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「仕事辞めたい」と思うたびに成長できる!|求人広告ライターの日常

こんな仕事辞めてやる!
 そう思うたびに開く転職サイト。しかし、たくさんの求人を読んでいるうちに思うのです。「この表現、わかりやすいなぁ!」「次書く時に使おう!」と。

 私は求人広告のライターをしています。リクナビやバイトルなど、求人サイトに掲載する求人の詳細を書いています。「仕事内容」や「職場の雰囲気」など、求人を開くと出てくる文章全般だと思ってください。

 一般的にネット記事ではPV数(閲覧数)を重視しますが、求人広告では採用者数がすべて。究極的にはPV数1000&応募数100で採用0より、PV数10&応募数5で採用1の方が価値ある記事となります。
 WebライターにとってPV数を気にしなくていいのは、気楽でよいでしょう。しかし、それでも極端にPV数が少なかったり、応募数が少ないと、一気に惨めな気持ちになります。

 先日、私は自分の記事のPV数を見て愕然としました。想定の半分以下だったからです。

 決して手を抜いて書いたわけではありません。むしろ気合を入れて書きました。常々「いい記事を作りたい!」と思って、真心こめて書いてます。「応募者が知りたいことは何だろう」と考え、「この企業の魅力は何だろう」「この情報は知らなかった!ぜひ知ってほしい!」など、限られた文字数内に魅力を盛り込んだつもりです。
 しかし結果は惨敗。私が求人広告を書いて約一年経ちますが、これまでに書いた記事は、誰にも届いていませんでした。閲覧数も少ないし、応募も少ない。あれほど絶望したことはありません。

「何か問題があるんだろう。直さないと」
 そう思い、次回の原稿は工夫しました。サラッと読めるように、内容を削ったのです。メリットを大きく打ち出し「よくある求人広告」を作ったつもりでした。

 しかし求人を出しているクライアントから、こんな指摘が。

「とても魅力的な募集に思えない。こういうものなのかもしれませんが、もっと他にありませんか」

 もう目の前が真っ暗になりました。再出発を意識した矢先の出来事ですから。もうどうしていいかわかりません。

 だから、吹っ切れることにしました。セールスライティングやセオリーを全部無視して、書きたいように書いたのです。

「これで怒られたら、もう知らない!」

 もしクライアントが激怒したら、この仕事を辞めよう。読まれない求人広告を書く自分はセンスがないんだから、辞めた方がいいだろう。なんて思っていました。
 そんなこんなで書き上げた原稿ですが、クライアントに送るのは本当に恐怖そのもので。本当に怒られたらどうしようと、同じ考えが脳内で無限ループします。
 しかし今の私には、これ以上の原稿は書けません。送信ボタンを押して、スマホの通知を切って、布団に籠りました。

「次の仕事、探さなきゃな」
 ベッドに寝ころびながら、転職サイトを検索。バイトしながらライターをしようと、マイナビやIndeedを見ていました。

 思えばライターになる前、私はなかなか仕事が続きませんでした。毎晩のように転職サイトを見て、長く働けない自分を責めたものです。

「あの頃から私、ちっとも成長してないな」
 ちっとも笑えないけど、何回も同じことを繰り返している自分がおかしく思えました。

 サイトの使い方も慣れたもの。まずは勤務地を入れて、職種はコレとコレを入れて。あぁ、レア求人もチェックしなきゃ! ……なんて見ているうちに、ふと思いました。「この求人はココが不満」「もっとこの情報が欲しい!」などなど。

 そういえば、私が求人広告を書き始めた時、先輩ライターにこう褒められました。
「求職者目線のいい記事が書けてるね!」

 私はいつも「自分がこの企業に入るなら、ここが知りたい」と考えて求人広告を書いています。そして自分なりの疑問点をクライアントにぶつけてきました。その姿勢が評価されたものです。先輩ライターに「PV数が見込めないだろうな」といわれた案件で、想定の倍以上のPVを獲得したことがありました。理由はわかりませんが、求職者に寄り添った記事が作れたことが要因だと考えています。

 かつては、仕事が長続きしない自分・転職癖がついた自分を責めていました。しかし転職サイトを見漁った経験が、今の仕事に役立っているのです。なんだかお笑い話ですよね。そう思ったら、仕事を探す気力が失せました。

「次の仕事は、クライアントに怒られてから考えよう」
 そう思って、転職サイトを閉じました。

 少し経って、クライアントから返信が。

「いい感じですね! 当社の魅力がよく書かれています。今までこの着眼点で書いた人はいませんでした」

 なんと大絶賛! 修正事項をまとめたPDFに「ココ、いい感じですね」とわざわざ追記されていました。
 結果、クライアントが大満足したまま校了。結局私が何で悩んでいたのか、わからなくなりました。

 実はこんなことは、日常茶飯事です。トラブルがあるたびに「辞めてやる!」と思います。でもなんだかうやむやになって、こう思うのです。

「もう少しだけ、この仕事を続けよう」

 上手く収まると、なんだか許された気持ちになります。そして今の仕事を頑張る気力が湧くのです。

 もちろん隙あらば、よい仕事に転職するつもりですけどね!
 自分で書きながら、応募内容をじーっくりチェックしています。しかし未だよい転職先は見つかりません。

 気づけば、求人広告ライターチームの、若手内ではベテランになっていました。多分気づかない内に、今度は本当のベテランに昇格しているのでしょう。「続いているのは向いている証拠」だと思うことにして、ひとまず今の仕事を頑張ろうと思います。


こんなところまで読んでくださって、ありがとうございます!