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妄想レイディオ #4

今日のゲストは、明日華・25歳。“送り人”やってます

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さて、「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」。
今日のゲストは、25歳の若さでありながら湯灌師と言う仕事に就いていると言う明日華ちゃんです。
湯灌師ですよ、湯灌師。リスナーの皆さんは、さて、このお仕事について、どれだけご存知でしょうか?ボク、DJ・KUNIも、確か、父親の葬儀の際に、してもらったかなぁ、と言う程度の記憶しかなく、改めて、こんなお仕事なんだ、と思ったのは、映画「おくり人」を見てのこと。明日華ちゃんは、パートタイマーではありますが、この湯灌師として1年働いておられて、その1年間で実に200ものご遺体にご対面されたとのことです。200ですよ、200。何だかスゲェよなぁ。そんな明日華ちゃんは、さて、どんな死生観を持っているのか、と言うことを聞き出して、今、増える若者の自殺と言うことに、我々オジサン世代にも、その背景だとか、その理由、出来れば、そうした現状を変える方法がないかを考えようと言う、おぉ、何とも真面目なテーマを考えているんですが、それよりも何よりも、この明日華ちゃんが面白い、と言うか、変!変だよね、明日華ちゃんは?
「変ですよね。確かに、変な人だと思われます。自由なことばかりやっていて。でも、自分ではメッチャ普通だと思います。小さい頃は、良い子ちゃんだったし。振れ幅が大きいだけかと」
さっきも曲が流れている合間に聞いたけど、高校時代の制服、スカートじゃなく、ズボン・・・って、今は言わないのか?パンツで3年間通したんだって?そんな女の子は、学年に二人だけ。さらに君は、いわゆるLGBTでもないにもかかわらず、ズッとパンツだったらしいじゃん。何故?
「うちの学校は、女子は、スカートとパンツと、キュロットの3種類から制服を選べました。このキュロットが可愛くて、人気、高かったな。私は、スカートを日常から穿かないし、単純にパンツがいいなと思っただけ。私は、普通に女の人だと思っているけど、だけど、『女の人はスカートでしょ』みたいに言われるのが嫌。枠にはめられるのが嫌!何を思われてもいいけれど『こうでしょ!』と人から言われるのが、嫌なんです」
もう少々のことでは、驚かなくなったぞ!それが君の価値観なんだよね。ボクも理解出来始めてきました。これが、今よく聞く“ダイバーシティ”と言うやつだよね。「妄想レィディオ」と言う番組タイトルから「ダイバーシティ・レィディオ」に変えちゃおうかな。そんな君から見て、今の25歳の若者って、どう見えているの?
「う~ん、おもんないと思う。昔の同級生に会っても、みんな仕事の愚痴しか言わない。全然、おもんない。そんな愚痴言うなら、仕事、早く辞めたらいい。そのくせ翌朝、満員電車に乗って、仕事に行って『おはようございます』と言う。なら、愚痴、言うな!と思う。君の意思は、どこにあるねん、と」
分かった、分かった。もう、分かったから、ストップ、ストップ!若いリスナーを敵に回すぞ!
さぁ、本題に、と言うか、明日華ちゃんのお仕事、湯灌師に関して、もう少しお聞きしていきましょう。今でこそ、200もの遺体を湯灌してこられた明日華ちゃんですが、誰にでも“初めて”がありますよね。明日華ちゃんの色々な、出来ればエロエロな“初めて”を聞きたいけれど、今夜はグッと我慢して、湯灌師初、湯灌師デビューの時を教えて下さい。10日間の研修をして、そして・・・
「最初は、見学です。先輩がされるのを、傍らで拝見。もうホント、ドキドキしました。ご高齢の方のご葬儀で、3世代の方がお集まりになっておられました。息子さんご夫婦に、お子さんがおられて。故人からすればお孫さん。お孫さんが泣いておられる。そのお孫さんを見て、私、アアッ!となって。このお孫さんは、私だと思っちゃった。私の家族もこんな感じで。あのお孫さんが、私やん!と思った。なので、こっちも思わず涙が出そうになったので、頑張ってこらえました。こうした人が亡くなったと言う環境に身を置くのも、それまでは、ひいおばあちゃんの時しか無かったし、なんか・・・きましたね」
お孫さんの気持ちと一体化しちゃったんだね。
「でも、葬儀の業界では、ご家族さんの前で泣くのはダメ、NGです。だから最近は、ウルッとすることは、無くなったとは言いませんが、確かに、ウルッと来る時もありますが、随分減りましたね」
しかし、最初に、この仕事やれると思ったの?
「それは、でも、うん。こう言うことなんだ、と。何か安心した、と言うか、こんな風にお孫さんが泣ける場所があるのは、いいなぁと思いましたね」
その日は見学だよね。そして、いよいよ本番。実際、お身体を洗うことになるんだろうけれど、ぶっちゃっけ、見ず知らずの人の遺体だよね。どうなの?どうなの?って、全然、ちゃんとした質問になってないけど、まぁ、どうなの?
「そこには全然抵抗はなかったですね。まぁ、他人だから出来ると思うんですけど、ね。確かに、ご家族さんは寂しいんだろな、悲しいんだろな、とか。ご遺体を拝見して、ここ痛そうだな、痛かったんだろうなと、共感は出来るけれど、ご家族さんのように喪失感はないんですよね。その違いが、泣かずに仕事が出来る点だと、私は思いますね」
でも、このお仕事を契機に、めちゃくちゃ他人の“死”と言うもの見だした訳だけよね。どうなの?って、これまたちゃんと質問になってないけれど、まぁ、どうなの?
「う~ん、どうだろ?・・・まぁ、思ったことは、誰でも死ぬんだな、と」
な、な、なるほど。確かに。
「この湯灌って、そこそこのお金をかけたお葬式の、さらにお金をかけたオプションなわけですよね。なので、言わばお金持ちの方が多い。社長さんもおられるし、部下を大勢お持ちの方もおられる。でも、そんなお金持ちの方でも死ぬんだなと。『逝かないで』と泣きついてくれる人、愛してくれる人がいたとしても、人って、死ぬんだな、と思いましたね」
何ともシンプルだけど、我々の日常では、忘れている・・・うん?忘れていると言うより、蓋をしているような、道理と言うか、真理、哲学のようなものを感じた訳だ!深いね、実に深いよね、って、何が、どう深いのかはよく分かんないけど、とりあえず深い!!
ところで、ご対面するのは、やはり高齢者の方が多いのですか?
「多いですが、もちろん例外もあります。よくお会いするのが、女性で、40歳代から50歳代で、乳がんなどでお亡くなりになられた、まぁ、私の親の世代の方と言う場合もありますよ」
あぁ、確かにあるかも。子どもも、小っちゃかったりするんだろなぁ。そう言う場合、お化粧する際にも気を使うよね。
「使いますね。やっぱり、使いますね。癌の方であれば、既に病気の段階で、外形変化しておられるので。例えば、痩せこけているとか、眉が無いとか。普段はどうされておられましたか?それよりも前の状態の方が見慣れておられますか?とか、どの段階に合わせてメイクしましょうかと、そう言うことを、ご家族様とご相談するのが難しいですよね。言葉のチョイスとかがね。気を使いますよね。ご高齢のご婦人であれば、ご家族様からは『最近してなかったので』と、なることも多いんですけどね。だからと言って、しないと言うわけにもいきません。と言うのも、時間が経てば、お顔色が変わってくることが多いので、それを見越してお化粧をしなければなりません。よく『自然なままで』と言われるんですが、自然のままは、難しいんですよね。自然と言うものがどう言うものかを、ご家族様にお聞きしながらやります。まず、肌から仕上げていきます。ファンデーションを薄く塗って、隠さなければならないものがあれば、ドーランを塗って隠したり。頬紅は、まず入れますね。そして、口元はどうしますか?とお聞きします。『普段これを使っていたので、これを塗って下さい』と言われると嬉しいです。中でも重要なのは眉です。メイクで人の印象が変わるのは、この眉で、結構大事。でも、眉が薄い期間が長かったら描かないこともあります。『そっちの方が見慣れているから』と。なので、お年を召した方の場合、眉を結構描かない場合がありますね」
じゃぁ、若い人の方が、難しいんだ。例えば、若い人のケースもこれまでにあった?
「ありました。同い年の方でした」
死因は?
「自殺です」
それって、分かるんだ?
「死因は聞きます。全員、聞きます。でないと、何かあった時に困るんで」
そりゃ、そうだよね。そんな中、君は200もの遺体に対面して来たと言うことですが、そんな風に自殺のパターンと言うのは、いくつあったの?
「私は、一番の若手なので、そうした難しいケースには当たらないようにしてくれているのですが、それでも2~3ケースはありました」
そりゃ、どう考えても難しいケースだよね。
「普通の方であれば、例えば、お風呂好きでしたか?とか、お化粧、お好きでしたか?と普通に聞けるじゃないですか。しかし、こうしたケースの場合は、そうした会話は一切しないですよね。余計なことは言わない、聞かない。本当に、生きておられる間に会いたかったなと思いますよ、いつも」
じゃぁ、同い年の人に会った時は、どうだったの?
「もともと、傷だらけだったので、もともと“そう言う人”だったと思いますね」
なるほど。そう言うことね。これまた、野次馬的で、本当に申し訳ないけれど、致命傷と言うのは分かるの?
「あっ、それは、首でした」
あぁ、跡が・・・
「でも、その方は、あごを上げたら、綺麗に隠れるぐらいの位置に来ていたので。その方は、何も塗らなかったと思いますね。首の角度をあげると見えなくなったので。ドーランなどは塗らずに、少し襟元を詰めたぐらいでしたね。あと、こうした場合は、舌を噛むので、そのままになっちゃう」
それを、君が戻すと言う訳?
「そうです、戻します」
実に、あっさり答えるなぁ。実は、もうボクは、ちょっと固まっちゃってるよ。ところで、そう言う場合、何も遺族に言う訳でもないし、そうした作業を悟られないようにしていく訳でしょ。
「言わない、言わない!絶対、言わない!目に触れさせもしません。もちろんお身体はタオルで隠していますが、その際は、思い切り上まで引っ張ってと言う感じですよ。そりゃ、ご家族様は、当然、全部分かっておられるはずですが、分かっておられるはずですが、そこで配慮するのと、しないのでは、大きな違いがあると思います」
だよなぁ。これまた、こんな風にしか言えない自分のボキャブラリーの無さが悔しいけれど、すっごい仕事だなぁ、湯灌師って。それをしてる、それが出来る君も、すっごい!なんか、ちょっと俺、感動してるかも。
でも、ちょっと疲れたので、ここで一曲。
「What A Wonderful World」「この素晴らしき世界」。ルイ・アームストロングです。(続く)

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