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妄想レイディオ #5

今日のゲストは、明日華・25歳。“送り人”やってます

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サッチモの「この素晴らしき世界」をお聞きいただきました。♪
そうなんだよなぁ。間違いなく、この世界は、素晴らしい。
しかし、その一方で、自らの命を自ら絶つと言う人もおられる。その数は、ここ数年、幸いにして減り続けているんだけど、10代の若者だけは、反対に増えている。それは何故なの?どうしてなの?と言うことを、今夜の「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」では考えようと、いつもの通り、ゲストをお迎えして進行しておりますが、今日のゲストは、もうブッ飛んでますよね。今日のゲストは、25歳の若さでありながら湯灌師と言う仕事に就いていると言う明日華ちゃんです。
明日香ちゃん、引き続き、よろしくお願いいたします。
「はい!よろしくお願いいたします」
さて、バンバンお話しを伺っていこうと思うその前に、ここで一つ訂正です。えっと、何々?映画・おくり人の主役は、ヤックンでも、フックンでも、ない!モックン・本木雅弘さんです、とのことでした。ここに、訂正して、お詫びいたします。シブがき隊って、ヤックン、フックン、パックンじゃなかったっけ?ダメだ、記憶が飛んでいる。ピンクレディーは、ミーちゃんと、ユーちゃんか?まぁ、いいや。明日香ちゃんに、話を戻しましょう。
明日香ちゃんは、湯灌師として、僅か1年の間に、200もの遺体を見てこられた、と言うことで、そこには、同じ歳の、同じ女性の、若き遺体もあったそうです。それだけ多くの方々を見る職業って、お医者さんぐらいかな?
「そうですね。お医者さんぐらいかな。でも、お医者さんは、ご遺体には、私たちのようには触れないですよね。お医者さんは、亡くなった方々には、何もしないじゃないですか」
あぁ、確かに。その“患者”さんが、亡くならないように、懸命に手を尽くしておられる訳だけど、不幸にしてお亡くなりになられると、『ご臨終』と言って、終わり。お医者さんのお仕事としては、それで終わりだもんね。
「こう言っちゃうと、怒られかもしれないけれど、お医者さんって、亡くなった方には、適当なんだと思いますね。ご遺体が、たとえ穴だらけであっても、なんのお手当もなく、私たちのところに回ってくる。もちろん、KUNIさんもおっしゃる通り、それは、お医者さんのお仕事ではないですものね。反対に、そうしたご遺体を拝見すると、命を繋ぐことって、凄まじいなと思います」
う~ん、ちょっと、ちょっと待って。話が飛躍し過ぎたような。まず、穴だらけって、どう言う意味?
「点滴の注射による穴が、片方の腕だけじゃなく、両腕に無数にあったり。気管が、開いていたり、お腹が開いていたり、気道確保のために顎を外している場合もある。外したままにしておくと硬直しちゃうんで、外したら直しておいて欲しいですよね。でも、それって、お医者さんのお仕事じゃないわけですものね。最後まで、本当に最期まで、お医者さんも大変だったんだろうな・・・と。そこから、命を繋ぐことって、凄まじいなと思いました」
なるほど。そう言うことか。いや、本当に、君の話だけでも、こうやって、電話越しであっても、伝わってくるよ。医療の現場、最前線の現場って、本当に凄まじいんだろうな。改めて、医療関係者の皆さんに敬意を払いたいと本当に思いますよね。でも、まぁ、“その後”と言うか、ご遺体になられた後が、君たちは、大変だと言うことなんだね。
「そうですね。そうした穴と言う穴は、全部塞ぎます。お手当をして。えっ?そうですよ、お手当。まさに、絆創膏を貼って、上から貼って、貼って、巻いて、巻いて・・・と言う感じです。そうした部分を見えないようにお手当をします。でないと、********************で、###############となってくるので」
分かった、分かった。もう、放送コードを超えている。よく、分かりました。君のお仕事も大変ですよね。しかし、そうした大変な、と言うか、時には、こうやって聞くに堪えないような作業が必要となるお仕事を、何故、君は、出来るの?
「どうしてですかね?う~ん、故人様とご家族様が両サイドにおられて、その真ん中にいるのが私たち・湯灌師だと思うんですね。最期、ご家族さんが、故人様に、ああしてあげれば良かった、こうしてあげれば良かったと言うことを、なるべく無くすために、私たちがいると思うんですよ。だから、特別、こう、ウッ!とか、これヤバイ!とか、ダメかも?には、ならないですよね。結構、冷静に対応していますね」
そう言えば、君は、最初から冷静に対応出来てたと言ってたもんね。小さい頃とかは、お化けとか幽霊は信じなかったの?って、言いながら、何とも間の抜けた質問だよなぁ。
「小さい頃は、恐がりでしたよ。でも、そんなの見たことないし。多分、知らない人だから出来るんでしょうね」
こう、ご遺体を前にして、この人の人生は、どうだったんだろうな?とかは思わないの?
「まぁ、故人様には、毎回、初めまして、と言うところからスタートするんですが、う~ん、あまり入れ込みすぎると、こうした仕事は出来ないし、メッチャ俯瞰しているとは思いますね。結構、忘れるようにしています。仕事終わったら、全部、忘れると言う感じ。“連れて”帰ってはいけないと思って」
そこは、思うんだ!?
「それぐらいの関わり方じゃないと、仕事には出来ないと思いますね」
なるほどなぁ。ところで、この湯灌師と言う仕事を通して、自殺・自死なども含め、僅か1年で200もの遺体を見てきて、ザックリとした訊き方で申し訳ないけれど、君は、変わったのかい?
「う~ん、メッチャ、自分、生きているなと、最初の頃は特に。メッチャ、私、生きてるわ、と言うことを、故人様に触らせていただく度に思っていました」
おっと、全く、予期せぬ回答!“死”を感じるのではなく、“生”を感じたんだ!
「ご遺体が、冷たいのは、分かりますよね。体温無くなるし、まぁ、保冷庫で冷やされてもいるし。触る前から、それは想定できるし、想定していました」
冷たッ!って感じ?
「いや、そこまでは。まぁ、ヒンヤリと言う感じで。でも、お触りして、最初に思ったことは、故人様、冷たいな!じゃなくて・・・私・・・メッチャ、温かいやん、と言うことだったんです」
ハァ~?
「メッチャ、温かいやん、私って。もう、ビックリしました」
ホォ~!
「仕事に行く前に、今から私がお会いするのは、亡くなっている方だと、準備すると言うか、心づもりをして行きますよね。緊張もしてるし。最初の頃は、特にね。そこで、故人様に触れてみて、感じたのが、私、メッチャ、生きてる、と言うことだったんです。これって、凄いことだと思ったんです。それを、この年齢で感じることが出来たことが、メチャクチャ大きいと思いましたね。これからの人生を生きていく上でね。それが、メッチャ大きかったと思いますね」
そうか、俺は、今、生きてるんだ。そんなこと、日々の生活の中で、なかなか感じないし、考えもしない。しかし、確かに、今、俺は生きている。温かい血潮が身体の中を巡っているんだもね。それを、君は、25歳の若さで、知った!凄いな、それは。やっぱり、君のことを明日香先生と呼ぼう。
さて、いよいよ今日の本題ですが、君の「死生観」と言うのをお聞きしたい。25歳の湯灌師の君は、今、どんな死生観を持っているのですか?あるいは、どんな死生観を持ってお仕事をされておられるのかを、お教え下さい。
「“死”って、まだ生きている人には分からないことじゃないですか。でも、自分も必ず迎える。でも、分からない。だから、畏怖だとか、恐れがあるんですよね。しかし、その恐怖心を和らげたいので、誠意を持って、故人を見送る。世界どこでも、文化の違いはあれども見送る。盛大に見送りますよ、と言うのが、未来の自分に向けての、最大の安心を提供することになっているんでしょうね」
なるほどな。じゃあ、君は、その“死”について、どう思っているんだったっけ?
「なんとも、思っていないですよ。当たり前!」
そっか、そっか、そうだよね。“死”は当然と思っているんだよね。
「この不条理な世界の中で、誰にも等しく訪れるものだと思っています」
さぁ、そんな誰にでも等しく訪れる“死”だけれど、その時計の針を、早く回して、自ら命を絶つ人もいる。中でも、君と同じような、と言うか、君よりも若い世代に、その自殺・自死が増えている。これに関しては、どう思うの?
「正直、絶対的な自由だと思いますよ」
自由!?そうなんだ。
「本人の好きにしたらいいと思う。けど」
けど?
「けど、けど、けど・・・死ぬまでにいっぱい出来ることは、あるよと思います」
君にも、出来ることはある?
「私にも、出来ることはあると思うし、そもそも、そんなに世間は狭くないよと思う。いくらでも、どこへでも逃げる場所はあるし、いくらでも、どんな時でも拾ってくれる人はいるから、そんなに焦らなくても、いいんじゃないの、と思う」
でも、でも、でも、これは、さっき聞いたのか、音楽が流れている間に聞いたのか忘れちゃったけれど、君って、自分のことは好きじゃないんでしょ?
「はい。自分のことは好きじゃないです。だ・か・ら、毎日頑張って、私にも出来ることはあるなと。今日まで頑張ってきたし、今日も、こんなこと出来たし。例えば、今日は、こんな人にお化粧したげた。そして、ありがとうと言われた。なら、今日一日は、私にとって意味があったのかな、って」
なるほど。でも、一つ、一つ、そうやって確認しなければ、不安なの?
「不安と言うか、それが生きる糧ではありますよね、『ありがとう』と言われるのが。だから私、絶対、その場で、本人に『ありあがとう』と言われる仕事が好きなんですよ。今、色んな仕事が増えていて、末端のお客さんに会わない仕事ってあるじゃないですか。私は、ダメ。目の前で、変化とか、感動とか、笑顔とかを確認して、そこで『本当にありがとう』とかを言って貰えるのが生きがいですね」
でも、ちょっと意地悪な質問だけど、何故、君はそこまで『ありがとう』に固執するの?
『ありがとう』欠乏症じゃないの?
「う~ん、欠乏している訳じゃないけど、でも、そう言われるのが、ありがとうと言うわれるのが、一番嬉しい。生きてて良かったなと思う。諦めなくて、本当に、良かったなと思いますね、ホンマね」
と言うことは、君は、この湯灌師の仕事もそうだけど、25年間生きている間に、諦めそうなタイミングが何度も訪れたと言う訳だよね?
「私、小さい頃は“良い子チャン”だったと言いましたけれど、それでも、と言うか、それだから、だったかもしれませんが、イジメにもあい、思春期の頃は、自殺だって人並みに考えたこともあります。今のお仕事だって、だって、だってですよ、儲からないし、他人には、なかなか理解してもらえないし、否定されるパターンのほうが多いし・・・ね!」
ね!って、君。君には、他にも違う道は絶対あったよね?
「あったと思いますよ」
例えば、あの大手化粧品メーカーの内定だって、一発で通ってたんだよね。
「そうです、そうです。良い子にしてたら、もっと違った道はいっぱいあったと思います」
あぁ、良い子にしてたら、ね。
「でも、週5日、同じところで、同じようなことをすると言う自分をまったく想像できなかったから、違うな、って」
だけど、その『週5日、同じところで、同じようなことをする』と言うことに、嫌気がさしている人物って、相当数いると思うよね。
「そう、だから羨ましいって、言われる。でも、簡単に言うなよ、とも思う。ホント、メッチャ、簡単に言うの、羨ましいって。メッチャ、悔しい」
でも、こう言う生き方もありだよ、と言うことは、君よりも下の世代に伝えたい?
「そうです、そうです。例えば、本当に今の就活って、煽りが凄いじゃないですか。いわゆる大企業で、一部上場で、企業名を言ったら、あぁ分かる分かると言った企業に行ったら勝ちで、残りは失敗したみたいな・・・。いや、いや、いや。違うでしょ、と。ねぇ~。何だか、みんな、それにすり込まれちゃっているから、会社に入ってからも、そう思っているんですよね。違う、違う!一方で、そうした考え方に違和感を持っている人も、いるんですよ。実際、いっぱいいる。だからと言って、会社を早々簡単に辞められるものでないことも分かる。だから、私みたいにアホに振り切る必要はないけれど、色んな選択肢はあるよね、って。例えば、大手大好き就活主義じゃなくても、4年制の大学でなくちゃダメみたいなんじゃなくても、いっぱい選択肢はあるから、そのうちの一つとして、私を見てもらえたらいいかなぁ、と思いますね。私みたいな存在って、周囲から見たら、意外みたいなんですよ」
『意外みたいなんですよ』って、まぁ、意外でしょ!
「いや、いや、みんな、こんな風に狭い範囲しか、見てないからですよ。大手、大手、大手と思っている人からしたら、ムッチャ意外みたいなんですよね。そんな私のような石ころが、そんな人たちに向かって投げられると、とりあえず、彼らはハッ!と顔を上げるんですよ。それだけでいい。私と同じ生き方などしなくていいし、例えば、結局、就活で、大手を狙うのもいいと思うんですよ、でも、顔を上げるのを、知っているのと、知らないのでは、大きく違うんですよ。追い詰められ方が違うんですよ、と、私は、思います!」
おぉ~!顔を上げようよ、と言うことね。シンプルだけど、君が言うとパンチがあるなぁ。
顔を上げよう!その上げ方を知っていると、追い詰められ方が違う!今日の金言でした。
さて、もっともっと色々と聞きたいことがあって、もっともっとエロエロな話も聞きたいのだけれど、それは、また、番外編として、皆さんにお伝えするといたしましょう。
ここで、ちょうど番組終了の時間がやってきたようです。
明日香ちゃん、本当に、ありがとうね。また、ゆっくりお話しをお聞かせ下さい。
では、最後の曲は、この曲で!
皆さん、おやすみなさい。また、良き明日、良き朝をお迎え下さい!(了)


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