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にっぽん怪盗伝『正月四日の客』

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角川文庫「にっぽん怪盗伝」 『正月四日の客』本番 & 取材の模様など。
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#池波正太郎

蕎麦尽くし和LIVE

2022年正月四日上中里そば浅野屋を舞台に、池波正太郎作『正月四日の客』を津軽三味線と語りの和LIVEが実現。食との初共演だ!13名様限定のLIVEチケットは、蕎麦セット(粗品付せいろそば))とちょい呑みセット(おつまみ4種・日本酒(1杯)・せいろ蕎麦)の2種をご用意。告知を始めるとお客様の反応が素晴らしい。正月にお蕎麦屋さんで蕎麦も食べられてお酒も…という付加価値を魅力に感じてくれたようだ。一週間ほどで完売となった。 本作の舞台化を考えた時から、この蕎麦尽くしが目標だった

再生

かたりと和LIVE一欅庵 2021.5

~にっぽん怪盗伝『正月四日の客』~(池波正太郎作) 表現活動は不要では無いことを信じて自主公演再開。 秘めた過去を持つ蕎麦屋の亭主と大泥棒に芽生えた親愛の情、 そして、人の心と食の結びつきを描いた白浪物を、作者の命日に上演。 お客様と関係者のご理解と勇気合ってこその本番でした。 皆様、本当に有難うございました。   撮影:osamu137

浅野屋というその蕎麦屋は、京浜東北線の上中里にあった

昨年から今年にかけてー 世情の変化に、どんな影響を受けたか文学作品を語る表現活動は激変した。自主企画で多い時は100人規模の公演を打ってきたが、その一般的には小さくとも有難い営みはガイドラインという価値観の中に入らない。5000人とか、キャパの半分とか…物差しが違いすぎたり、「はい、赤字覚悟ね」みたいな枠でくくられても、身動き出来ない。助成金も、何か事を起こす人への制度であり、動けない者への施策ではない。 何が起こっても自己責任。当然の覚悟+低リスクな企画とは? 考え続け

彼方に浅草寺の大屋根がのぞまれると言った風景で…

池波正太郎作『正月四日の客』取材で、向島から馬道を通って浅草へ。 本作の主な舞台は、蕎麦「さなだや」。 (『正月四日の客』より)店は枕橋の北詰にあり、西は大川、東は水戸家下屋敷と言った静かな場所だし、源兵衛掘の対岸は中ノ郷の瓦町で瓦焼の仕事場が堀川に沿って並び、煙がいつも上っている。大川を隔てた対岸は、花川戸、山の宿、今戸の町並みの彼方に浅草寺の大屋根がのぞまれると言った風景で… 隅田川の向う、浅草方面を眺めても、今や浅草寺の大屋根は見えない。こんな思いをするごとに、都

ほれ、常泉寺という寺があるね…

1596年(慶長元年)創建の古刹。 池波正太郎作『正月四日の客』では、ここに大泥棒の手下が寺男に成りすまして住み込む。 作品に登場する寺が現存するのは有難い。登場人物が行き来する場所の位置関係もイメージしやするくなる。 昭和3年、言問橋の完成にともない新たに作られた言問通りは、常泉寺の境内の中央を分断する形となった。政府は常泉寺に対し、代替地を用意し寺院を移転するよう提案したが、常泉寺は歴史が古いことを重要視し寺域を縮小して現在地にとどまった。 『正月四日の客』の主たる

上田の蕎麦に喉鼓(『正月四日の客』)

池波正太郎に『正月四日の客』という短編がある。「にっぽん怪盗伝」に収められたピカレスク小説のひとつだ ・さなだそば『正月四日の客』には、黒々と光った無骨な手打ちそばを、辛み大根おろしの絞り汁とそばつゆを合わせた〈真田汁〉なるもので食べる〈さなだそば〉が出てくる。作中、信州・上田松代で食される〈さなだそば〉に思いが募り、旅に出た。 池波正太郎が通い、〈真田そば〉をメニューにする〈刀屋〉。営業時間は11~18時とある。もちろん売り切れ御免だ。一体間に合うのか。道々、収穫期の田