第5章(第2稿) ゴールを目指す過程で自分のベストを尽くし、出た結果に全責任を負う

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フリーランスとして独立した当初、実に分からないことが多く右往左往したものです。まあ、独立するまでの33年間、会社組織に属していたのですから当然ですが。

個人事業主の開業届を出したりするのは、税理士さんにお願いして届を作ってもらい、それを持って税務署に提出すれば済みますが、自分のビジネスをどう展開していくかなどは自分で考え、最終的に自分自身 で決めていかなくてはなりません。

僕は、ITコンサルタントという肩書きを名刺に刷っていますが、お客様は中小企業の社長さんが中心です。そして、ITの技術寄りな部分ではなく、ITをどう使いこなすかという点に重きをおき、あくまでユーザー側の視点に立って、システムの導入や更新、運用の仕方などをアドバイスしています。

過去33年間の会社生活を通じて、大型基幹システムを司る情報システム部の責任者や、会社の内部統制状況をチェックする内部監査部の検査役、そして営業、人事、BPR推進など多岐に亘る部門で培ったキャリアを活かして、日本全体の中で98パーセントを占めるといわれている中小企業の経営改善、効率化に貢献したいと考え独立起業したのです。

そうした経験を活かして何をどう提供できるのか、きちんと相手に伝え納得してもらうことから手探りです。自分はこのような貢献ができると提案しても、お客様は必ずしもそれに価値を見出してくれるとは限らないからです。

そして、具体的にお手伝いできることになっても、いったいどのくらいの対価を頂戴していいか悩みました。あまり高くしても、その対価にふさわしいサービスと評価してもらえるのか不安ですし、あまり安くすると、そもそも提供するサービスの質を疑われてしまいます。

世に経営コンサルタントとして活躍している人はたくさんいます。大手のコンサルティングファームに頼めば相当高額なフィーを提示されます。そんな中で、いったい自分の市場価値はどれくらいが妥当なのか 悩んでしまいました。

そんなときに、出会った言葉があります。当時は、いろんなセミナーやワークショップに参加していましたが、その中に「社会人版キムゼミ」がありました。そして、その主宰者であるジョン・キム先生の次の言葉を目にしたのです。

「結果に対する全責任を自分自身で負う決意に
         基づいた選択は、常に正しい」

ジョン・キム 「媚びない人生」(ダイヤモンド社)

フリーランスとして独立したのであれば、当然すべての責任は自分自身が負わなくてはなりません。それは分かっていても、自分の下した決断に自信がもてず、結果がうまく出なかったらどうしようという不安がつきまといます。

そんなときに、キム先生の言葉に接し、ここでも感化されやすい自分は 「そうか!どのような結果になろうと、そのすべての責任は自分にあると覚悟しているのだから、その選択は間違っていないのだ!」と思うことにしたのです。

さらに続いて、キム先生の次の言葉にも感化されます。

「目指す最終目標は、ゴールに到達することではなく、
   ゴールを目指す過程で自分のベストを尽くすこと」

ジョン・キム 「媚びない人生」(ダイヤモンド社)

誰もが一度は、 多くの努力が水泡に帰すという経験をしているのではないでしょうか。僕にもあります。とにかく必死に営々と築き上げてきたものが、外部環境の突然の変化などで価値を失ってしまったりします。

もう立ち直れないほどのショックを受け、明日からどう生きていくか、途方に暮れる思いをしたこともあります。

キム先生の言葉は、価値をどこにおくかということです。例えば、山登りをするとします。山を登る以上、誰でも頂上を目指すでしょう。では、山登りの最終目標は頂上に到達することでしょうか?

多くの人が「イエス」と答えると思いますが、では、もし頂上を目前にして天候が急変し、登頂を諦め下山することを決意したら、それは目標を達成できなかったということになるのでしょうか?

天候が急変した時に、無理に頂上を目指すのではなく、すぐさま下山することがベストの選択だと信じ、その通り行動できたとしたら「ゴールを目指す過程で自分のベストを尽くす」という最終目標は達成できたと言えるでしょう。

天候の変化のように、外部環境の急変などで、それまでの努力が水泡に帰したとしても、その過程で自分のベストを尽くしてきたのなら、良しと思うことです。

しばらくは落ち込んで、何もしたくなくなるかもしれませんが、時を経て気力が充ちてきたら、気を取り直して次なるチャレンジに向かえばいいのです。

この考え方ができれば、結果に対する全責任を自分が負うことができます。結果を、社会や他人のせいにすることはできません。

もう一つ、東京大学を受験するケースを考えてみます。このケースのゴールは当然、試験に合格することです。

でも、合格することを最終目標にすると、そこには試験問題の傾向や難易度、ほかの受験生のレベルの高さなど、自分ではどうしようもない不可抗力が介在します。

すると、試験に合格できなかったときに、試験問題やほかの受験生が言い訳に登場しそうです。

でも、合格を目指して自分のベストを尽くすことを最終目標にすれば、それは不可抗力ではなく、自分で制御可能な可抗力になります。ベストを尽くせたかどうかは100%自己責任であり、不可抗力が介在する余地はありません。

こうして、キム先生の言葉に導かれ、フリーランスとして一人で道を切り拓き、ゴールを目指す過程で自分のベストを尽くし、出た結果に100%責任を負う覚悟を持つことで、不安を感じたり悩んだりすることはほぼなくなったのです。

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