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非情怪談【毎週ショートショートnote】

この8月、一風変わった「百物語」が開催された。通常の百物語と違ってこのイベントはその参加者があっち系限定だった。怖い話しをするのではなく怖い参加者が日頃感じている思いのたけを披露するのだ。

トップバッターはショート・ボブのお菊人形だった。なかなか似合っていたのだがお菊には納得がいかなかった。自慢の黒髪を勝手にへア・ドネーションされてしまったのだ。このあたり、人形の持ち主側から描いたエピソードがあるので参考にして欲しい。

こうしてカラコンのCMで重宝されていたが飽きられて干されたお父さんを擁する鬼太郎チームや、相手チームにプレッシャーを与えるためにホッケーだけでなくたまにカーリングに動員されることもある歴代ジェイソンなど、有象無象の出演者がそれぞれの胸の内を語った。

彼らの本音の多くは不満や愚痴だった。

トイレの花子さんなどなかなか悲惨だった。昨今の少子化による児童不足で活躍の場が廃校になってしまったのだ。立ち退きを余儀なくされてからは不遇だった。

移転したさきは飲み屋街の雑居ビルだったが、酔っ払いによりゲロまみれになるのはしょっちゅうだった。おまけに最近いわゆる水流音を発するトイレ用擬音装置が故障して鳴りっぱなしになってしまい不眠症になってしまったのだ。極めつけは「LGBTなんチャラ法案」が成立してからだった。

自分より怖い化け物がトイレにやってくるのだ。花子さんはとうとう精神をやられてしまった。

口裂け女も数年前のアレで完全に存在感を失ってしまった。当時はマスクをはずそうとするだけでSNSでさらされボコボコにされたのだ。それがトラウマとなり以来一切マスクを外したことがないのだ言う。マスクを外せない口裂け女なんて印籠を見せられない水戸黄門のようなものだった。

こうして最後の口裂け女の語りで百物語を無事終えることが出来た。無事じゃないもの達の集まりで結果が無事ということは奇蹟といっても良かった。

さて、主催者はこのイベントに『シン百物語』というタイトルをつけて動画共有サイトにアップした。この動画はたちまち話題となり広告だけで8桁の収益をあげるようになった。

一方で当日の怖い出演者に手渡されたのはわずか500円玉一枚と動きを封じるお札が入った〝大入り袋〟だけだった。非情なことこの上ない待遇といってもよかった。

(😭😭😭)


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