歌ってみた動画で楽しむ、小室哲哉復帰作(浜崎あゆみ編)

 2年前の引退会見から音楽業界へ復帰した小室哲哉。前回は乃木坂46への提供楽曲について触れたが、今回はもう1つの復帰作である、浜崎あゆみの「Dreamed a Dream」の歌ってみた動画を鑑賞してみよう。


 この楽曲はリリースに先駆けて、伴奏部分をすべて取り払った、浜崎あゆみのボーカル・パートのみの音源が公開された。音楽制作をするクリエイターたちが、これに思い思いの伴奏をつけて楽しめるようになっている。通常、リミックスとはリリース済みの音源を聴いてから、もっと別な角度からのアプローチはないものかという発想で取り掛かるもの。今回のように白紙の状態から新曲のアレンジを構築するのは、一般のクリエイターにはなかなか機会がない。参加者たちにとっても貴重な体験になったに違いない。


 Re:place「Dreamed a Dream」

 当ブログがnoteに移転する前の、ameba ownedで執筆していた頃からイチオシだった2人組ユニットが、Re:placeである。彼らの最新公開動画がこちら。今回取りあげる中では唯一、アレンジはもちろんボーカル・パートさえも自前だ。初めて彼らの作品に触れる方は、浜崎あゆみ本人の歌うボーカル・パートを聴いた直後にRe:placeの動画を鑑賞しても、まったくガッカリさせない歌のクオリティーに驚くのではないか。僕はこのユニットの立ち上げ当時から追いかけていて、実力の程は分かっているので、再生前に「これ大丈夫かなあ」と心配になることはないのだが。

 アレンジの方は派手で煌びやかなシンセサイザーの音色をふんだんに使いながらも、ポピュラリティーはしっかり保っていて日常のリスニングでも楽しめる仕上がり。サビに入る直前のサンプリング・ボイスの連打によるオブリガードは、小室哲哉ファンにとっては大好物だろう。ここは大きな聴きどころだ。

 毎回新作が楽しみなユニットだが、今作はとりわけ映像面で過去作より急激に進化をみせた。このサウンドだと、暗がりに光りものを絡めていく演出が非常に映える。SFチックな展開も見ていて楽しい。もしかしてメイクもジャケ写を意識してるのだろうか。だとしたら芸が細かくて良いね。公開当日に何度もリピートで見たものだ。ここで初めて彼らを知ったという方は、ボーカリスト・PurinのYouTubeチャンネルを是非訪れていただきたい。purin1223という名義で登録しているので、これで検索すれば辿り着けるはず。小室哲哉のファンにとっては、見ているとアッという間に時間が経ってしまうだろう。

 余談だが、僕は当初1223までが名前だと思い込んでいて、Purinまでが名前で1223はどうやら名前には含まれないらしい。これに気づいたのは少し後になってからだった。いやいやお恥ずかしい。

BushCloverField「Dreamed a Dream BCF Mix」

 ダンス・ミュージックのカッコ良さを存分に押し出しながらも、ダンス・フロアでしか機能しない取っつきにくさもなく、一般のリスナーにもシチュエーションを選ばずポップソングとしてしっかり楽しめる仕上がり。ここまでセンス良く尚且つポピュラリティーにも気を配れる作品にはなかなかお目にかかれない。

 イントロとアウトロで流れるメロディアスなリフは初めて聴いたとき、痺れたものだ。歌い出す前から感動したね〜。いくつもの作品に触れてみて感じたことは、この曲はBメロで主旋律の動きが鈍ってくる所こそが、アレンジャーの腕の見せ所だと思った。この作品はリズム隊を大胆に変化させてドラマティックなハッとする展開をみせている。Bメロの面白さという点では突出している。サビの歌い終わりのフレーズでのドラム・パートも、これと同様に大好きなセンスだ。

Kazuki Shintaku「Dreamed a Dream Version K-Kazuki's Remix」

 冒頭から鍵盤の刻みと強烈なキック、さらに派手な分厚い音色で一気に押し切るハウス・ミュージック仕立てのアレンジ。今回はどの作品もサビに入る直前のオブリガードで各クリエイターが趣向を凝らして楽しませてくれるが、当作のべースが速いパッセージで音階を降りていく流れも痺れる。先程から盛んに口を酸っぱくポピュラリティーという単語を連呼してきたが、こちらは「ぜひともダンスフロアで聴いてくれ」とデカデカと書いてあるかのようなアレンジだ。なんだかんだ言っても僕はこういうのが一番好きなんだよね〜。もうジッと聴いてなんかいられない。ステップを踏みたいー!回りたいー!酒持ってこーい!思わずこんな気分になってしまう。

 先の2作と比べると、まあポピュラリティーはなく、聴くシチュエーションを選ぶ楽曲だとは思うが、そんなの関係ないね。これが一番気持ちよく踊れることに特化した、エキサイティングなアレンジだ。TMNのアルバム「EXPO」にはこんな感じの曲がいくつもあった。あとはEUROGROOVEの「THE BRAND-NEW KIND」あたりからの流れでこちらにスイッチしたら気分良さそう。

 これはYouTubeで自分で再生するのではなく、ダンスフロアでDJに回してもらいたい。そんなかつての日常は、いつ戻ってくるのだろうか。

GAK「Dreamed a Dream GAK"00's"Remix」

 最後はギタリストによる作品。僕が日頃から聴く楽曲は鍵盤奏者が作ったものが圧倒的に多いので、たまにギタリストが作った曲を聴くと真新しく感じるし、ギタリストって面白いこと考えるなあと思う。この作品のサビに入る前のオーケストラ・ヒットの使い方は、90年代前半のJ-Popシーンが好きな方にはたまらないだろう。WANDS・大黒摩季などのビーイング勢の音楽を彷彿とさせる。もしも浜崎あゆみが10年早く生まれてきて、出会ったのがMAX松浦ではなく長戸大幸だったら、こんな楽曲がリリースされていたかも知れないね。アウトロも遊び心満載で思わずニンマリさせられた。ジュリアナのお立ち台を知る世代は楽しめるんじゃないだろうか。