妄想レイディオ #18

人生会議と、新型コロナと、集中治療医(前編)

午前0時を回り、今夜も始まりました「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」
今晩は、DJのKUNIです。
毎回、ボクの独断と偏見で気になるニュースを取り上げ、そのニュースの内容をキッカケに、知的で、お馬鹿な、お気軽トークを繰り広げます。
番組の命綱は、この一台の電話だけ。
(SE:リリ~ンと、電話が鳴る音)
リスナーの方とこの電話を繋いで、KUNIとのお喋りと、素敵な音楽で、朝までお付き合い下さいませ。さて、さて、今夜も、こんな数字からご紹介いたしましょう。55.1%。これは、厚生労働省が調べたものですが、「人生の最終段階において、医療や療養について、これまでに家族や医療介護関係者と話し合ったことがありますか?」と言う質問に対して「そんなことない!」と答えた人の割合です。う~ん、ちょっと質問が長いので、今一つピンと来ないかな?では、もっと短く、分かりやすくするために、最近よく聞くようになった言葉を使うと「人生会議を家族としたことがありますか?」と言う質問に対して、半数以上の方が、「そんなこと、したことがない!」と答えたのでありました。
おぉ!今日は、ヘビーなテーマですよね。リスナーの皆さんは、どうよ?
ボクは、人生フラフラ生きているので、これまでは、そんなこと考えたことなど全く無かったけれど。でもね、今回のコロナ禍で、KUNIの社会人時代の先輩が、実際に亡くなったんですよ。ちょうど60歳。今の時代だと、まだまだ若いよね。それも、「コロナだ!」と分かってから、あっという間にね。さらに、思い返せば、2014年の冬に流行ったインフルエンザで、高校時代の、これまた先輩が亡くなっている。54歳だったかな。こっちも、急にだよ。生きている限り、「死」は、必ず隣に存在するんだよね。そこで、今日は、この「人生会議」とか「新型コロナウィルスの怖さ」だとかを、改めてお聞きしたいと思って、こんなゲストを番組ではブッキングいたしました。
先生!こんばんは!
「はい。こんばんは。今日はよろしくお願いいたします」
今、ボクが先生とお呼びした通り、今日のゲストはお医者さん、ドクターなんですが、KUNIは、もう遠慮も配慮も、もちろん忖度もなく、何でもかんでも聞いてしまうので、今日のところは、先生、匿名のほうがお話しをしていただきやすいかと思うんですが、先生のことを何とお呼びいたしましょう?
「そうですね・・・ドクター黒ひげとかは?」
なんかそんなオモチャがあったような、黒ひげ危機一髪だったかなぁ。
「あっ、(笑)じゃぁ、ガンジーさんで」
ガンジーさん?それは、何故??
「インドの路上で買った艶やかなガンジーのイラストTシャツを着ていた時に、一時的に呼ばれていたことがあります。『弱い者ほど相手を許すことができない。 許すということは、強さの証だ。By マハトマガンジー』と、ダルビッシュがtwitterに書いているのをたまたま見かけて、なるほどなあと感心しました。Twitterはあまりしませんし、ダルビッシュさんのファンでもありませんが・・・」
おっと、ダルビッシュのファンでもないんか~い!
「はい!でも、ガンジーとインドへのリスペクトを込めて、今日はガンジーさんと呼んで下さい」
わっかりました!では、ドクター・ガンジー、ガンジー先生と呼ばせていただきますが、本当に、ガンジー先生とは、今日初めてお話しをさせていただきますので、流石に、予習をさせていただきました。
先生は、お医者さんですが、その中でも「集中治療専門医」なんですよね?
「そうです。集中治療医です」
外科医や内科医とかは、よく聞きますが、集中治療医とは、さて何の先生だろう?と、ボクが悩むことを見越して、優秀な番組スタッフが「KUNIさん、これを先に読んでおいて下さい」と渡してくれたのが、こちら!「ICU・集中治療室物語」です。

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この本を読んで、あぁそうか、と思ったのが、確かにICUと言う言葉は、医療ドラマなどでもよく出て来るので知っていましたが、例えば災害時に大勢の救急患者がストレッチャーで運ばれてきて、お医者さんがてきぱきと指示や治療していくのがICUかと思っていたんですが、そうじゃないんですよね。あれは、救急救命センター。治療しているのは、そこのお医者さん。例えば、「コードブルー」の主人公・山ピーの役は、救命センターの医師で、専門は脳神経外科。「救命病棟24時」の、ちょっと古いか。まぁいいや。「救命病棟24時」の江口洋介の役は、救急救命センターの外科医。いずれも集中治療専門医ではありません。この本にも、救命センターが「動」の治療であるならば、ICUは「静」の治療とありました。詳しくは後ほどお伺いするとしまして、まずは、そんな認識で、いいんですよね?
「まぁ、集中治療医は、一言で言えば、地味ですよね」
しかし、しかしですよ。先生がおっしゃるように、集中治療医は地味なのかも知れませんが、今回の新型コロナウィルスの感染拡大により、にわかに注目されたではありませんか!これまた優秀なスタッフが用意してくれたんですが、ここ最近で「集中治療室」や「集中治療医」がテーマとなった記事の見出しの一覧がここにあります。それをザッと読みますと、「集中治療室、45道府県で不足」「新型コロナ 集中治療室の崩壊と命の選択」「新型コロナウイルス感染拡大時における我が国の集中治療の現状と課題」「〝命のとりで〟新型コロナ重症患者治療の最前線 記者が見た集中治療室」。なんと集中治療室のことを、命のとりで、と例えている。さらに、そのままズバリ「集中治療とは? どういう人に必要?」と言った解説記事だったり、「新型コロナの集中治療─ICUにまつわるQ&A」と言ったものもありました。もう、にわかに、集中治療室・集中治療医への世間の関心が急増したと言えると思いますよ。
「確かに、一生において、こう言うことってもうないかな、と思いましたね。本当に、今回ほど評価されたことや、必要とされたことは無かったと思いますね。災害の時って、スポットが当たるのは救急外来なんですよね。でも、今回は救急よりも、集中治療の方にスポットが当たりました。初めてですよ、そして今後も暫くはないんじゃないかなと思いますよ。」
その訳は?
「普通、災害って一瞬でしょ。それに、世界中で、あるいは全国一斉に起こることなどないじゃないですか?ですから、基本的には、その被災地には、他から医療関係者が応援に来たり、反対に、患者さんを他の地域に逃がしたり出来るんです。例えば、重症な人たちを、その地域で看ることが出来なかったら、他の地域にドンドン搬送すればいい。すなわち、これまでは、その地域だけで戦うと言う現象は起きてこなかったんですよ。でも、今回はそれが出来ない。限りある資源の中で、その自治体ごとに戦わなければならなかったので、結構、しんどかったですね」
なるほど!今回って、確かに、これまでの災害とは大きく違ったわけですよね。
「そして、何よりも今回は呼吸が悪くなる人が多かったので、基本的には長期のICU管理が必要になるんですよ。呼吸の悪い人って、なかなか良くならない。人工呼吸器を長期間付けることになるので、その人工呼吸器が足らなくなることが、もう目に見えているんですよ。その辺のやりくりだとか、どれぐらいの患者数が予想されて、実際、そうなった時に、どこまで対応出来るのか、常に計算をしていかないといけないんです。我が病院でも、ICUの大半をコロナ対応専用にして、レッドゾーンを設置。出口・入口をいくつか閉鎖して、通路を決めて一カ所からしか入れないようにして、さらに、そこに入れる人数や回数を最小限にするようにしましたね。そうなると、救急とか手術後の対応のための集中治療室は、閉鎖せざるをえなくなるんですが」
そっか。コロナ対策以外の対応が出来なくなっちゃうんだ。で、実際、このままだと、集中治療室から患者がオーバーフローしちゃう・・・みたいな感じはなかったんですか?
「ありましたね」
あ、あったんだ?それはいつ頃?
「緊急事態宣言が出るのか、まだ出ないのか、と言われていた4月の頭から中旬頃にかけて、一気に患者数が増えて」
おぉ!海外では、集中治療室の“外”の廊下に、患者を並べてましたよね。あんな状態になる恐れもあったんですね?
「そう。イタリアでしたっけ?集中治療医が、肩を落として泣いていると言うシーンがニュースで伝えられていましたが、本当に、あんな事態になるのかと恐れていました。けれど、宣言後は、幸い患者数も減って最悪の事態は免れましたけどね」
ガンジー先生も、ニュースに出ていたような完全防備のようなカッコをされていたんですか?
「N95と呼ばれるマスクを付けて、目にはアイゴーグル、そして帽子の付いた防護服を着ていたんですが、それは、すぐ無くなって・・・」
すぐ?
「そうです。その後は、エプロンみたいなやつを着て、手袋をして、そんなカッコですかね。でも、N95も無くなって」
いやいや、先生の病院が何処かとは申しませんが、資料を拝見する限り、大きな病院ですよね。それでも、無くなっちゃうんだ。
「そのため、マスクの上にマスクを付けて、それを捨てる。使い回わすために、そうしたことをしていました」
う~ん!なんだかなぁ~。ここは、もっと国あげて備えておく必要があるんでしょうね。
でも、ベタな質問ですが、先生は、怖くなかったのですか?
「まぁ、多少の怖さはありますが、ちゃんと準備はしているんで。そこは、むしろコロナを診ている人よりも、コロナを診ていない人の方が、逆に怖いのかも知れませんよね。」
なるほどなぁ。それはあるかも。覚悟の差もあるだろうし。
「まぁ、そんな中で、怖いと言えば・・・」
ほら、やっぱり怖いこともあったんだ!怖いと言えば?
「医療崩壊ですよね。僕らが感染したら、本当にダメージが酷いんですよ。一緒に勤務していた人間が、ゴッソリ休むので、一気に人手が減る。それは何としても避けねばなりません。例えば、集中治療に関わるスタッフをいくつかのグループに分けて、それぞれのグループが交わらないような勤務シフトを敷いて、万一、何処かのグループから感染者が出て、そのグループが“潰れた”間は、他のチームがカバーするような体制をとったんですよ。」
おぉ、“潰れた”と言う表現に、リアリティーがあるなぁ。やっぱり、先生たちが、ボクらにとっては最後の砦なんですよね。潰れてもらっちゃ、やっぱり困るんですよ。
「ですから、怖さと言うより、緊張感がありました。そのため、今、ドッと疲れが出ている、と言った感じです」
いや、本当にご苦労様でした。お疲れ様でした。でも、でも、これからも何とぞよろしくお願いいたします。ここで、そのお疲れ様の意味を込めまして一曲、お聞きいただこうと思いますが、先生、この曲を選ばれた訳は?
「コロナで精神を擦り減らしている時に、心を落ち着けるのに聞いていました」
了解です。
さぁ、リスナーの皆さんも、一旦、ここで心落ち着けましょう。
クラムボンの「おだやかな暮らし」♪です。(続く)


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