車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」
~#17 目指すは現状維持!ガンとの“共存”~
「いいなぁ~!羨ましいなぁ~!!」
って言うと、「そうした発言はあかん!」と注意されました。
そんな注意をしてくれたのは、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさん。MIHOさんは去年の6月に、人生二度目のガンとなる腎細胞癌の摘出手術を受けましたが、今年に入って早くも再発。再度の手術は難しい、放射線治療も困難と一時は大変心配な事態に陥りましたが、「免疫チェックポイント阻害剤治療」、そう最新のがん治療薬・オプジーボを使った最先端治療により、MIHOさんは再びガンと闘うことになったのです。で、最近の写真がこちらです!
・・・って、これは「羨ましい」と言っちゃいますよね~。
でも、それはアカンのです。
その理由は、後ほど紹介させていただくとして、今年4月に緊急入院をしておよそ8か月、MIHOさんは、今年初めての一泊旅行が出来ました。カニも食べました。温泉にも入りました。ここまで“回復”しています。
「先週の火曜日に、今年8回目となるオプジーボを打ってきました。毎回、このオプジーボを打つ時に血液検査をするんですけど、先生曰く『こんな順調に打ち続ける人は、あまりおらへん』って。順調とは言え、1回目の後、肝臓の数値が跳ね上がる副作用が出て、一回は飛んでるけど。でも、『一回あかんかった時点で、普通はもうやれへん』って。けど、もう一回やったって言うのも珍しいし、そこから続けてるって、続けられてるっていうのも、『そうおらん!』っていう話で。なんか私は、この薬が、合ったみたいです。」
そうなんや、薬にも、合う、合わないの相性があるんやね。
今の状況を一言で言うとどんな感じになるんでしょうか?
「元通りに、一周回って元通りに戻ってきた感じですかね。元通り感はあります。元々痛かったぐらいの痛みしかないんで」
いや、本当に、今年に入って緊急入院となった際には、めちゃ心配しましたが、本当に最近の医療って凄いな。となると・・・
「次CTを撮って、その結果次第では、ちょうど2月ぐらいかな。その頃であれば、一番会社が落ち着いてると思うんで。 その間に(会社に)行くのが、一番気も楽かなって・・・」
そう!職場復帰も、いよいよ視野に入ってきました。そして、さらに・・・
「車いすダンスの教室の代表から電話があって『2月に、どうしても出られへんか?』って。『もう一分でもいいから』って。私のダンスを『どうしても見たいっていう人がいてる』っていう話で」
えっ!?2月に。意外と日があるようで、無いんですが、どうするんですか?
「私のかつてのパートナーと踊れるんなら、と。彼女は今、大阪にはいないけれど、大阪に戻ってきてくれて、一緒に踊ってくれるなら、と言う条件なら。まぁ、私も、まぁ、やりたいっていうのもあるし・・・」
わぁ、もうそこまで元気になられたっちゅうわけですね!
「あのね!そこなのよ!!」
えっ、なに、なに??
「ちょっと前だけど、会社に顔出す機会があって、そこで会う人会う人がみな『おぉ、元気か?』とか『めっちゃ元気そうやね』とか『想像と違う』とか言う。私、結構ひねくれているんで、何?元気やったらあかんの?元気でゴメンネ!みたいな気分になるんですよ」
いや、あの、その、皆さんも励まそうと言う気持ちでおっしゃったのかと。では、何と声を掛ければええんでしょうか?
「それは、また、それで・・・難しい!」
ですよね。MIHOさんへのインタビューを、こんな風に続けてきたわけだけど、こうした際の声かけに、正解は無さそうな気がします。
しかし、MIHOさんの次の言葉が心に響きました。
「私、まだ持ってるじゃないですか・・・」
そして、こう続けられました。
「心の底に不安は抱えているんで。治ったわけじゃないんで。」
そこで、思わずこうお聞きしました。
“完治”と言う言葉は、MIHOさんの頭の中には、今は、存在しないと言うことですか?
「そうですね、先生からも、そんな話はされてないんで。 とりあえず、酷くならない限り、副作用が出てこない限り、オプジーボを、とりあえず打ち続ける!っていう風な言い方をされてるんで。なんか“治す”っていうより、悪化させずに生きていく、と言う感じかな。ガンとの“共存”と言うイメージかな」
じゃぁ、あえてお聞きしますが、来年の予定とか希望とかありますか?
「無いです、特に。このまま現状維持を続けたいなっていう感じかな。ただ、やりたいことはやって、嫌なことはしない、と言うことかな。例えば、会える時に人には会っておこうかな、とかは思います。この前も、8年ぶりの友達に会いましたし、パラリンピックの閉会式にも出演されておられた“車いすインフルエンサー”の人に、会わせて!と友達に頼んで、実際会ってきました」
人見知りのMIHOさんが!ちょっと驚き。
やっぱり、この一年で、MIHOさんの生き方って、変わったのかなぁ?
「う~ん、ちょっとね。なんか、ちょっとね(笑)」
さぁ、冒頭の“羨ましい”発言についてです。MIHOさんは、こんな話をしてくれました。
「SNSでね、余命宣告を受けた方が旅先の写真をアップされていたら、『いいなぁ!』と言うコメントが来たんですよ。そこに、その方は、『本当にいいなぁ~と思っていますか?』と返信をされていましたよ」
うむ。絶句。言葉は、時に凶器になるんですよね。心します。
しかし、ボクは思うんです。だからと言って、声掛けを止めてはいけないと。こうやって、注意されながらも、良きコミュニケーションの方法を探っていかねばならないと。確かに当事者にならない限り、分からないことはたくさんある。だから、ずっと平行線が続くかもしれない。けれど、諦めてもいけないと思うのでありました。
MIHOさん、今年は本当に多くの学びをありがとうございました。
2022年も、よろしくお願いいたします。
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