妄想レイディオ #22

視覚障害者って、誰もが、暗闇の住人じゃないんだ!

午前0時を回り、今夜も始まりました「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」
今晩は、DJのKUNIです。
毎回、ボクの独断と偏見で気になるニュースを取り上げ、そのニュースの内容をキッカケに、知的で、お馬鹿な、お気軽トークを繰り広げます。番組の命綱は、この一台の電話だけ。
(SE:リリ~ンと、電話が鳴る音)
リスナーの方とこの電話を繋いで、KUNIとのお喋りと、素敵な音楽で、朝までお付き合い下さいませ。
さて、またまた不幸な事故が起きちゃいましたね。今年7月、東京都杉並区のJR阿佐ヶ谷駅で視覚障害のある男性が、ホームから転落して、死亡しました。転落事故は、年間3000件前後も起きているそうですが、そのうち視覚障害者の事故は、近年60件以上発生していて、昨年度は、3人の方が亡くなったそうです。何とも痛ましい。これだけ様々な技術が、今、開発される世の中で、何とかならないものかと思いつつも、その一方で、うん?視覚障害のことは、あまり知らなかったなぁと、この事故をキッカケに思ったのであります。例えば、そもそもホームの端に黄色い点字ブロックが敷かれていて、あんなところを視覚障害のある方々に歩いてもらおうと言うのが危ないんじゃないか、であるとか、視覚障害の方を見かけたら声を掛けて下さい、と言われても、どう声を掛けたらいいか分からないし、実際、勇気を出して声を掛けたけれど、無視されたと言う声も聞きます。では、どないしたもんかなぁ~?と思っていたところに、浮かんだゲストがこの人です!
視覚障害のあるYouTuber・ユーコリンです。もしも~し、こんばんは!
「はい!こんばんは」

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実は、今日は、電話繋ぎではなくZOOMを使って、ユーコリンが見ている世界と、ボクらが見ている世界は、どう違っているのかを実況しながら番組を進めていこうと思っているんですが、ユーコリン!相変わらず可愛いね!!
「またまた!」
ユーコリンは、実に多才で、本業はマッサージ師ですが、ゴスペルのシンガーだったり、舞台女優だったり、そして、今はYouTuberとして、“視覚障害者あるある”などを発信しておられるんですが、いや~、今日もメイクもバッチリ決まってるよね!って、早速、疑問が浮かびました。ユーコリンは、視覚障害者ですよね?なんちゅうダイレクトな質問や。確か、障害者手帳も取得していたかと。だけど、ちゃんとメイクは、出来るんだ?
「出来ますよ。全部自前でやってます。指でピッピとね。綺麗に出来ているかどうか、保証はないけれど、口紅だってちゃんと引く。まぁ、唇からはみ出していたら誰か教えてくれるし。アイラインだって引きますよ。全然変なところに引いている場合もあるけどね。全盲の人でも、メイク、ちゃんとやっておられる方もおられますよ。相当な努力と訓練の賜かと思う。でも、時に目が見えているのでは、と誤解されて、ちょっと厄介だけど」
そうなんですよね。一口に視覚障害と言っても、全盲の人もいれば、そうでない人もおられる。皆が皆、暗闇の世界の住人ではないんですよね。
「その表現もどうかなぁ?全盲の人でも、光や、赤・青・緑などの色を感知される方はおられるので、決して暗闇の住人ではないんですいね」
なるほど。今日は、学ぶことが、ホント、てんこ盛りありそうなんですが、まずは、ユーコリンの視力はどの程度なんですか?
「視力で言うと0.01扱いになります。問題は、その見え方」
問題は、見え方?それはどう言うこと?
「KUNIさん!まず、手で筒を作り、右目でその筒を覗いて下さい」
なになに?まず、手で筒を作り、右目でその筒を覗く。
「そう!そうしておいて、左目はつむる。そして、その覗いた筒の真ん中を小指の先ぐらいのモノを、モヤッと置いた感じが、私の見え方です」
何それ?特に、その小指の先ぐらいのモノをモヤッと置いた、と言うのが分かんない。例えば、今、ZOOMでユーコリンが座っているであろうカフェのテーブルが映っているけれど、それはユーコリンには、どんな感じに見えているの?
「そうですね。テーブルの向こうの椅子は見えています。テーブルの真ん中にはペットボトルが置かれているのは分かるんですが、見えているのは、ペットボトルのキャップ部分だけですね」
いやいや、ちゃんとペットボトルはテーブルの真ん中に置かれているけれど、そっか、ペットボトルの胴体の部分に、そのモヤッとしたものが置かれていて見えない、と言う訳か。なるほど。じゃぁ、少し先のテーブルに、カップルが座っているのが、こちらからは見えるけれど、君にはどう見えているの?
「えっと、カップルであるのは、楽しそうなその“声”から分かりますけど、見えているのは白い色と黒い色、と言った感じですね」
色だけか!?そうなんだ。じゃぁじゃぁ、ZOOMを通して、ボクはどう見えているの?
「KUNIさんは・・・、肌色と、黒に見えている」
えぇ、やっぱり色だけ?ボクが眼鏡をしているのは分からないの?
「眼鏡?あぁ、黒いのは眼鏡なんですね」
なるほどなぁ。そんな感じに見えているのか?でもでも、今回のこのゲスト交渉は、フェィスブックのメッセンジャーを使ってさせてもらったけれど、その文字は、そっか、音声変換機能を使って、読んだと言うよりは、“聞いて”いたと言う感じ?
「音声変換機能を使う時もあるけれど、メチャ拡大して読んでました。まぁ、目の体力があれば、普通に読むときもありますけど」
目の体力がある、ない、なんて感覚は、ボクらには、とんと無いなぁ。でも、そうそう、そう言えば、聴覚障害のあるゲストもかつて「聞くには体力が要る」と言っていたことを思い出しましたよ。あぁ、ますます知らない世界が広がっていく!
「では、多分、もっとKUNIさんには、知らない話かと思いますが、私の知り合いには、視力は0.6あるけれど、視覚障害と言う人もいます」
えぇ、視力は0.6あるけれど、視覚障害?0.6って、ボクの周囲にも普通にいるけどなぁ。またまた、知らない話、分かんない話や!
「今度はKUNIさん!腕を伸ばして、指でOKマークを作ってみて下さい」
なになに?腕を伸ばして、指でOKマークを作るのね?
「その指で丸を作ったそのOKマークを覗いて下さい。その知人は、それだけの視野しか見えないのです。視力は0.6あるけれど、視界は僅か2度なんです」
えぇ~、その指の輪の中しか視界が広がっていない。いやぁ、一言で視覚障害と言っても様々な方々がおられるんですよね。ホント我々としては、言葉遊びじゃないけれど、それこそ視野を広げて、物事を見なければならない、と思いますよね。

ユーコリン写真

そうそう、ところで、番組の冒頭にも言ったけれど、そもそもホームの端に黄色い点字ブロックが敷かれていて、あんなところを視覚障害のある方々に歩いてもらおうと言うのが危ないんじゃないか、と言うのは、ユーコリンはどう思うの?
「あれはね、ここを歩きなさい、と言っているものではないんですよ。ここから先に入ると危ないですよ、と知らしめるためのものなんです。でも、それを、視覚障害者の中でも誤解している人がいる。健常者であれば、なおさら分かんないですよね」
なるほど、それなら理解出来る。でも、ユーコリンも、ホームで実際に怖い目にあったと言う経験はあるの?
「ありますよ!初めての駅で、向こう側に渡るには?と人に尋ねて、その人の説明した通りに行ったつもりだけれど、そこには、階段どころか何も無くて、あと一歩で・・・と言う時がありました。ホームには駅員もいたけれど、気付かなかったんでしょうね」
やっぱり、怖いなぁ。そこで、ホームで困っている視覚障害者の人を見つけて、ちょっと勇気を振り絞って声を掛けたけれど、無視された、と言う声も残念ながら、よく聞きます。声を掛けられると言うのは、嫌なのかなぁ。そこはどう思う?
「実は、そこにも誤解があると思います。例えば白杖を持っていたとしても、視覚障害者とは限られません。確かに視覚障害はあるが、さらに聴覚障害もあると言う、いわゆる“盲聾”の方もおられるのです。その方に、声を掛けたとしても、聞こえなかったと言う場合がままあるのです。やはり、そうしたことも知っておいていただければ、と思います」
なるほどなぁ~。そう言うことか。いやぁ、知らないことが多すぎる。じゃぁ、視覚障害者の方をサポートしたいと思った際の、基本的ルールをまず教えて下さい。
「まず、してはいけないNGルールからですが、急に手を引くだとか、後ろから押すだとか、白杖を引っ張るなどは止めて下さい。電車ごっこじゃないんだから。(笑)突然、手などを引っ張られたら、やはり怖いです」
確かに、そりゃそうだ!では、どうすればいいですか?
「まず、困っていますか?と聞いて下さい」
なるほど!そこからか。確かに、一人、ポツンと佇んでおられたとしても、困っている訳じゃなく、友達を待っていると言う場合もありますよね。まずは「お困りですか?」と声を掛ける!で?
「例えば、誘導して下さい、と言われたら・・・」
では、こちらにと手を引けばいい?
「いえ、誘導して下さい、と言われたら、『では、どうしましょうか?』と重ねて聞いて下さい」
手を引く前に、『では、どうしましょう?』と重ねて聞く。それってどう言うこと?
「例えば私なら、右側が見えているので、右側をゆっくり歩いていただければ、ついていきます、と言います。危なかったら、声を掛けて下さい、と」
おぉ、それスマート。若い女性に、手を引きましょうか・・・って、声を掛けるのは、何となく憚られたので、それいいですね。カッコイイ!
「基本、見守っていただければ嬉しいんですが、交差点で信号をわたる時には声を掛けて欲しいですね。信号が今、赤なのか、青なのかは、教えて欲しいですね。赤信号なのに、気付かず、ガンガン行っちゃうことがあります」
おっと、それは危ない!でも、まぁ、大きな交差点にはピヨピヨピヨと音で示してくれるところはありますよね。
「いえ、トラックが近くを通るだけでも、その音が聞こえないことがあります。今日なんかは実は最低で、交差点の近くで街頭演説をしていたもんだから、まったく、その音が聞き取れませんでした」
そこで、障害者福祉の充実を、と候補者が訴えていたら、こいつは何も知らん奴だと、逆効果も甚だしいですよね。さぁ、残り時間も随分と少なくなってきたんですが、今、リスナーの方々に訴えたいことは、さて、なんでしょうか?
「やっぱり、知ってもらう、と言うことでしょうか?私たちが持つ白杖のことを知らない人もまだまだ多い。特に私のように弱視の人は、白杖をコツコツコツと床を突きながら歩くのではなく、浮かして歩くことが多いので、普通の棒だと思っている人もいる。なので、私たちに、邪魔だと怒ってくる人もいれば、身体ごと当たって来る人もいる、あるいは追い抜きざまに『外に出るな』と言って来る人もいます。ホンマに白杖を、ケツに突き刺したろうかなと思います」
いやいや、そんな品の無い言葉を使ったらアカン!
「あるいは、すれ違いざまに『可哀想ね』と言う人もいる。私は、それを『可愛いわね』と変換して聞いてますけどね(笑)」
なんかさぁ、人それぞれ、皆、懸命に生きているのにね。障害があるとか、ないとか関係なくね。
「そうなんです。まずは、視覚障害者のリアルな日常と言うのをもっと広く知って欲しいですよね。なので、私は、YouTuberとして世界中の視覚障害者の方々と情報をシェアしていきたいと思っています」
視覚障害のあるYouTuber、と言うのも、考えれば、なかなか面白いよね。
「そうなんです。なので、時々、私の顔が映っていなくて、胴体だけ映っていると言うこともあるんですけど」
おぉ、それもリアルで面白い!
いやぁ、ユーコリン、今夜はありがとうございました。知らないことだらけで面白かったし、実に考えさせられる話題でした。
「はい、こちらこそ、ありがとうございました」
では、最後に、ユーコリンからのリクエストの、この曲でしめくくりましょう。
THE SOULMATICSの「I’M UNDER YOUR WINGS」です ♪
皆さん、おやすみなさい。また、良き明日、良き朝をお迎え下さい!(了)

※ユーコリンのYouTube:「vision with U」
https://www.youtube.com/watch?v=xAOlsYZS3DQ


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