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車椅子ダンサー・MIHOの 「二度目のガンになりました。で、それが、なにか!?」

~#16 戻ってきたぞ、この場に!~

「“そこのけ!そこのけ!”って感じで行きたいですよね~」

そう話すのは、この物語のヒロインで、元車椅子ダンスの日本チャンピオンMIHOさん。MIHOさんは去年の6月に、人生二度目のガンとなる腎細胞癌の摘出手術を受けましたが今年に入って早くも再発。再度の手術は難しい、放射線治療も困難と、一時は大変心配な事態に陥りましたが、「免疫チェックポイント阻害剤治療」、そう最新のがん治療薬・オプジーボを使った最先端治療により、MIHOさんは再びガンと闘うことになったのです。
さて、そんなMIHOさんが、何を“そこのけ!そこのけ!”と言ってやっていきたいのか?まずは、この写真をご覧ください。

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マスク姿ではありますが、紛れもなくMIHOさんではありませんか!
決して、数年前のものではありません。つい先日のこと。本当に久しぶりに車いすダンスの教室を覗いたところ、カメラを向けられると、思わずポーズをとっちゃったというわけです。いやぁ、ここまで回復したんだ!

「今日、オプジーボを打ってきました。7回目です。今のところ、そんなに、副作用っていうのは出ず、肝臓の数値とかも、全く問題ありません。また、節々が痛いとかも特にありません。CTも先月撮りました。結果も良くて、縮小してるって・・・腫瘍が。お医者さんからも『とりあえずは、まあまあ良かったでしょう』っていう形です」

努めて淡々と話すのには訳があるんですが、それは、後ほどご紹介するとして、ダンス教室を久しぶりに覗いて、ただこんな風にポーズをとっただけでなく、ちびっ子ダンサーと一緒に、基本の基本のターンやステップを披露したそうです。実に、それは2年ぶりのこと。
MIHOさん!ちゃんと踊れたの?

「意外と覚えているもんなんですね、身体って!」

どうなの?やっぱり改めて踊りたくなった?

「そうですね。もともと病気になる前には、もうダンスはちょっといいかなぁと、フェードアウト感があったんですけど、病気で、もう踊られへんかなと思うと、やっぱり、もう一度この場に戻りたくなるんですよね。この場に戻ると言っても、後輩たちを指導すると言うよりは、やっぱり自分が踊りたいと言う気持ちが大きくて、踊っている後輩たちの間に割り込んで、そこのけ!そこのけ!って、この場に戻ってきたいですね」

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でも、腫瘍が小さくなったからと言って、即、ダンスに復帰・・・とは、いかないようです。

「背中がね・・・一回、溶けかけているんで背骨が・・・ダンスに耐えうるかどうか」

“背骨が溶けかけた”、それは決して比喩だとか誇張などではなく、事実なんです。

「腫瘍によって溶けたんです。レントゲンで見ても、背骨の輪郭が溶けてぼやけていました。境目が分かんなかったんです。でも、今は、その境目が復活。多分骨が薬によって、骨が出来てきてるってことなんやと。そんな復活の途中という段階。なので、まだ背骨の状態が、ちょっとよく分かんなくて・・・」

でも、凄い回復のスピードだと思いますよ。となると、「お仕事」どうします?職場復帰も近い?

「そうなんですよ。今日も、先生に診断書を書いてもらうときに『いついつぐらいに、どうこうって、期間を入れてくれっ!』と会社は言ってると・・・」

おっ、いよいよなのかな?

「そう、『期間を書いてほしい』と会社に言われたんですが、と担当医に言うと・・・」

さて、ドクターはなんて?

「『そんなもんずっとや!』『期間、そんなん難しいわ』『ずっと治療は続くから、ずっとや!』と言われました」

まぁ、そうなんやろね。全治何か月みたいなケガと違って、線引きは難しいよね。でも、職場復帰は、そう遠くはないんでしょ?

「お医者さんも、私が戻りたいと言うと、多分、戻る方向で診断書を書いてくれるとは思うんですが、大きな副作用が出てしまったら急に休むことになるのは、これから暫くはずっと変わらないみたいな感じで、“行けないこともないけれど・・・”と言った感じだと思います」

そうなんや。でも、焦ることはないやないですか。間違いなく順調!良かったやないですか!?あれ、浮かぬ顔、良くないの??

「違うけど、すごく複雑なんです。調子乗るというか、調子には乗っていないけど、どっかで余裕持っていて、でも、余裕ぶっこいてるんじゃないぞ!と」

うん?ううん??どう言うこと???

「何ていうか、また、崖から突き落とされたみたいなことになったらどうしよう?っていうのがやっぱりあって。だから、今の状況は嬉しいけど、喜んでいいのかわからない。確かに、お薬は効いているから、喜んでいいんだろうと思うし、やりたいことを今やった方がいいやろうけど、調子に乗って、やりたいことやってて、またド~ンと来たらどうしようって・・・もうなんか、ごっちゃになってます」

なるほど。安易に「分かる!分かる!」とは言いませんが、でも、分かる!って、もう、こっちもごっちゃになってるけど、回復途中のがん患者の皆さんに共通しそうな心理かと。でも、MIHOさんには、一つの目標が出来たじゃないですか!?

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(ダンス教室の仲間たちと)

「そうなんです。後輩がね、学業の関係で、来年3月までで、一旦、ダンス教室を辞めるんですよ。その彼が、辞める前に『MIHOちゃんと踊りたい』と言ってくれているんで、その思いは、叶えてあげたいなぁって・・・」

じゃぁ、練習しないとあきませんやん?そう言うと・・・

「ねぇ~~~~~!」

何とも“嬉し”“恥ずかし”と言うリアクションをするMIHOさん!
さぁ、目標に向かって頑張りましょう!
MIHOさん!後輩と踊る姿をボクらにも見せてくださいね! (つづく)

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