車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」

~車椅子でしか出来ないことを極めたい~

「ダンスの大会ですか?特に興味なかったですね。もともと社交ダンスに興味が無くて・・・」

そう語りだしたのが、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさんです。前回までの2回は、病気のお話が中心だったので、 3回目の今回は、明るく、車椅子ダンスの話をしてもらおかなと思ったのに、なんだかズッコケルなぁ。
ここにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも先の天下の副将軍・・・
ちゃう!2008年から2010年までの3年間、全日本車いすダンス選手権東京グランプリ、ラテン部門デュオスタイルで三連覇を達成した日本チャンピオンなるぞ!控え、控え、控えおろ~、と見栄を切りたかったのに、何だか、力が抜けるがな。まぁ、よろしいわ。まずは、車椅子ダンスの大会って、どんな感じのもんなんですか?

「まず、デュオスタイルと言うのは車椅子同士で踊る部門のこと。私は、男性の先輩と組んで出場しました。審査の方法は、社交ダンスと同じ点数の付け方で、選手は全チーム、フロアに控えていて、音楽がスタートすると一斉に踊り出す。その周りに審査員がいて、点数を付けていくと言う形。二種目あって、ルンバとチャチャを踊りました」

ダンス 美人!

あぁ、そう言えば、社交ダンスの大会なら、テレビで見たことある、ある。あぁ、あんな感じなんですね。でも、そもそも社交ダンスが嫌いやった、って、それどう言うことですねん?

「色々な曲が流れて、その場で、リズムをとって踊るんですよ。流れた曲に合わせてカウントをとって踊り出す。でも、振りは、決まってる。そのスタイルが好きじゃなかった」

なるほど。そんなルールなのね。じゃぁ、どんなスタイルが好きなんですか?

「好きな曲に、その曲に合った振りをつけて、そしてその曲に合った衣装を着て踊りたい」

なるほど。確かに、全然ちゃう。

「そう。全く興味がないまま大会に出た。また、当時は、この車椅子同士で踊るデュオスタイルと言うのが、日本では、あんまり人気がなくて、出場者も、実際のところ少なかった」

日本では、と、わざわざ付けるところをみると、他国ではちゃうんですね?

「もともと車椅子ダンスは、このデュオスタイルが発祥で、他国では、こっちが主流。でも当時、我が国では人気があまり無くて、出場チームが数チームと言う年もあった。周りは、参加チームが少なくても、日本チャンピオンは日本チャンピオンやねんから、と言ってくれたけど、私としては、胸張って言えることでは無いなぁ~と思って、これまでもあんまり言ってない」

なんか格好ええかも。ボク・黒子やったら、めちゃ自慢しまくるけどなぁ。
MIHOさんは、さらに続ける。

「三連覇して、対戦相手の中に、ライバルと呼べるようなチームが、当時は、もういなくて、その時点で、もう大会は、ええかなぁ~と思って」

おぉ、さらに格好よろしい!だからと言って、この時点で車椅子ダンスを止めたわけではありません。一昨年の12月までは、舞台にも上っていました。年下の後輩と組んで、久しぶりに大会にもエントリー。この子となら“上”も目指せると気合いも入っていました。しかし、その大会が台風で中止に。さらに、年が変わり2020年に入ってからは、新型コロナウィルスの感染拡大で、ダンスを披露する機会がなくなり、何となくフェードアウト状態に。そんな時に二度目のガンが見つかったのです。おっと、また、病気の話になる。あかん、あかん。今回は病気の話はなし!MIHOさんもこう言います。

「車椅子ダンスを、決して、引退したわけではないですよ」

そう、そう!その前向きな姿勢がMIHOさんの魅力でんがな!
ところで、この車椅子ダンスを初めて見たのは、いつやったんですか?

「小学校4年生の時に、学校公演で、車椅子ダンスを披露しに来てくれて。それが出会いです」

おぉ。そこで、運命の出会いを感じて、車椅子ダンスにのめりこんでいったわけですね?

「いえ。学校から帰って来て、家の前で、体験したステップを友達とちょっとやってみただけ。へぇ、こんな世界もあんねんなぁ~と言う感じで、全くやりたいとは思わなかった」

ズッコ~ン!やりたいとは、思わんかったんか~い!
じゃぁ、ちゃんと教室に入って、本格的にやりだしたのは?

「高校を卒業してから」

そうなんや。本格的に始めたそのキッカケ等は、また、次回以降の回に聞くとして、やってみて、最初、どうやったんですか?

「『最初からそれだけ踊れたら凄いね!』と褒めてくれたんです。『君、車椅子の操作、上手いな』とも言われたんです。でも、それは、ほぼ生まれてからずっと車椅子に乗ってるんやから、と思いましたけどね。(笑)」

そうそう。こんな動画を見つけました。

これは、2013年の映像。10秒間で、車椅子で何回、回ることが出来るか、若きMIHOさんが挑戦している。10秒間で、実に15回も回ってるんや。やっぱ、すげ~なぁ~。
さて、MIHOさんが、この車椅子ダンスの魅力に取り憑かれ、何故、ここまで研鑽を積むことが出来たのか?彼女は、こう答えました。

「それまで、特技もなく、自信も持っていなかったんで。でも、この車椅子は別。周りの友達には出来ないけれど、私には出来る。そんな車椅子で出来ることを極めたいと思って。そう思ってやりだすと、どんどん楽しくなったんです」

う~ん、なるほど。と言うことは、車椅子ダンスをしてからのMIHOさんと、車椅子ダンスをする前のMIHOさんとでは、実は、大きな違いがあるわけやね。えっ!?もしかして、MIHOさんの“黒歴史”を辿ることになるのかなぁ。さぁ、そのあたりの点は、また、次号で!(つづく)


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