車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」

~ #9 求む!“細マッチョ”!?~

「特別変ったことはございません!」

そうキッパリ断言したのが、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさんです。実は、前回もこの一文からスタートしたんですが、何に対してそう回答したかと言うと、「車いす利用者の恋愛って、普通の恋愛と何か違うんですか?」と言う質問に対して。何ともまぁ失礼な質問ですわなぁ。でも、黒子の役割として、そうした聞きづらいことも聞かなあかんわけでして、何とぞ、ご容赦のほど、よろしくお願いしたします。  しかし、さらに、不躾に、こんな風に形を変え、もう一度お尋ねしたのでございます。 
「車いすやったから、うまいこと行けへんかった恋愛もあるんですか?」
MIHOさんは、即答しました。

「ないですね!」

アイスとMIHOさん

キッパリ!しかし、その後、暫く間を空けてから、こう付け加えました。

「ないですね、私の中では、そういうこと、ないと思っています」

私、黒子は、こう言うときは、暫し黙ります。多分、まだ、言葉が続きそうやから。黙りながら、次の言葉を待っていると、MIHOさんは、やはり、また、言葉を繋ぎました。

「色々考えたら、ホンマにね、時に、私でいいのかな?って思うときは、ありますよね。車いすだから、デート一つにしても、行けるところって限られるじゃないですか。もちろん、行く前には、色々と調べていくんやけど、でも、本当に行けるのかなって。なんかマイナス思考に入ってしまうと、『私が、彼女じゃなかったら行けるのに』とか思ってしまいますよね。私と付き合っているからこそ、ここにも行けない、あそこにも行けないと、制限がかかっちゃう。相手はさほど気にしていなくても、う~ん、やっぱり気になりますよ。そんな風にマイナス思考が出てきたら、どんどんそういう風に考えちゃうんで、自分自身も、しんどくなります。『何も変りないですよ!』って言っておきながらも、やっぱり、ないわけじゃない!そういう感じですね。」

ボク・黒子は、思わずいつもより少し強い調子でこう言いました。
「例えば、高いところが苦手な人であれば、高いところにはデートに行けない。辛いものが苦手な人には、四川料理の中華レストランにはデートで行けない。誰にだって、行けないところはある。車いすだから、車いすじゃないから、と言う問題ではないのでは?」と。
「車いすやったから、うまいこと行けへんかった恋愛もあるの?」と、自分で聞いておきながら、その答えを自分で答えるとは、ボク・黒子は、インタビュアーには、むかんみたい。MIHOさんは答えます。

「私も、そう思えるときもあるけれど、そう思えないときもある」

マスク姿のMIHOさん

ボク・黒子は、さらに聞きました。
「そう思える、と言う気持ちが持てるようになったのは、やっぱり大人になったからですかね~?」と。でも、また・・・外したみたい。

「それは逆!」

逆?

「年齢が上がると行動範囲広がったので、反対にそんなことを、すなわち、マイナス思考のようなことを、余計に考えるのかもしれないですね。だって大人になったから、どこでも行けるじゃないですか。お金や時間の規制が無くなって。それだけに、本当だったら、私以外だったら、もっとどこにでも行けるのに、と思ったりしちゃいますよね」

いつも勝ち気で、強気のMIHOさんの、もう一つの顔を見た気がしました。誰だっていつも弱気と強気のブランコに乗っているに違いない。あっちに行ったり、こっちに行ったり。MIHOさんは、こうも続けました。

「でも、大人になって、同世代の車椅子の人とか、女の子たちが、何ら変わりなく恋愛をしている様子を見ていたら、あぁ、私も、大丈夫やって思えますよね」

ようやく、顔をあげてくれました。MIHOさんは、そうでなくっちゃ!
ボク・黒子は、こう返しました。
「MIHOさんだって、MIHOさんの、その様子だったり、その姿勢と言うか、大げさに言えば、その生き方を見られてるってことですやん!MIHOさんが出来るなら、とか、MIHOさんが楽しそうだから、とか、みんなに、見られてるってことですやんね?」
MIHOさんは、こう答えました。

「ダンスとかでも、私みたいになりたいって思ってる子がいるって聞いた時には、確かに嬉しかったですよね。分かりました!責任のある大人な行動をします!(笑)」

そう言って、ようやくMIHOさんは笑ってくれはった。
ボクはここがチャンスやと思って話題を変えて、こんな大胆な質問を投げかけたのでありました。
「車いすを使うMIHOさん!と言うことは、“お姫様抱っこ”とか、してもらいやすいとちゃいますの?」と、まぁ、なんともオッサン的質問。
さぁ、MIHOさんは、何と返答するのか?・・・と思う間もなく即答!

「ガンガン、ガンガンしてもらいますよ!抱っことか、全然してもらいますよ!」

アホ顔

ひゃ~!しっかり大人の発言!!MIHOさんの彼氏になるには、MIHOさんを何度も何度も抱き上げることが出来るだけの、腕力が必要なわけですね?

「でも私、マッチョな方は、ちょっと・・・。あまりに体格が良い人は、苦手かも・・・」

じゃぁ、体格は細いけれど、しっかり御姫様抱っこが出来る人じゃないと、あかんわけやね~。細マッチョ!なかなかハードル高いなぁ~

「そんなことないですよ!私ぐらい持ち上げられないと!」

はい!黒子も今日から筋力アップのトレーニングを始めようと決意するのでありました。(つづく)

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