現代のリミックスで楽しむダイアナ・ロス

2020/05/03


 ここ最近の記事は、以前から自分の引き出しにある曲の中からピックアップして、その魅力に迫ることが多かった。今回は、世間が自粛モードに入ってからの、最近僕が発見した楽曲の話。過去曲を掘ることに夢中になり過ぎると、最新の動向を追うのが疎かになる。ここはひとつ、今年リリースの新譜に注目したい。

ダイアナ・ロス「Love Hangover」

 はあ?めっちゃ昔の曲やん!!と突っ込まれそうだ。調べてみたら40年以上前の曲だった。それが長い年月を経た後、Eric Kupperのリミックスで今年蘇ったわけだが、これがハンパないカッコ良さ。
 ダイアナ・ロスの音楽には全然詳しくないが、アメリカで偉大な功績を残した、押しも押されぬトップ・アーティストだという事実くらいは、さすがに知っている。聴き覚えのある曲は「If We Hold on Together」くらいなものかな。これ1曲だけで判断する限り、僕のCDラックに納めるには縁の遠い感じがしていた。
 もうひとつ「Upside Down」もあるが、僕が知っているのはナイル・ロジャースのアルバム収録のバージョン。ダイアナ・ロス名義でリリースされた本家の音源には、まともに触れたことはない。
 そういうわけなので、もちろんダイアナ・ロスの活動状況を気にしてはいない。音楽ウェブサイト上の、ニューリリース情報だったか、あなたへのオススメの曲だったか、その欄からEric Kupperの名前が目に飛び込んできたので反応したら、ダイアナ・ロスのリミックスだったのだ。
 この時点で僕には「If We Hold on Together」のイメージしかなかったので、「いや、いくらEric Kupperでも無理だろ〜、どうやって仕上げたんだろ?」と興味津々にクリックしたら、飛びきり良い曲で驚いた!発見までの経緯はこんな感じ。
 まあでも、40年前の曲が風化されずに生き残っているのだ。単にまた鑑賞したくなったということで、リスナーに再生されるだけでも相当なこと。それだけに留まらず、プロ・ミュージシャンによって再構築され、もう一度世に広めようとする動きを起こすまでに至っているのが凄い。40年前だからね。懐かしもうにも、そもそも生まれていないので懐かしみようがないリスナーが半数なのではないか。
 僕が大好きな曲で、ウェブ上でも頻繁にカバーされるTM NETWORK「Get Wild」も、7年後には発売40周年を迎えるが、なんだかその頃でも誰かに歌われ、演奏され続けているような気がするね。
 まさかこのリミックスのために歌い直していないだろうとは思う。過去に収録済みのボーカル・テイクを使っている前提で言うが、まるでダイアナ・ロスがこのバック・トラックで歌ったかのようなフィット感。これが一番の注目ポイントだ。
 リミキサーの個性を強調してビートを構築した方が面白いものができるし、その為ならバック・トラックとボーカルのリズム感に若干のズレが生じるのは珍しいことではない。そこを犠牲にしてもリミキサーが自らの主張を曲げない作品はいくらでもあるし、僕もそれを悪いことだとは思わない。しかし、Eric Kupperのこのリミックスはそんな次元を飛び越えて、自分らしさを存分に発揮しつつ、ボーカル・トラックとの相性の良さも抜群だ。

さて、これを聴いたら次にかけたくなる曲は決まっている。


globe「Stop! In The Name of Love」

 2001年にシングルでリリース。先のダイアナ・ロスが在籍したグループ・スプリームスのカバーである。長尺のラップ・パートを追加して、globeならではのダンス・ミュージック仕立てになって蘇った。2019年11月17日の過去記事でも、この曲について書いている。
 僕はマーク・パンサーのラストのパート「Stop! Stop! Stop!〜」が大好きで、カラオケでも良く歌いに行っては録音していた。当初は、主旋律のKEIKOのパートは見送りながら、ラップのみを吹き込んでいた。失敗せずにラップできたら公開して、運良くglobeファンの目に止まったら、誰か歌を重ねてくれるのを待ってみようと思っていた。
 そうこうしているうちに、この曲の主旋律を歌ったテイクが公開されたので、僕がその上からラップを重ねて完成させる、という方法へシフトした。やっぱり歌が入ってる方が気持ちも込めやすい。難しい曲なので、コロナ流行までにOKテイクは録れなかったが、いつかは仕上げて、自分のマイページにレパートリーとして加えたい。
 失敗する箇所は、範囲を特定できるんだよな…1コーラス目から2コーラス目の前半まで。ほとんど、この間にトチる。「When the world〜」以降は大丈夫なのに。ああ、その直前の「Our love never die」も楽にハメられるな。冒頭の囁きっぽいところも大丈夫だし、その後の本格的にリズムに乗り出す部分も、ド頭から合わせられないってことはまずない。だから、僕が苦手にしている範囲は1コーラス目の「Hypnotysee par〜」から2コーラス目の「Leaving you in your delution」までとなる。

 ここまで絞り込めたら、あとは聴き込みあるのみ。でも、実際ノーミスで切り抜けられたら、その後が「どうか最後まで失敗しませんように!」って気持ちが強まって、緊張するんだろうな〜。そこで守りに入るようなライミングにならないようにしたい。この曲のラップは、ラストでいかにハッチャけられるかが肝だと思うからね。


 自分がDJだったら、この2曲は繋ぎ甲斐のある組み合わせだ。ターンテーブルの片方に「Love Hangover」、もう一方に「Stop! In The Name of Love」を仕込んでおいて、ここぞというタイミングでクロスフェーダーをスチャッ!と横滑りさせて曲をスイッチできたら、爽快そのものだろう。
 洋楽・邦楽織り交ぜたパーティーの開催やミックスCDの作成では、何の脈絡もなく洋邦の間を右往左往するよりも、日本人アーティストによる洋楽カバー曲を潤滑剤のように挟み込むことで、スムーズな曲チェンジになるように思う。
 
 どういう音楽をやっているかはサッパリだが、名前だけは知っているという海外のスターは、どんなリスナーにもいるだろう。ダイアナ・ロスも僕にとってはそういう一人だった。だが、今回発見したリミックスで、以前よりは身近に感じられるようになったな。