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妄想レイディオ #2

今日のゲストは、明日華・25歳。“送り人”やってます

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さて、「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」です。
今日のテーマは「増える10代の自殺」と言うニュースをキッカケに、なかなかおじさんたちには理解出来ない「若者の死生観」について考えます。
今日のゲストは、学生で、メイクセラピストで、被写体で、そして湯灌師でもあると言う明日華ちゃん、25歳と電話が繋がっています。

改めて、明日華ちゃん、よろしくお願いいたします。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
明日華ちゃんには、もう聞きたいことが本当に山ほどあるんだけど、とりあえず自分のことを、明日華ちゃんは、どう思ってるの?
「そうですね。変な人・・・かな。人と違うことが好きだし。自由なことばっかりやっていて、回りからは変な人だと思われていると思います」
変な人ね、それは、この短い時間でも十分感じるよね。
「でも、小さい頃は“良い子ちゃん”でしたよ。本当に絵に描いたように。特に小中学校の頃はね。大人しくもしていたし、成績も良かったし、先生にもメッチャ好かれていました。でもね・・・学校は・・・ズッと嫌いでした」
何?何?何故?何故?どう言うこと?小さい頃は“良い子ちゃん”だったんでしょ?
「学校にいると、『こうしなさい!』『こうでないとダメでしょ!』みたいなことを言われる。そう言うのが嫌いでした。『こうでないとダメ』なんて訳ないでしょ、と思ってました。ただ、それには従っていましたよ、その方が上手くいくと、小っちゃい頃から、何となく分かっていたからかなぁ」
なんとも、まぁ、したたかな子だったわけやね。しかし、その、したたか“良い子ちゃん”が美容と言うか、お化粧、メイクに興味を持ったのは、いくつぐらいから?
「美容には、小学5~6年生の頃から興味はありましたね。でも、それは女の子であれば皆同じかと。ただ、明確にメイクの“力”に興味を持ったのは、中学2年生の時、14歳の時でした」
そのキッカケは?
「リストカッターの友達に出会ったことです」
リストカッター!
「そんなに珍しいことではないですよ。同じ学年に、いっぱいいましたよ」
リストカッターがいっぱい!って、もう、オジサンにはついていけない。
「いっぱいは言い過ぎかもしれないけれど、私の仲のいい友達だけで2~3人はいましたね」
ダメだ。やっぱり、ついていけない。でも、10代の若者の自殺の増加と言うことが、少しリアルに感じられてきたぞ。で、その14歳の時に何があったの?
「毎日、学校から一緒に帰る友達がいたんですね。彼女は、手首に包帯を巻いて、年中長袖を着ていましたから、誰もが“そう”なんだろうな思っていましたし、彼女は、私には、“ふんわり”と話をしてきましたし、私も、なんだかんだと相談に乗っていましたので、何となく感じていました。そんな彼女と、いつもの学校の帰り道、中学2年生の冬だったと思いますが、彼女から『疵は、今、これぐらい治ってきた』と言う話になって、手首に巻いてあった花柄のバンダナの間から、その疵が見えたんです。そこで、私は、痛くないの?って、彼女の手首に触れました。直接、傷痕を触ったんじゃないですよ、手首に触れただけ。しかし、そこから彼女は、ボロボロ泣いちゃったんです」
泣いたんだ。でも、どうして?
「彼女は言いました。『こんな汚い手に触れてくれて、ありがとう』って。多分、彼女は、そのリストカットの痕とか、それこそ自分自身をマイナスに捉えていて、また、疵を見せられる関係の人も少なかったんじゃないかな」
ちょっと趣味の悪い、野次馬的質問だけど、どんな疵なの?こう、カッターで切ったような線が何本も手首に入っていると言う感じなの?
「いえ、彼女の場合は、カッターやカミソリで切って出来た疵ではなくて、爪を伸ばして、自分の爪で、その爪で自らの皮膚をえぐったんでしょうね。そんな傷痕でした。生々しい疵。綺麗な線じゃなくて、皮がめくれていた記憶があります」
うわぁ~痛そう。しかし、何があったんだろね?その彼女に
「色々あったみたいですよ。勉強、恋愛、いじめ。色々と聞いていました。しかし、手首に触れたのは、それが初めてで、何も思わず、普通に触れただけだけど、彼女は号泣。本当にビックリしました。きっと、その傷痕を自分で見て、また苦しんで、その苦しみを発散するために、またリストカットしてしまう。そして、また、そんな自分に苦しんで・・・もう、負のスパイラルですよね。そこで、私にも、何か出来ないかなと思ったのがキッカケで、その後、色々と調べてみたら“カバーメイク”と言うのを知って、こう言うことが、将来出来ないかなと漠然と思ったんです」
カバーメイク?
「カバーメイクって、そうですね、痣や傷あと、さらに手術跡など、気になる部分をメイクによって目立たないように、わからないようにするお化粧のことですね。こう言うことで、彼女に何かしてあげられないかなって。もちろん、今すぐには出来ないけれど、将来的にね」
あぁ、そっか。そこで、化粧と繋がるんだね。化粧にも色々あるんだね。カバーメイクにメイクセラピー、そして死に化粧。メイクや化粧には、オジサンには想像も出来なかった“力”があるんだ。だんだん分かってきたよ。でも、その後も、リストカットした傷痕には、何度も見る機会はあったの?その子、以外で。
「はい、何度か。大学の実習の際に」
大学の実習って?
「精神保健福祉士と言う資格を取る際の研修です」
もう、分からないことだらけなんだけど、精神保健福祉士って?
「精神科のソーシャルワーカーかな」
詳しくは分かんないけど、何となくは分かる。その実習で、リストカットの患者さんに出会ったと言うわけね。
「もう、ビックリしました。私がそれまで思っていたリストカットとは、全く違っていました。なんか、う~ん、なんか、もう腕が凹んでいるんですよ。切りすぎて。その人は、手首から肘ぐらいまで切ってあって、何度も、そうやって切っていくと、皮膚が硬くなるんですよ。カピカピでツルツルで、そして、腕が凹んでいるんです。えぐれているんですよ、腕が」
エェ~、えぐれてる?何度も何度もリストカットを繰り返すから?
「そうなんです。だから、傷痕は“線”ではなく、もう“面”なんです」
うわぁ!そうなんだ。確かにそれは想像を超えている。
「だけど、手首を切る人、と言うか、他人の目に触れやすいところを切る人って、自らSOSを出しているんですよ。だから、周囲も気づけるし、アプローチするチャンスはあるんです。
でも、見えないところをカットする人も大勢いるから・・・・(沈黙)」
結局、君は、どれだけのリストカッターたちを見てきたの?
「いや、もう、わかんないぐらい見てきましたよ」
そうなんだ。衝撃。話はちょっと戻るけど、その中学校の時代の女の子は、その後、どうだったの?
「その後は、健やかでしたよ、比較的。今も、本当に時々ですが、会ってます」
おぉ、それは良かった。安心しました。
さぁ、ここで改めて、もう一度、今夜のテーマに関するデータを、ご紹介しておきましょう。厚生労働省は、2019年の自殺者数が10年連続で減り、過去最少の2万169人だったと発表しました。内訳を見ますと、自殺者のおよそ7割が男性で、40代以上が7割超を占めるそうです。って、バッチリ俺じゃんこれ。しかし、今回注目しているのは、このオジサンたちの自殺じゃなくて、いや、オジサンたちの自殺が大したことない、と言ってるわけじゃなく、ちゃんと減少傾向にあるので、今回は置いといて、10代の若者の自殺に注目しています。去年一年間で自殺・自死で亡くなった10代の若者の数は659人。前の年よりも、60人も増えているのです。1割アップ、10パーセントアップですよ。これは、やはり見逃せません。
そこで、オジサンど真ん中のDJ・KUNIは、そんな若者の「死生観」が知りたいと、25歳の若さでありながら“送り人”、湯灌師の仕事をしている明日華ちゃんを電話ゲストにお迎えして、色々と本当に色々とお話しを伺っています。早く、その湯灌のお仕事について詳しくお聞きしたいんですが、その前に、お聞きしますね。
明日華ちゃんは「自殺」に関して、どんな意見と言うか、どんなスタンスでいるわけなの?いや、こう聞いたほうが答えやすいかな?君にとって「生きる」こととは、どう言うことなの?
「生きること・・・う~ん・・・私、生きることに、ムチャクチャしがみつかなければならないと言う考えじゃないですね。死にたいと言う願望は誰にでもあると思う。生きていることから逃げたいと思う瞬間は誰にだって少なからずあると思うし、そう言う選択をするのも、その人の自由だと思いますね。だからと言って“それ”を推奨するつもりはありません。ただ、生きることって、もっと適当でいいと思うんですね。なんか、みんな、こうじゃないとダメですと言ったように視野が狭くなっていると言うか、ここからはみ出したらダメです、と言った道がはっきりしていて、そこからはみ出したら、そこから落ちたら、『私なんて、私なんて』となっていく。なんかこの道じゃないとダメと、大勢の人が、多数派の人が歩んでいく道を外れた時に絶望する、いや、絶望させられる。そんな今の社会の環境には、私、憤りを感じています。生きることって、もっとラフでいいじゃないの、と思いますね。生きることって“暇つぶし”ぐらいで。だって、なんで生きていくのか、分からないし、なんで死んでいくのもわからないもの」
Oh!My God!人生は“暇つぶし”か!う~ん、まぁ、否定はしないし、そのラフさは、悪くないのかもしれないなぁ。ただ、多くの若者は誰もが危うさを抱え、今の社会に生きづらさを感じている。その社会をこれまで作ってきたのは・・・我々の世代だよなぁ。若者の問題じゃないのかもしれないよね。我々の問題!ここからは明日華ちゃんじゃなく、明日華先生と呼ぼう。
「止めて下さいよ!明日華ちゃんで、オッケーですから」
そんな明日華ちゃんに、まだまだお話しを伺っていきたいですが、ここで、もう一曲お聞きいただきましょう。ユーミンです。
ここで「ツバメのように!」をおかけすると、流石に趣味が悪いと言われそうなので、ユーミン、それも荒井由実時代から「ひこうき雲」です。(続く)

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