとってリード曲的な位置づけなのが、この『DANCE WITH ME』だ。タイトル通りのアッパーなダンス・ナンバー。単なるお祭り騒ぎの痛快パーティー・チューンではなく、じっくり味わい深く聴き込める作品だ。

 幕開けは緊張感のあるシンセサイザーから。ピリッと張り詰めた空気に包まれながら、LISAがクールな響きで歌い始める。彼女独特の声のせつない揺らぎ、そして表現力の豊かさには、思わず涙を誘われる。少し聴いただけで、すっかり惹きこまれてしまった。リスナーの心を撃ち抜くビブラートというのは、数値で推し測れるものではない。彼女のボーカルを聴けば、そのことを感じ取れるだろう。

 筆者の一番の注目ポイントは、マーク・パンサーのライミングだ。globeのデビューの頃から聴いているが、これまでは割とシンプルな譜割りを曲中通して続けることが多く、変化に乏しい側面もあった。だが、この曲の譜割りはかなり複雑。一度や二度聴いただけでは、そうそうトレースできやしない。

 globeの楽曲に聴き慣れてくると、ラップを聴いていても次の展開がなんとなく読めることがまあまああったのだが、この曲では音の配置が予期できず、サプライズに満ちている。非常に胸が高鳴る仕上がりだ。これまでの彼のスタイルでは見られなかった、新境地を切り開いた。従来のスタイルに戻ることなく、ここをさらに発展させると、面白くなりそうだ。

 ELECARGOTの活動の特色は、新作リリースまでのスパンの短さだ。今のペースでどこまで続けられるのか、筆者も少し心配しながら見守っている。彼らはELECARGOTの他に、Jessyはアイドルのプロデュース業、LISAは自身のYouTubeチャンネルでカバー動画の投稿、そしてマークはポッドキャストでglobe radioの配信というように、それぞれ別個に動いてもいる。アクティブに活動していく彼らの今後に、ご注目いただきたい。


マーク・パンサーのglobe radio

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