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【番外編/おりものって何だ?】

あまりじっと見てはいけない気がする。けれど、それでは何か分からない。だからと言って、周囲に問うてはいけない感じもする。
世の男性諸氏!そうしたテレビコマーシャルがあるだろ!ボクはずっと疑問だった。そう・・・「おりものシート」って何だ?
ナプキンについては、分かった。触ってもみた。しかし、これは何だ、何なのだ?そう!「おりものシート」とは何だ?
この「おりものシート」なるものには、まだ直接出会ったことがないぞ。確かにナプキンに似た雰囲気を醸し出しはしていて、女性が“困った”の際に使うのであろうな、と言うことは推測できる。きっとナプキンと似たような使い方をするのであろうな、と言うことも推測できる。しかし、生理以外にも女性はまだ“困った”を抱えているのか?何に、いつ、どう困っているのだ!?
ここはもう行くしかない。ボクはそう覚悟を決め、大阪市中央区道修町に本社を構える小林製薬の玄関をくぐったのだ。
 
「そうなんです。若い男性もその商品名は知って下さっているんですが、SNSなどの書き込みを見ると『髪の毛がサラサラのサラサーティ』って書いてあったりして。(笑)名前は知っているけれど、何のための商品か分かってない人が多いかな、と」

そう優しく切り出してくれたのが小林製薬の「サラサーティ」のブランドマネージャー・白石千夏さん。

(小林製薬「サラサーティ」ブランドマネージャー・白石千夏さん)

この「サラサーティ」こそが、日本で1988年に初めて発売された「おりものシート」なのだ。
世の男性諸氏よ、まず「おりもの」とは何なのかをご存じだろうか?実際のところ正解を答えられる男性は極めて少人数に違いない。いや、でも、答えられないからと言って自らを卑下することはない。当然、ボクも知らなかったし、白石さんも、こうフォローする。

「女性でも分からないと言う方、おられますよ」

む、む。そうなんだ!?

「そうなんですよ。本当に。生理に関しては学校教育で教えてくれることが多いんです。でも、おりものって教えてくれるタイミングがほとんどなくて。例えば、お母さんが、娘さんの下着を洗おうとして、おりものが付いていることに気付いた。娘に言わねば!と思っても、自分に知識がないので教えてあげられないと言うケースが意外とある。女性も詳しく知らない方が多いと思いますよ。『何なんこのおりものって、邪魔だなぁ』と言う程度かもしれません」

む、む、む。なおのこと謎は深まるばかりだが、下着に付くものらしく、邪魔なものらしい。ところで「おりもの」とは漢字でどう書くのだ?ボクは「おりものシート」なんだから「織物シート」だと思っていた。でも、そうじゃないらしい。じゃぁ、ワインの「おり」のように「澱」と書くかと思いきや、これもそうじゃないと言う。じゃぁ、何だ?
まずは、ここから白石さんに尋ねてみた。

「おりものの“おり”とはあえて漢字で表すなら“下り”です。子宮と腟から“下りてくる”分泌物の総称のことなんです。」

そうなのか!ではそれは、何のために下りてくるのだ?

「役割の一つとしては腟内環境をきれいに保つためなんです。腟って外から雑菌が入ってくるし、お尻や尿道とも近いので結構いろんな雑菌が入ってきやすい環境にあるんですよ。にもかかわらず、腟壁って普通の皮膚とは違って、口の中と同じような粘膜で覆われているのですごく繊細なんです。おりものは、そんなデリケートな腟内を、雑菌たちから守ってくれるという大きな役割“自浄作用”を担ってくれているんんです。」

そうなのか、おりものは「いい奴」だったのだ。
感心しているボクを尻目に白石さんは続ける。

「おりものって、この自浄作用とともに、精子が子宮に届くのを助けるという役目もあるんです。すなわち、おりものは絶対必要なものなんです」

なんと、そうだったのか。女性の“困った”の一つであるとか、邪魔者と言ったけれど、君は女性には絶対必要なものだったのだ。邪険に扱い本当に申し訳ない。
ところで、そもそも、このおりものとは、どんなものなのだ?

「透明な液体で、ちょっと白から黄色っぽい色をしていたりします」

それが下りてくるのだから、下着が汚れないようにシートを貼る。なるほど。おりものシートたるものがどう言うものかが分かってきたぞ。
では、このおりものは一度に何㏄ほど下りてくるのだろう。
ここは白石さんに替わって、インタビューに途中参加して下さっていた泉谷紗也佳さんが間髪入れず答えてくれた。

(泉谷紗也佳さん)

「個人差ありますが、一日に約1.8グラムです」

グラム?単位はグラムなんだ?

「そうですね。粘性が高いのでグラムで測定されることが多いです。トロッと、とか、プルンとしている、と言った感じでしょうか」

そうなのか、プルンとしているのか。可愛い響きはあるものの、この粘性のある液体と言うところが“困った”を産むようだ。
再び白石さん。

「まず仕事中などに濡れていないか不安になりますし、実際ベタベタしていて気持ち悪い。また下着に付いてカピカピになると、デリケートゾーンを傷つける場合もあるんです。そうしたおりものと、生理中の一週間以外は毎日付き合わないといけないんです」

な、な、なんと。生理中以外は毎日!?

「そうですよ。生理は一週間だけケアしていたら良いんですが、おりものは、その期間以外はずっとあるんです。さらに排卵期近くになると、ちょっとトロっとしたものに変わったり、量が増えてきたり。一方で、生理前にはネバネバしてきたり、量が減ったり。人によっては、生理の後には少し臭いがきついと感じる期間があったりと、生理周期で変わるんです」

な、な、な、なんと、臭いまで。しかし、それは健康のバロメーター的役割をすると言うのだから、さらに驚きだ。

「おりものの正常な臭いはヨーグルトみたいな臭いなんです。腟内も腸と同様に善玉菌と悪玉菌が存在するんですが、善玉菌が出すのが乳酸なので、腟内状態が健康な場合、若干酸性によっているので酸っぱい臭いがするんです。それは、元気な臭いなんです」

では、不健康な時は?

「魚の腐ったような臭いとか、ツンと鼻につくような刺激臭がしたりします。その時は病気の可能性があるというわけです。さらに、臭いがしていなくてもおりものがボロボロとカッテージチーズのような状態になると、それはカンジダと言う菌が悪さをしている可能性があります。腟内環境が乱れると、腟内の菌バランスも崩れやすくなってしまいます。そのため、このような臭いや性状の変化が健康のバロメーターになるというわけです」

なんとも神秘的。ここは女性に限定しないけれど、人間の身体とは何と神秘的だと改めて思う。
さぁここで一旦「おりものシート」の話題へと戻る。
おりものに関しては朧気ながらも分かった気がする。おりものシートなるものが必要なのも理解出来た。では、どうやって使うのだ?白石さんは、ずっと呆けた顔をしているボクに、優しく丁寧に教えてくれる。

「パンツのデリケートゾーンと触れる部分って、コットンが使われることが多いのですが、そこに貼っていただき、3~4時間に一回は替えてもらいたいと思っています。ナプキンと違ってとても通気性の良いシートですが、おりものや汗を受止めているので、雑菌が繁殖しやすい環境だからです。」

えっ、そんなに?ボクの顔はさらに呆けたものになったに違いない。

「我が社の男性社員、男性役員だって、一日に一回替えればいいんだろ、と思っている人がいます。オフィスで8時間から9時間働くのであれば、その間、2回は替えて欲しいですね」

多分それは、トイレに行って替えることになろうかと。う~ん、ここでも出てきた「女性のトイレ問題」。生理のときだけではなかったのだ。
「女性社員はトイレにお喋りしに行っていると思っていた」と言う人もいたのではないか。「何故、そんなにトイレに行くんだろうか?分からないや」と訝しく思っていた人もいたのではないだろうか。
しかし、白石さんはこう言う。

「分からないで終わらないで欲しい、知ろうとして欲しいですね」

さらに、泉谷さんはこう言う。

「生理以外も大変なんだよ、と言うことを知って欲しいですね」

はい!分かりました。
まず知ること。改めてこの番外編の「おりもの」の取材をしていて、そう思った。「無関心」それが一番の“悪”に違いない。


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