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出でよ!ジャンヌダルク!!#25

「綿善」の「おかみ」小野雅世さん

「出でよ!ジャンヌダルク!!~女性経営者が未来を変える~」。
(毎月第一金曜日・午後7時~)https://www.be-happy789.com/
毎回、創業間もない女性経営者にゲストとしてご登場していただき、
何故、起業し、そして、今後、何をして行きたいのかを、お好きな曲とともに根掘り葉掘りお聞きしていきます。
7月のゲストは、創業してから実に190年余りと言う京都の老舗旅館「綿善」の「おかみ」小野雅世さんです。


(写真、真ん中)

綿善の創業は1830年、江戸時代の後期・・・
と言われても、なかなかピンときませんが、まずは、その創業当時のお話しから伺いました。

「1830年の天保元年に初代の綿屋善兵衛が宿を開いたんですが、実は宿が最初ではなく、薬屋が最初だったと聞いています。旅館のある場所は、京都・室町通りが近いので、ここは呉服屋さんが山ほどある通りになっていて、その呉服屋さんが、地方から反物を売りに来る、今でいう出張族の方々が大勢来られていて、その方々の定宿として使っていただいていたという風に聞いております。」

小野さんは、その綿屋善兵衛さんの子孫となるわけですが、さて、何代目になるんですか?

「エッと、7代目か、8代目になります(笑)」

とまぁ、ご自身でも分からないほど伝統がある、と言うことですが、今の綿善を改めてご紹介すると、部屋数は27、スタッフの人数は20名と言ういわゆる「小規模旅館」。
そして、一番のウリは?と小野さんにお聞きすると・・・

「立地の良さに加えて、親戚の家のような雰囲気ですかね」

とのことでした。

ところで、そんな老舗旅館の娘として生まれて、プレッシャーを感じることはなかったのでしょうか?
 
「物心ついた時から、祖母、おばあちゃんが、ずっと『あんたは、ここの女将になるんやで』と、呪文か呪いのように言われてきたので(笑)、ならなあかんねやろうな、とすり込みで、潜在的に、頭の中に常にあるような感じでしたね。もう宿命とか運命とか、そんな風に捉えています」
 
そうしたことから、大学も経営者を多く輩出している立命館の政策科学部に進学。大学卒業後は、三井住友銀行に入行します。

(銀行員時代の小野さん)

しかし、小野さんは、就職する前からこう決めていました。
「一番楽しい時に辞める」「会社が自分の育成にかけた費用分は稼いで、会社にお返しした時点で辞める」と。結局、その時期は意外と早く訪れ、3年で退職。その頃、ちょうど結婚をされたので、まずは「専業主婦とはどういうものか?」と言うことを学ぶために、実際、専業主婦となるんですが、これまた早くも半年で、飽きたなぁ!となる。そして、また、ちょうどその頃、「旅館をリニューアルしたので、お前も一緒に働かないか?」と当時社長だったお父さんに声をかけられたことから、いよいよ今の旅館で働くことになるのです。
しかし、当時のこの旅館は、なかなかの“ブラック企業”だったよう。
小野さんは、こう振り返ります。
 
「もう実家じゃなかったら、3日で辞めてるなと思うような状況でした。私には、人間らしい働き方をしているようには見えなかったですね」

そんな小野さんにとっては、このコロナが、実は、大きな転機になるんです。もちろん経営的には大変!そんな中、小野さんは、何と稼働率50%を宣言したのです。宿泊施設であれば、お部屋の稼働率100%を目指すのが当然ですが、あえて「稼働率50%」を宣言した。何故、そう考えたのか?番組では、その瞬間を切り取ってラジオドラマ風にお伝えしました。

「みんなは、稼働率100%を目指せって言うけど、それってどうなの?
ワンフロアに8室。それを2人で担当する。一度にお客様がお食事をされたら
1人で4室!そんなの同時に出来るの?次の部屋が気になって、気ばかり焦って、お客様の顔すらしっかり見ていられない、お客様の名前すら覚えられない。私、そんな旅館にしたくない。」
そこで、雅世は、幹部たちにこう主張しました。
「キャンセルが出たら、そのままにしておいて!その部屋を売っちゃだめよ」と。しかし・・・
 
雅世の見ていないところで、キャンセルが出た部屋を再び売りに出します。
「儲かるし」「これまでの慣習だし」それが、幹部たちの反応。
「確かに、利益率を考えたらそうかもしれないけれど、やっぱり100%稼働を目指すのはおかしいって。社員も疲弊していくだけじゃないの」
そんなモヤモヤを雅世は、数年間にわたって抱えていました。
ところが、今回のコロナの感染拡大で、いやおうなく、稼働率は下がった。
となると・・・
 
「丁寧な接客が出来ました」「お客様も喜んでくれています」
社員たちはそうした感想を持つようになったのです。
そこで、雅世は宣言します。
「どんなハイシーズンであっても、稼働率100%は絶対目指しません。
 稼働率の最大の天井は50%にします。みんなちゃんと休んで、ちゃんとおもてなしをしましょう」と。
綿善は、ここに来て大きく舵を切ったのです。
そうすると、顧客からの口コミの点数も上がり始めた。
雅世は、こう言います。
「このコロナは、私の方針を認めてもらえる機会になった。
 みんなが旅館のことを考えてくれるよい機会になった」と。
逆境すら、プラスに変えるジャンヌダルクなのでした。

確かに、このコロナで、大きな赤字を出しました。コロナ前の最盛期に比べると売り上げが3分の1より落ち込んだのですから、致し方ありません。しかし、小野さんは、稼働率アップを目標にしなかった。さらに、凄いなと思ったのは、このコロナ禍でも「人員削減はしない」「給与も出来る限り保障する」と言うスタンスを守り抜いたことにあります。
小野さんは言います。

「私は、自分の人生を大事にしたいと思っています。それと同じぐらい従業員さんの人生も大事だと思っています。それだけに、その大事な時間の大半を仕事に使ってくれたり、考えてくれたりっていうのは、もうこんなにありがたいことなどないと思うんです。ですから、その人たちに向かって、なんかこう、後ろめたいこととかを絶対したくないなっていうのがあるんですよね」

そうした人を大切にする旅館と言うことが、就活生の間にも広がっているのか、来春には3人の新卒生が入社します。
さて、今後、小野さんは、どんな旅館を目指したいのでしょうか?

「旅館というのは、特に、うちのような老舗旅館って、日本の文化とか、アイデンティティとかが、全部が詰まっていると思っているので、日本のショールーム、生活のショールームとして次の歴史に残していきたいなと思っています。そのためには、実は、私、もっと小さくしたいなと思っているんです。目の前のお客さんのことを、もっとちゃんと見ることが出来るように、そのためには規模を小さくして運営していくことが大事かなと思っているんです」

従来の経営者がとる経営方針とは「真逆」。しかし、アフターコロナの中では、これもまた、生き残るための一つの方針なのです。先の見えない時代、変化を恐れている暇はありません。そこで、小野さんは、「綿善」をこう評します。

「老舗ベンチャーです」
 
そう、本来ならば創業間もない起業家にお出ましいただいているこの番組のルールを逸脱してまで今回ゲストとして白羽の矢を立てたのは、まさに、この“ベンチャー精神”を、小野さんが持ち続けておられたからです。
さて、小野さんからはプレゼントも頂戴しました。

北山杉を使った綿善のオリジナルお箸です。パッケージには「宝尽くし」という縁起の良い日本の伝統柄が散りばめられていて、さらに、京都の今宮神社で厄疫払いの祈祷をしてもらっていると言うこのお箸を、3名の方にプレゼントいたします。
写真は、5種類のお箸が写っていますが、これ、綿善だけでなく、「おやどす」と言う京都市内5つの旅館(綿善の他に「旅館こうろ」「お花坊 北海館」「なごみ宿 都和」「四季育む宿 然林房」)でそれぞれお箸を製作されておられるそうで、五つの旅館のお箸を全て集めてパッケージをつなげると、模様が浮き出る仕組みなんだそうです。
5種類全てを集めてみる、と言うのも面白いかも、ですね。
プレゼントご希望の方はウメダFMのプレゼントフォームからお申し込み下さい。
https://www.be-happy789.com/

そんな小野さんが「ここぞ!」と言うときに聴かれる曲は・・・
椎名林檎の『人生は夢だらけ』だそうです。確かに、この歌には、閉塞感ある世の中でも、何か希望を見出させるのでは、と言う明るさを示してくれますものね。今の小野さんには、大いに“刺さる”曲なんでしょう。
 
最後に、こんな写真もご紹介して、今回のこのnoteを終了しましょう!

小野さん、そしてスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
さて、次回の放送は、8月5日(金)です。
どんなゲストが、どんなお話しをお聞かせくれるのか?
皆様!!お楽しみに!(*^_^*)

【参考】
京都 旅館 綿善(わたぜん)旅館 【公式サイト】 (watazen.com)

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