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甦った不死鳥 34歳の全盛期


こちらは、2020年に作成した下記のnoteの続編だと思ってご覧いただけると嬉しいです。


 「またここから全盛期だと思って頑張ります。」

 これは今年5月21日、支配下契約となった際の記者会見で立岡宗一郎が発した言葉である。

 あれからちょうど2週間。
 我々はその言葉がただの決意表明では無いことを知る。。

絶望の大怪我

 今から遡ること2年前。
 2022年6月9日 ベルーナドームで行われた西武戦。

 7回に決勝点となるタイムリーヒットを打った立岡はその後9回の守備で左膝前十字靭帯損傷の大怪我を負った。同月末に手術、オフには育成選手契約となった。
 当時32歳。決してレギュラーが確約されている選手では無かった立岡にとってこの長期離脱しかも立岡の大きな武器である脚の怪我というのは痛すぎるものだったに違いない。

 復帰への道のり

 そこから1年に渡る辛いリハビリを経て2023年7月に実戦復帰。DHからスタートし徐々に守備機会も増やしていく。

 外野守備走塁コーチの亀井善行からは「立岡は34歳になるけどまだできると思うんですよね。信頼があって、安定感があるんで(チームには)大きな存在になると思います」と存在感を力説。

 阿部慎之助監督からは「まだまだ戦力と考えています。」と秋には若手に混じって秋季練習に参加させた。

 こういった首脳陣からの信頼もあったからここまで巨人軍のユニフォームを着続けられたのだと思う。

勝負の年

 こうして迎えたプロ16年目,2024年シーズン。
  一軍ではルーキー佐々木俊輔がOP戦から結果を残して開幕スタメンを勝ち取り、2年目萩尾匡也もアピールを続け一軍に帯同。ベテランの梶谷も開幕ダッシュに大きく貢献した。

 しかしシーズンが進むと佐々木は徐々に下降気味、梶谷は怪我で離脱。安定して外野で出場を続けるのは結局丸佳浩のみ…という状態で開幕時はあれだけ賑やかだった外野陣は一気に巨人軍の「穴」となってしまった。

 そこで白羽の矢が立ったのが立岡である。

 ファームでは開幕直後こそ4割近い打率を残してアピールを続けていたが、数字も落ちてきたタイミングでの支配下復帰ではあったが、一軍監督は立岡を誰よりも知っている阿部慎之助。必然だっただろう。
 
 5月21日に昇格即スタメンしてから1週間は打率こそ.100だったが、バントなどの小技や、戸郷翔征のノーヒットノーランをアシストする好プレーなどしぶとく役割は果たしていた。そして大きな転機となったのが交流戦だ。

 交流戦最初の対戦カードは古巣のソフトバンク。
 3連戦でヒットこそ出なかったが、王貞治Dayと銘打って行われた初戦、代走から盗塁を決めた際に、大怪我から復帰した立岡の話を振られた王氏が「よく頑張りました」と労っていたシーンがとても印象に残っている。
 立岡がブレイクした2015年当時の監督原辰徳氏もその王氏の隣で微笑んでいたのが想像できる。

 そして舞台を所沢のベルーナドームに移した西武戦から立岡宗一郎は完全に甦ることとなる。そう、あの大怪我を負ったベルーナドームで。

2年越しの大復活劇

  5月31日 西武戦の初戦に2年ぶりとなるタイムリーヒット。奇しくもあの大怪我をした日と同じ時期、同じ球場だった。
 あの日と同じ丸佳浩と追った打球処理も難なくこなした。

 翌2戦目もヒットを放つと3戦目の6月2日には、実に7年ぶりとなる猛打賞の活躍。3本とも得点に絡み、自身の好走塁での得点もあった。
 野球人生が終わりかけたこの地で、2年ぶりに立岡宗一郎は我々に復活を宣言したのだ。

 34歳の全盛期

 こうして所沢で甦った立岡は東京ドームに戻っても勢いが止まることはなかった。
 ロッテ戦、第1打席でタイムリーヒットを放つと3回には打者9人連続安打含む1イニング12安打という記録的猛攻に便乗し、1イニング2本のタイムリーで3回までに猛打賞を決めた。その後4安打目を放ち、"どこに投げても打ちそう"な様はまさに【立岡宗イチロー】という表現がピッタリな打ちっぷりだった。
 見ていた我々はその姿をあの2015年の"全盛期"と重ね合わせていた。

 蘇った不死鳥

 その日、2年2ヶ月ぶりのお立ち台に登った立岡は、辛かったリハビリの時期をこう語った。

「妻が一生懸命サポートしてくれて、球団のトレーナーさんだったりが親身になってくれて。ほんと感謝の気持ちを伝えたいなと思います。」

この感謝の言葉の深みはとても大きい。
これまで幾度の怪我も乗り超えてきた。

 冒頭の支配下契約時の記者会見で語った印象的なコメントを思い出す。

「プロ入りした時は内野で右打ちでしたし、ケガして左打ちになりまりたし、外野手にもなりました。育成も経験しましたし、大けがもしましたし、もうほぼ全部経験しているなと思うので。」

 そしてヒーローインタビューの最後には上記の記者会見の時と同じ、あの言葉で締めた。

「またここから自分自身、全盛期だと思ってチームの力になれるように頑張ります」

 立岡宗一郎、間違いなく、今の姿は全盛期真っ只中だ。

 最後に

 立岡がブレイクした2015年、投手陣は良いものの得点力不足で落とす試合が多かった点は今季と似ている。
 だが変わった部分もある。あの当時防御率1点台ながらシーズン負け越しと援護に恵まれなかった菅野智之は今季もここまで(6月4日時点)防御率1.20で5勝負け無しとしっかり勝ちに結びついているし、シーズン途中加入の助っ人野手はあの時は出オチだったが今季はデビューから7試合連続安打、2HRで打率.414と神がかった救世主として生まれ変わってやって来た。 
 もちろん野球賭博などはやっていない(強調)
 
 一気にリーグ、交流戦のW首位に躍り出たチームの立役者立岡宗一郎は、エリエ・ヘルナンデスと共に、一ヶ月前に"穴"と化していた外野2枠をも埋める救世主となっている。

 何度も野球人生の崖っぷちから這い上がってきた不死鳥は近年低迷しているチームをも甦らせる。

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