妄想レィディオ #7

もし、貴方が突然、言葉を無くしたら?

J-WALKの「何も言えなくて・・・夏」をお聞きいただきました。
さて、今日のテーマは「失語症」です。言いたいのに、言えない。言葉が出て来ない。それだけじゃありません。例えば「りんご」と聞いても、「りんご」が何か分からない。でも、赤くて皮を剥いて食べる“あれ”のことは知っている。けれど、その“あれ”と「りんご」が結びつかない。さらに、読む、書くと言うこともままならない。そんなやっかいな障害のある方が、実に50万人もいて、明日、俺も、そこにカウントされる可能性もあると言います。それが「失語症」です。いやぁ、知らなかったです。でも、これ、知らなかったでは、済まされないよね。
引き続き、電話を繋いで、言語聴覚士の“くるみ”さんに、お話しを伺ってまいりましょう。“くるみ”さん、よろしくお願いいたします。
「はい!こちらこそ、よろしくお願いいたします」

西村さん②

まず、前半の復習ですが、人間の左の脳には言語中枢と呼ばれる箇所があって、そこが、何らかのキッカケで、例えば脳梗塞とか脳炎、脳腫瘍、くも膜下出血などで損傷を負ってしまうと、こうした失語症と言う障害が出る可能性がある、と言うことでしたよね。
と言うことは、比較的、年齢の高い方が、この失語症は多いと言うことですかね?
「そうですね。そうした疾病は年齢が高くなるにつれ増加する傾向がありますから、相対的に年齢層は高くなりますよね。しかし、くも膜下出血などは、40歳から50歳台の働き盛りに多いですし、失語症は、事故によっても起こりえますので、どの世代の方にとっても、無関心ではおれない障害だと思いますね」
40歳台から50歳台と言えば、ボクなど、思い切りその世代になる訳でしょ。自分で言うのも何ですが、その働き盛り世代で、この障害を抱えるのは、ちょっと辛いなぁ。多分、責任世代。部下を何人も抱え、マネージメントしてる世代。まぁ、それまでバリバリやってた訳でしょ。それが、ある時点から、出来なくなる。バリバリやっていた人ほど、辛いだろうな。って、そもそも、職場に復帰出来るものなんですかね?と言うか、改善するものなんですか?
「リハビリによって、改善はします。軽度の失語症であれば、職場復帰を目指して、皆さんリハビリに励まれます」
実際、職場復帰出来ておられるんですか?
「残念ながら、復帰率は1割程度です」
えぇ~。それだけしかないの。でも、改善は、するんでしょ?
「改善するとは言え、喋れる言葉数は、やはり少なくなります。また、文章も、どうしても単純になります。さらに、複雑な内容や、新規の内容は、理解が難しいかと思いますね。ですから、お仕事の内容によっては、日常会話がある程度出来るところまで改善出来れば、職場復帰は可能と言う場合も十分ありえると思いますが、例えば、KUNIさんのような、まさに言葉を扱うようなお仕事であれば、それは非常に難しくなるでしょうね」
“くるみ”さんの例え話って、なかなかキツイものがありますが、そえだけに切実に感じられますね。ボクなら、無理か。
「無理とまでは言いません。アナウンサーの方でも、復活された方もおられます。しかし、多分、相当な努力をされたんだと思います。ですから、無理ではなく、難しいと」
は~い!繰り返しのご指摘、ありがとうございます。でもね、言語を扱う仕事は難しくても、数字を扱う仕事、例えば、経理担当であれば復帰しやすい、とか、あるんじゃないですか?
「いえ。失語症の方は、計算も難しくなります」
えっ~、何故?どうして?
「数も、言語です」
えっ?そうなの?
「数字じゃないですか。数字も文字の一種」
なるほど、そうなんだ。
「例えば、失語症の方が、お買い物に行かれるとします。スーパーやコンビニなどでは、ほとんど話すことがないので、リハビリのためにも、お買い物はいいんですが、自分が買ったものが、いくらかが分からない。しかし、日本は良い国です。とりあえず、1万円札を出すようにしておけばいいんです。相手が、ちゃんとお釣りを渡してくれます。お釣りを誤魔化すようなことは、日本では、しませんもんね」
なんとまぁ、失語症と言う名前からは、少し予想外の問題があるんですね。となると、例えば、それまではマネージャーとして、例えば部長や課長として、部下に指示を出すようなお仕事をしてこられた方は、そのお仕事に戻るのは難しいかもしれませんよね。
「それは、無理かもしれませんね。大量にメールを処理するとか、何かしている時に、部下が話しかけてきたことに、即座に対応するなど、それは厳しいでしょうね。複雑な思考って、全て言語なんですよ。よく、マネージャーには論理的思考が求められる、と言いますが、論理的思考って『こうだから、こう。こうなったら、こう』と、全て言語じゃないですか。だから、頭の中で、言語を引っ張ってくる、あるいは紐付ける回路に障害があれば、判断するには時間がかかりますよね。それまで、パッパッと出来ていた判断や決断のスピードは落ちますね。でも、決して、知的能力が下がっているかと言うと、そうではない。ジックリ話を聞いて、Aが良いか、Bが良いかを考えることは出来るのです。でも、今のようなスピード重視のビジネスの世界では、なかなかね」
でも、ホント、つい最近まで、バンバン出来ていた訳でしょ。これは、苦しいだろうな。
「特に男性は、そうだと思います。辛いと思いますよ。喋ろうと思っても、なかなか理解してもらえないし。だんだんと喋ることを諦めていく。また、そんな自分も嫌になって、どんどんと心を閉ざしていくんですよね」
そうすると、さらに理解してもらえなくなって・・・、もう負のスパイラル。これは、確かに、やっかいな障害ですね。
「やっかいと言えば、こんなケースもあります。一つは言い間違い」
言い間違い?
「例えば、初老の男性に、おいくつですか?と尋ねると『二十歳です』と答えられる。えっ?と思って、もう一度、おいくつですか?と尋ねると、やっぱり『二十歳です』と答えられる」
ボクも、よく、そんなこと言っちゃうますが。
「いえいえ、その方の場合は冗談でも、当然、思い違いでもない。KUNIさんと違い真面目な方ですし、知的レベルは問題ないので」
時々、ディスってきますね、ボクを。
「本人は、多分、60歳。還暦です、と答えているつもりだと思います。60歳と還暦を結ぶ回路が、誤って、二十歳とを結びつけているのでしょうね。なので、何度も二十歳と繰り返されます。また、反対を言うと言うケースもあります」
反対を言う?どう言うことですか?
「例えば、微笑みながら、『KUNIさんの服、めっちゃダサイね』と言う」
また、ディスりや!
「いえいえ、顔の表情から判断すると、どうやら反対を言っている。『KUNIさんの服、めっちゃ格好いいね』、と本人は言いたいのに、と言うケースがよくあるんですよ」
今日の、ボクのカッコからすると、どう見てもダサイので、ほんとラジオで良かったと思うんですが、それって、反対、本当はカッコイイことだと、分かるもんなんですか?
「表情から読み取るんです。その言葉と、表情が合わない場合と言うのがあるんですよ。まぁ、こっちの類推能力と言うのが問われるんですが」
その際は、ダサイと違うよね、カッコイイだよね、と訂正されるんですか?
「いえ、あえて間違いは指摘しません。その他、昨日のことを、反対に、明日と言い間違えるなど多いですね」
なるほどなぁ。もう一度繰り返しますが、失語症って、ただ単に「話せない障害」のことを言うのではない。こんな風に、言い間違いが多いだとか、反対のことを言っちゃう、と言うケースもあるんだ。随分とイメージが偏っていたことが分かってきました。
「失語症のことを、皆さん、ご存知ないので、その失語症のある方のことなど、なかなか理解してもらえないですよね。よく認知症と誤解される。この人は、意思や思考のない人と思われ、様々な悲劇が生まれるのです」
「失語症」の方の生き辛さが、ようやくイメージ出来て来た気がします。
この後も“くるみ”さんに、お話しを伺って参りますが、ここで一曲。
中島みゆきで「ファイト!」(※続く)

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こんにちは。「伝え」リストの大谷邦郎です。大阪の放送局に長らく勤め、キャリアの大半を記者として過ごしてきました。このNOTEでは「目で見る(読む)」ラジオを展開していきたいと思っています。良ければ、ボクが主催する、このラジオ番組を覗いていただければ幸いです。

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