お気に入りイントロBest3 TRF編
過去記事でTM NETWORKの楽曲を題材に、イントロの魅力を語ってみたのだが、今回もやはりイントロに注目して音楽鑑賞をしていきたい。取り扱うのはTRFのシングルだ。
TRFの楽曲は魅力的なイントロの宝庫。開始早々にリスナーの注意をかっさらうアイデアが満載だ。それらを筆者のお気に入り度の順に、ランキング形式でご紹介する。シングル・カットされていない中からも、魅力的なTRFのイントロはたくさんある。それらを含めると順位は変わってくるが、今回は対象をシングルに絞ってピックアップした。
それでは発表!TRFの好きなイントロBest 3!
第三位・Overnight Sensation
冒頭の高音シンセサイザーの輝かしい響き。これとドラムのフィルインの合わせ技で、僕は一瞬にしてこの曲に惹きつけられた。歌い出すまでの間の、音量大きめでレコーディングされたコーラスとドラム・パートの息の合ったコンビネーションに注目したい。この「Shake!」「Dance!」といったフレーズを発音した直後に間を設けることで、楽曲の進行に急ブレーキをかけたような効果を上げることができる。こうした、発進・停止を繰り返すフレーズで、メリハリの効いた展開が生まれ、リスナーのテンションを上げていくのである。
インパクトのある音色を生み出すために、音色の設定を工面するのはもちろん大事だが、目立たせたい音を発音した直後を無音・またはそれに近いぐらいアンサンブル全体の音量を絞ることも検討しておきたい。こういう音の後処理をすることでインパクトの大きさが俄然変わってくる。
それから、歌いだしの直前に入ってくるブラス・セクションの派手な駆け降りるフレーズ。これはイントロの中でも一番の聴きどころだ。初めてこのパートを聴いたときは、まだボーカルのユーキがひとことも発声していないというのに、この時点ですでに感動で胸がいっぱいになったものだ。
自分の見せ場を作りたい!という管楽器奏者の方は、高速運指の練習に精を出してはいかがだろうか。ボーカル・パートの休符の隙間に、ここぞとばかりに練習の成果を炸裂させるといい。
ブラス・セクションが魅力的なイントロといえば、B'z「LOVE IS DEAD」も併せてチェックしておきたい。過去記事で登場したLIPSELECTのメンバー・Masakeyお気に入りの楽曲。シングル・カットはされていないので、ファン以外の方には触れる機会はそう多くはないだろうが、筆者も大好きな楽曲だ。
第二位・masquerade
ギター・サウンドを前面に押し出した、ロック・テイストの強い曲。実際に弦を弾いているのではなく、シンセサイザーでギターに寄せた音色を作って演奏している。この曲の発売当時は、シンセサイザーでギターの音を出そうとしても、再現技術がまだ発展途上で、どうしても嘘臭さが残ってしまうものだった。そんな中でリリースされた本作の強烈なサウンドには驚かされたものだ。
これはイントロのギターの動きに注目しておきたい。白玉音符で段階的に音程を駆け上がった後のリズムの刻み。このパターンだけでも延々と聴いていられるが、その後の速弾きのソロ・パートが胸熱だ。
通常ならこういうパートは2コーラス目が済んだ後の間奏に持ってくるものだが、TRFならこれをイントロにしても、ボーカリストが楽曲の開始早々、長い間手持ち無沙汰で困ることはない。イントロの尺が少々長かろうが、ダンサーがしっかり見せ場を作ってくれる。
歌い出しをサビ始まりにするのは、冒頭からインパクトを出したいときにはよく用いられる手法だ。「masquerade」もそうである。TRFの曲はイントロクイズに出題したとしても、すぐに答えがピンとくるような印象的なイントロが多いが、この曲はド頭から正解を言っているので、誰でも答えられるだろう。
ただし、ボーカリストにとっては、普通の曲よりは緊張を強いる楽曲構成だろう。事前に鳴っている楽器の音がないため、まったく何の足がかりもない状態から、音程をピシャリと当てなければならない。楽曲提供をする際は、ボーカリストがこれに対応できるかどうかは考慮に入れておきたい。まったくの新人でステージ経験もゼロ、という歌い手のデビュー曲がこの構成だと、やや荷が重いのではないだろうか。
ライブのセットリストで2曲続けるときに、後の曲がサビ始まりの場合、リハーサルでは前の曲のアウトロから行ってあげると、ボーカリストも雰囲気をつかみやすい。ぜひ実践してみよう。
サビ始まりの曲といえば、過去記事で登場した藤崎未花(現・MINT SPEC Mii)の「ひまわり」も併せてチェックしてみてはいかがだろうか。
第一位・EZ DO DANCE
YouTubeでは2000万回再生された、超人気動画。イントロに限らず、最初から最後まで盤石のクオリティー。発売からそろそろ30年が経とうとしている。日本のダンス・クラシックと言っていいだろう。
印象の強さなら、やはりこのイントロが突出している。ノリの良いビートに、音程を細かく駆け上がるブリッジ。初めて聴いたときは、Overnight Sensation同様に、冒頭のDJ KOOによるラップが始まってもいないうちから、僕はこのサウンドに完全にロック・オンされてしまった。こちらも、イントロクイズで出題されても、すぐに答えられるぐらい、リスナーには印象深い音だろう。
地球上で最高の楽器は人間の歌声!なんて言葉をどこかで見たことがあるが、やはり声の存在感はどんな楽器をも凌駕する。クリエイターの方は、楽器演奏によるイントロの制作に行き詰まってきたら、声から始まるイントロを一度作ってみてはいかがだろうか。
先の「masquerade」も、声から始まるイントロには違いないが、「EZ DO DANCE」ではもっと感情を勢いよく込めて声を出している。冒頭の、3,2,1...Breakdown!には音程の制約がない分、感情表現がより自由になるのだ。こういうのはどんな楽器よりも一際耳に残る。人の声は12個のキーノートには当てはまらないような、無限の広がりを持っている。リスナーの集中力を一気に高めるような、魅力的なカウントダウンをしてみよう。
ボーカリストがステージに立っているときは、客席が湧いていればそれに乗って自然と声に勢いが出てくる。だが、駆け出しのアーティストだと客席が湧くのを待っているわけにはいかない。自ら発する声の威勢の良さを波及させて、動きのない客席を温めよう。自分自身が盛り上がりの起点になるのだ。ボーカリストには音程をキッチリと辿る以外にも、声の使い道がいろいろある。
EZ DO DANCEではユーキ自らがカウントダウンしているわけではないが、このイントロの声の使い方から、ステージのパフォーマンスにおいて、ボーカリストの参考になるものはある。DJ KOOもユーキも、ライブ・パフォーマンスで観客を煽る際に、巧みな声を使い方をしている。レコーディング音源を気に入ったら、ライブ映像もチェックしてみよう。
特にダンス・ミュージックでリズムに乗って景気をつけたいなら、カウントを声で取るのはテンションを上げるのには効果的な手段。
洋楽のダンス・ミュージックにも、カウントの発声で始まるイントロがある。C+C MUSIC FACTORY「Do You Wanna Get Funky?」のイントロも併せてチェックしていただきたい。
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