車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」

~ #4 学生時代は、私、一人だけ ~

「小学校、中学校、高校と、全くいませんでしたね。出会ったことはない。私、一人だけでした」

そう語りだしたのが、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさんです。誰と、出会ったことがなかったのか?何が、私だけだったのか?それは、「車椅子を使っている人」に、一切出会ったことがなく、「車椅子を使っている人」は、私だけだった、と言うのです。
えっ、意外!と思ったけれど、そう言えば、ボク・黒子の学生時代もそうだったなぁ。車椅子の友達はいなかったぞ。そもそも、車椅子を使う人って、日本の総人口の何パーセントいるのだろうか?調べてみても、明確な統計は出てこない。厚生労働省の調べによると、身体障害者はおよそ436万人おられるらしい。そこには、視覚障害の方だったり、聴覚障害の方も含まれるので、車椅子を使われるのは、多分、肢体不自由の方々なわけで、さらに、学校に通うわけだから、入院中の方は省いて、在宅の方のその人数は、えっと、180万人ほどらしい。となると、総人口の1.5%、すなわち100人中1.5人はいる計算になる。ならば、学校にも、数人はいるはず。だけど、実は、肢体不自由の方って、60歳以上の方々が7割を占めるそうなので、この数字よりは、随分と減るわけで・・・って、違う!これは、あくまで18歳以上の方々の数だ。え~っと、18歳未満の障害児の数になると、手元にある資料では、平成18年と少し古いけれど、8万1900人と推計されて、肢体不自由が4万7700人らしい。で、日本の小中高生の数って、およそ1200~1300万人ってとこだから、その割合は0.4%か。1000人いて4人。ならば、一人も会わないってことは、ないんちゃうの、と思うけれど、この4万7700万人には、未就学児の子も含まれているし、そもそも、彼ら彼女たちのうち、MIHOさんと同じように普通校の普通学級に通える子たちは、さて、どれだけおられるのだろうか。(この普通校、普通学級と言う言い方も、なんか気になる。そもそも“普通”って、何やろ?と言う根本的な問題があるけれど、ここでは触れないのであった)確かにMIHOさんが、MIHOさんと同じような車椅子を使う仲間たちに、学生時代、一切出会わなかったと言うことは、決して「稀」な事態じゃないんだ。となると、こんなことが起こるのです。

「クラスの中では、“何でも出来るみんな”と“私”、みたいな。“同級生”なんだけど、私一人、“年下”みたいな気分でしたね。だって、そうでしょ。私だけ、当たり前のことが出来ないんだから。健常者の中にいて“しんどかった”と言う部分はありますね」

変顔のMIHO

う~ん、そうなんだ。そうなんだろうな。そうなんですよね。なんだか、ゴメンなさい。もちろん、黒子はMIHOさんの同級生じゃないんだけど、そうした当事者の気持ちを、これまで理解出来ていなかったかと言うか、慮ってこなかったと言うか、正直、思いもよりませんでした。

「うちの学校は、まったくバリアフリー化されていなくて、学校までは車椅子で通っていたけれど、学校内は、車椅子が使えず、両手に杖を持ち、その杖をついて歩いていました。中学校にもなれば、教室の移動が増え、高校になれば、それが当たり前に。その度に、友達に頼まなければあかんのです」

って、何を?

「私の両手は杖で塞がっている。教科書すら持てない。教室を移動する度に友達に『教科書、持ってくれる?』と頼まなければあかんわけです」

あっ、そっか。確かに。

「最初は、友達に、ありがとうな、ありがとうな、と言ってたけど、それが辛くなってきて」

感謝の言葉が辛くなるって、どう言うことですか?

「何をするにしても、『これ、持ってくれない?』と頼まなくちゃならなくて。なんで、こんなことも、私、でけへんのやろって。だから、最初は、ありがと、ありがと、だったものが、次第次第に、ゴメン、ゴメン、悪いな、悪いな、って。自分だけ出来なくって、周りに気を遣いながら生きていくことが・・・しんどかったですね」

そして、MIHOさんは「そう言えば」と、こう話します。

「そう言えば、年上だとか、年下の友達は多いけれど、同い年、同級生の友達は少ないかな」

それは、過去のそんな辛い経験があるから、かもしれません。
けれど、こうも明るく話しはりました。

「しかし、最近は街中でも若い車椅子の方も、よく見かけるし。私が学生の頃は、若い女性の車椅子利用者なんて、本当に全く見ることなど無かったけれど、最近はよく見ますよね。そうですね、社会は変ったと思いますよ。バリアが、壁が薄くなったと感じますね」

後ろ姿のMIHOアップ

それは、MIHOさんたち先人の皆さんが、そうした社会を切り開いてきたからに違いありません。多くの先人たちが作った車椅子の轍を、今の人たちが、それを頼りに、通ってきているんですよ。
さて、さて、そうした周囲に気を遣って生きてきたMIHOさんが、どの時点で、大きく変ったのか?それは高校を卒業されてからのこと。そこで、何があったのか!?

それは・・・・次回のお楽しみ!(つづく)

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