【勝手に解説】2020年度第2回東大実戦模試・物理

第1問

回転座標系や剛体がテーマ.どの座標系で考えているのか,どの部分に(もしくは全体に)注目するのか,採用している視点を明確に意識することが重要な問題.

[I] 回転する棒に沿った小球の運動を,静止系(地面に固定した座標系)と回転系(棒と共に回転する座標系)の両方から巧妙に考察する問題(裏テーマはコリオリ力).棒から離れた後,静止系で見れば,小球は力を受けず等速度運動することに注意.

[II] 衝突時の力積は運動量変化から逆算する他ない(何処に注目するのがよいだろうか?).また,剛体の回転運動は,高校範囲で直接扱うことができないので(剛体の回転の方程式は大学初年次に習う),(与えられた条件に加えて)エネルギー保存の一択.

※ とても面白い問題!ニッチなテーマでありながら,物理的に重要な要素を含むのでここで触れておく価値のある問題だと思いました.ただ,解説冊子の解説が酷いです・・・受験生が何を理解しておくべきかが何ひとつ示されていない.計算がずらずら書いてあると高級と勘違いしてしまう残念な受験生もいるにはいますが,誇り高き東大受験生は「思考法」こそが至高と理解していることでしょう.こちらの解説動画をぜひご覧になってください.あと,細かく言えば,複数物体の面積速度の合計には物理的意味がないですし,1/2を払った式を与えるくらいなら(受験生に余計な混乱を招いたと思う),角運動量保存則を与えてしまった方がシンプルだった気がします.

第2問

静磁場中を動く回路.電磁誘導の定番的な問題.

電磁誘導の問題の基本的な流れは・・・
 ① 誘導起電力を決定する.
 ② 回路の方程式(キルヒホッフ則,電荷保存則)を書く.
 ③ 運動方程式を書く.
 ④ エネルギー収支を考察する.

[I] 静磁場中を回路が動くタイプの電磁誘導ゆえ,誘導起電力を「vBl公式」で決定する.そして,キルヒホッフ則と運動方程式を連立する.

[II] 基本的な流れは[I]と同じ.ループ1周あたりの誘導起電力がファラデイ則からも求まることも確認しておこう.また,エネルギー収支の考察においては,磁場が回路と力学のエネルギーの変換を媒介することを理解しておく.

※ 妥当な出題だと思います.ただ,解説冊子に電磁誘導について偉そうに書いていますが,理解が甘すぎるのが残念.賢い受験生のみなさんは間に受けませんように・・・笑 正しい解説は次リンクを参照のこと.

第3問

理想気体の熱力学の基本形と例外処理の問題.

理想気体の熱力学の基本的な考え方は次のように類型化できる:
 * 基本形(状態方程式&第1法則)
 * 例外処理①:断熱変化
 * 例外処理②:非平衡を経る過程

[I] 基本形通り,状態方程式を立てる前に,可動部分のつりあいを調べるのがキモ.

[II] 加えて,熱力学第1法則を適用する.AとBとばねと気体からなる系に注目するのがよい(誘導の流れから重力場は外界に取る).

[III] 気体が拡散する.非平衡を経る過程ゆえ,例外処理で,全体のエネルギー保存則の一択.(重力場を系に含め)重力の位置エネルギー,弾性エネルギー,気体の内部エネルギーの合計が保存すると考えるのがよい.

※ これも妥当な出題です.ただ,[I]に細かい設問をつけ,さらに無意味な文字指定をすることで受験生に不自然な思考過程を強いる必要はなかったかな,と.

解説動画&ノート

解説動画中で利用しているノートはこちら.


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