車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」

~ #7 ダンスパートナーが語る② ~


あなたは、「心のバリアフリー」の考え方が一人でも多くの方に広まり、すべての人々がお互いに心身の特性や考え方を理解し支え合うことが、公共交通機関を利用した移動を円滑化するために必要だと思いますか。

これは、2020年10月から11月にかけて内閣府が調査したもの。
その結果がこうです。

そう思う   96.1%
そう思わない 3.5%

ふむ、ふむ。皆さん、そう思っておられるのですね。
良きこと、良きこと・・・って、しかし!

あなたは、「心のバリアフリー」について知っていましたか。

この質問の答えは、下記の通り。

・よく知っていた 8.9%
・言葉だけは知っていた 28.9%
・知らなかった 61.9%

って、全然、矛盾してるやん!と言う、私・黒子も、恥ずかしながら、知ってるか?と問われれば、「よ~知りません」と言わざるをえません。
調べてみると、その定義はこうだそうです。

「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと。

あぁ、お役所が作った文章ですなぁ。分かったような、分からんような文章。ほな、どうしたらええねん?と言うことが全く伝わってきません。
一方、この二人はと言うと・・・

「ディズニーランドとかに遊びに行くと、彼女とは、横並びで話しながら、私は、車いすを漕いでるわけですよね。でも、敷地内全てがフラットなわけじゃない。時には、ほんのちょっとの坂が出てくるんですが、彼女は、すっごいタイミングで押しに来てくれるんですよ。その瞬間だけ。そのタイミングが絶妙なんですよ。」

そう話すのが、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさん。そして、そのMIHOさんが「彼女」と言っているのが、MIHOさんのダンスパートナーの吉田美咲さんです。この4年間、MIHOさんのパートナーとして、ズッと一緒に踊ってこられました。そうそう、この写真の左側の彼女が、そうです。

美咲ちゃんとⅡショット_n

今のMIHOさんの話しを受けて、美咲さんは、こう答えました。

「私、見る力があるんですよ。観察力!エッヘン!!」

MIHOさんからは「自分で、それ、言う?」と、突っ込まれてはいましたが、二人のこの関係に「心のバリアフリー」を理解するヒントが隠されている気がするんですよ、私・黒子は。MIHOさんは、続けました。

「本当にちょっと助けて欲しいなと思ったときに、もう手が伸びてるって言う感じかな。一緒にいて、すごく楽なんですよ。みんながみんなじゃないけれど、“嫌み”を感じるときもないわけじゃない。“やったってる”と言う感がすると言うか。しかし、彼女の場合は、それがないんですよね。ほんとフラットで、楽!」

ね、ね!ヒントが隠されているでしょ。“フラット”で“楽”。このへんなんですよね、ヒントだと感じるのは。今度は美咲さんが語ります。

「何なんだろうな。私、別に、何かやろうと思ってるわけじゃないし。ディズニーランドで遊んでいても、MIHOさんが、色々なものを持ってくれるんです。」

美咲ちゃんとディズニー_n

えっ、えっ!ちょっと待った!!美咲さんが、MIHOさんの荷物を持つんじゃなく、美咲さんの荷物をMIHOさんが持つのね?

「はい!私が持っているバッグを、車いすの背中にかけてくれるんですよ。でも、その分だけ車いすを漕ぐのが重くなっちゃう。だから、ちょっとした坂で、漕ぐのが大変かな~と言うところだけでも、手伝おうかと。そう言う“物々交換”みたいな感じに、自然になりますよね」

MIHOさんが、その後を引き取りました。

「何なんですかね?なんか、本当に・・・自然なんですよね。空気みたいな人、だと思います」


“物々交換”って、実は、ちょっと衝撃的。「したげる」と言う発想だけなく「してもらう」と言う発想がそこに存在する。でも、でも、だからと言って、そこに「功利的」とか「打算的」な思いがあるわけでもなく、なんと言えばいいのか。まぁ、一方通行的な思いやなく、双方向的な思いがあるっちゅうことかなぁ。今度は美咲さんが話します。

「私、MIHOさんに出会った時に『自分で出来ることをされたら嫌!』って言う話を聞いて、そのときに、あ~!なるほどなぁ!!って。確かに自分が出来ることを、他の人にやってもらったら、自分も嫌だなぁって思って。それだったら基本、放置しようと思って。(笑)自分が面倒見てあげる必要なんて、ないんだなっていうのが凄く分かったんですよ、その時。ですから、その後は、基本、放置!放置!!」

美咲さんは、そう言って、大いに笑いました。心のバリアフリーの基本は「放置」!このコメントを聞いて、政府の担当者さんや、偉いさんは、どう思うやろか?その表情を思い浮かべると、何となく爽快な気がするんは、ボクだけやろか?
一方、MIHOさんは、美咲さんの魅力をこう語りました。

「構えていない、と言うのがいいです。車いすの人と出かけるときって、『どうしたらええんやろか?』と言う姿勢が見えるじゃないですか、どうしても。でも、彼女の場合は、それが全然見えない。本当に自然。それが、スッゲェなと思って。もう彼女に中毒ですよ」

さて、自分の行動を振り返って、どうだったんやろか。車いすの方々と出会った際に、押しつけの行動を取っていなかったか?暫し、自己反省する黒子だったのでありました。ところで、前回のお話し(第6話)をアップした後に、MIHOさんから、こんなメールが届きました。

「私のダメ女っぷりを、たっぷりご紹介いただきましたが、こんなダメ女から、次号は、挽回します?しますよね??“①”って書かれてあったので、大丈夫です?よね??」

とのこと。では、少しフォローしておきましょう。美咲さんは、MIHOさんのダンスに関して、こう述べておられました。

「私の注文をその通りにやってくれるんです。何だかんだ言いながらも、やってくれる。どれだけ私が難しい注文しても、MIHOさんは、やりこなしてくれるって、信じています」

美咲ちゃんとダンス_n

おぉ!MIHOさん、カッコイイ!!
と言うことで、今日はここまで。また、次号で皆さんにお会いいたしましょう!(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?