第8章(第2稿) 小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道

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故事ことわざに「愚公、山を移す」という言葉があります。その意味は以下の通りです。

その昔、中国の愚公という名の90才にもなる老人が、家の前にある二つの大山を他へ動かそうと、土を運び始めました。

人々はその愚かさを嘲笑しましたが、愚公は子孫がその行いを引き継げば山を移動させるだろうと、一向にひるみませんでした。

その志に感じ入り、天帝 (神様) が山を移動させ平らにしたという故事に基づき、どんなに困難なことでも辛抱強く努力を続ければ、いつか必ず成し遂げることができる、という意味の言葉になったのです。

「愚公、山を移す」(故事ことわざ)

昔から、「塵も積もれば山となる」「急がば回れ」「石の上にも三年」「思う念力岩をも通す」「滴り積もりて淵となる」「ローマは一日にして成らず」など、小さいことでもたゆまなく継続することで、大きな結果にたどり着けるとしたことわざがたくさんあります。

いずれも「速習術!」とか「すぐに儲かる!」とか「これが一番の近道!」なんていう魅惑的な言葉とは真逆の意味の言葉です。

人間、還暦を迎える頃の歳になれば、どうしてもせっかちになりますし、早く結果がでることに魅力を感じてしまいます。年金問題で「老後に2千万円必要」などと話題になれば、「【今すぐ月利25%!】こんな簡単なことで資産は増加する!」とか「億を余裕で狙える!次世代FXトレード手法が初解禁!!」なんていう言葉が実に魅力的に聞こえます。

「滴り積もりて淵となる」のを待つなんて悠長なことは、ばかばかしく思えてきます。でも、魅力的に見える言葉が本当のことなら、世の中お金持ちだらけになっているはずですが、そんなサクセスストーリーはとんと聞こえてきません。

やはり、近道と見える道は、一番の悪路なのでしょう。

ここは、やはりマルコム・グラッドウェルの「1万時間の法則」が思い浮かびます。

「ある分野でスキルを磨いて一流として成功するには、1万時間もの練習、努力、学習が必要だ」
マルコム・グラッドウェル 「天才! 成功する人々の法則」(講談社)

1万時間というと、毎日7時間費やしたとして1429日、1年に240日働くとして約6年の月日が必要です。僕がITコンサルタントとして独立起業してから満8年が経過しましたので、仕事の面ではクリアしたかもしれません。

それ以外に、僕が読み書きのスキルを磨こうとして毎朝行っているのは、以下の通りです。()内の数値は、2020年6月16日時点の継続日数になりますが、こちらはまだまだですね。

1. SNSで朝の挨拶 (2544)
2. ブログ記事作成 (2359)
3. デジタル写真日記で前日の出来事を記入 (6192)
4. 5分間ペン字練習 (3090)
5. 2ページ読書 (859)
6. RSSリーディング (1837)

SNSで朝の挨拶をするのを、私たち世代の人間は「生存確認メッセージ」と呼んでいます。

2ページ読書は、以前6分間の読書を毎日続けようとして、248日で挫折した経験から、思いきってぐっと少ないページ数にして再開したものです。そのお陰でずっと継続できています。

RSSリーディングとは、自分が興味を持ったWebサイトのニュースやブログが更新される都度、教えてくれるサービスを利用して読んでいる方法です。これは、一々探しに行かずに最小限の手間と時間で情報にアクセスできるので重宝しています。

こうした小さいことを日々、続けていくことを、今年(2020年)2月に亡くなった野村克也さんは「凡事徹底」と呼んでいました。

「つまらない事でも凡事徹底、その繰り返しが私の野球生活であり、人生だった。だから凡人でも大きな結果を手にすることができたということを申し上げておきたい」
野村克也 「野村メモ」(日本実業出版社)

目先の結果や利益を近視眼的に追い求めるのではなく、ひたすら愚直に「平凡を非凡に努める」凡事徹底こそ、これからの自分に求められる生き方だと思っています。

僕は2014年元旦から毎日ブログ記事を更新しています。もう6年半になりますが、いつからかブログを書くのは、文章を紡ぐ鍛錬だと思うようになりました。

そう思うようになったのは、剣豪・宮本武蔵が残した次の言葉に出会ったからです。

「千日の稽古を『鍛とし、万日の稽古をとす」
宮本武蔵 「五輪書」(ごりんのしょ)

一千日 (約3年) 一つのことを稽古し続けることを「鍛」といい、一万日 (約30年) 一つのことを稽古し続けることを「練」というわけです。

「鍛」と「錬」の違いは、辞書によると「鍛」は金属を打ち鍛えること、「錬」は金属を良質なものに鍛え上げること、とあります。

ブログの連続更新は、現在2400日弱となっていて一応「練」の段階 に入っています。このまま毎日、更新を続けると、1万日目は2041年5月18日に訪れます。今から21年後、僕は85歳ですが、それまではなんとしても更新を続けるつもりです。

そういえば、2014年に83歳で亡くなった高倉健さんが座右の銘にしていた言葉があります。

「往く道は精進にして、忍びて終わり、悔いなし」
高倉健 「座右の銘」

意味は、以下の通りです。

行く道は精進にして

辛いことがあっても、それは精進である。
自分を高めるために必要なことなのだ。

忍びて終わり、悔いなし

それを我慢したまま、たとえそれで終わることがあっても、自分の向上にとっては確実にためになっているのだから悔いはない。

自分の書くブログなど、高倉健さんの究めようとした道と比ぶべくもありませんが、気持ちだけはしっかり倣っていきます。

そして、たいそうなことでなく、ほんの小さなことを毎日続けることで微かな差が生じ、それを5年、10年、20年と継続することで圧倒的な差になるのだと信じ、日々の習慣を積み重ねていきたいと思っています。

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