タクト

三題噺や短編をメインに書いています。 三つの単語のお題を頂ければその単語を利用した短編…

タクト

三題噺や短編をメインに書いています。 三つの単語のお題を頂ければその単語を利用した短編小説をお書きます。

最近の記事

占い好きな17歳

絆創膏、ハート、17歳  『お前鹿に乗った馬だな』  「素直に馬鹿と言ってくれよ」  電話相手は俺の話を聞くと同時にそう言った。  今日は俺の誕生日、17歳になる。俺は高校生デビューと同時に密かに目標を立てていた。  即ち  『高二の誕生日になるまでに彼女を作る。だったな。  それで最終日の今日に血迷って女子向けの占い本とMorning Newsの占いコーナーを信じてナンパに出掛けたのか……お前鹿に乗った馬だな』  「素直に馬鹿と言ってくれよ」  こいつが言った通り、俺

    • 三題噺 僕ちゃんは生まれ変わる後編

      リチャード・たくあん・もちもち  不味いご飯に、ボロい寝床と重労働……  僕ちゃんがなんでこんな事をしなければならないんだ。  僕ちゃんは選ばれた人間の筈だ。  所が今はこのワショウという人間に見張られて、必死に働かされている。  布団を片付けるのがこんなに大変なのだと初めて知った。  ご飯を作るのがこんなに大変なのだと初めて知った。  僕ちゃんは今までそんな“大変な事”を他の誰かにさせてただ遊んでいるだけだったのだ。  むしろ、“大変な事”を当たり前に出来る人こそ、選ばれ

      • 三題噺 僕ちゃんは生まれ変わる前編

        大晦日・お正月・はじめて  僕ちゃんは裕福な家庭に産まれた。  家にいるだけで、誰かが世話してくれる。  寝床から起きれば、着替えを持った使用人が僕を着替えさせてくれる。  使用人が髪を整え、身なりを整えてくれる。  テーブルに座れば、料理人が沢山のご飯を用意してくれる。  そして、日が暮れて寝る頃には、使用人が整えた寝床で寝る。  僕ちゃんは何もしなくても生きていける選ばれた人間なんだ。  あの日まではそう思ってた。  切っ掛けは父上の一言だった。  僕ちゃんは“テラ

        • 三題噺 クリスマスに明るい夢を見た話

          クリスマス、光、夢 ガラクタの山。 他の国の人から見たら、これはただのガラクタの山だろう。 地元の人間のほとんども、この景色をみたらそう言うだろう…… でも、僕にとってそこは宝の山だ! 他の国の人間達がガラクタと言って棄てる、雑多な物。ボロボロの木材だったり、錆びた鉄屑だったり…… 僕はその中の鉄屑、特に錆の無い鉄、キラキラした金属を優先してかき集めていた。 バケツ山盛りを二つ集めれば、白いパン一つのお金になるからだ。 今日も日が明ける前に宝山に行き、日が暮れ切るまでにバ

        占い好きな17歳

          三題噺 ファン・てらバイトふぉーみんぐ

          スイッチ・仮想・現実  「ぉろげに」  ドカーン……  外は銃弾の嵐、爆弾の雨、阿鼻叫喚。  そして、機械の兵士達が一瞬の隙をついて物影から物陰へと移動して、タイミングよく攻撃する。  あるものは腕を『行くぜ鉄腕!パンチランチャー!』と叫ぶやシュボンッ!と轟音を響かせた両手がぶっ飛び、岩陰に隠れたクリーチャーを吹き飛ばす。  またあるものは『ねぇねぇ、誰か僕の身体触ってよぉ』と奇声?を上げながらクリーチャーを追い回す。  そいつの身体は3000℃の炎で包まれているので、挑ん

          三題噺 ファン・てらバイトふぉーみんぐ

          三題噺 帰れ馬鹿野郎

          リプライ。ごめん。夜9時45分  「お前が悪い」  今朝から様子がおかしかった裕二から無理矢理話を聞き出した隆文はまず一言コメントした。  「悪かったとは思ってるよ。  でも俺も遊んでる訳じゃないからさ」  そういう隆文は持ち上げていた段ボール箱を台車に下ろしてフゥと息をついていた。  その通り裕二と隆文は遊んでいる訳では無く、絶賛お仕事中だ。  とある大型ショップの在庫管理とヤマ〇等の配送業者とのやり取りが主な仕事。  言ってしまえば裏方だが、彼らの仕事がなければ、表で商

          三題噺 帰れ馬鹿野郎

          三題噺 身も心も内臓も……

          じょそう、コンタクト、パンデミック  ヤバい病気が蔓延した……  その名も“フルゥメンウィルス”  このウィルスはたちまち日木の国中に広がり“平 生最期のパンデミック”と呼ばれ、後々教科書に載ったなんて話は……今はどうでもいいだろう。  さて、このウィルスの効果は簡単に言うと、皮膚接触した対象を“女の子”にするという効果だ。  身も心も内臓も……  出所は某サイトでやり取りされた“世界が変わるコンタクトレンズ”だと言われている。  先着666人限定で売られたそれを買った女性

          三題噺 身も心も内臓も……

          三題噺 逃げろ、お供物

          ハングリーデイズ・アオハル・肉  「奴はどこだ!」  「探せ!」  ドタドタと足音を響かせながら衛兵が走り去るのを、ゴミ山でじっと息を潜ませて見送った。  集団の最後尾を走っていた一人が一瞬ゴミ山に目を向けたが、結局そのまま走り過ぎて行った。  「はぁ、」  と、ずっと詰めていた息を吐き出した。  衛兵が走りだしたのとは反対方向を目指して足音がしない程度の速さで走る。  「なにしてるの?」  「うひゃあ!?」    いくつかの角を通り過ぎた場所で唐突に声を掛けられた。  同

          三題噺 逃げろ、お供物

          三題噺 主食戦争とカレー革命

          ジャガイモ ニンジン 玉ねぎ  「くそ、ここももう持たない!逃げろ!」  「またか、また俺達は負けたのか……」  現在世界はジャガイモ帝国に脅かされていた。  ジャガイモ帝国。  かつてはニンジン公国、玉ねぎ王国と共に共存共栄の時代を歩んできたのだが、ある日勃発した戦争を機に一気に勢力を拡大した。  後にいう【主食戦争】……である。  人々が食糧危機に瀕したとき、ジャガイモが大量生産されたのである。  澱粉質を多量に含み、次いでに花も綺麗で栽培も比較的容易なジャガイモは、

          三題噺 主食戦争とカレー革命

          三題噺 ちょっとした話c

          ペット・おあずけ・決意  私の親友は真っ白なポメラニアンのワンちゃん!  大型複合店のペットショップの前を通った時にいた子、小さなカゴの中にいた小さな子だった。  私はピーンと来た、この子可愛いって!  そして、その子と目が合った途端キューンとした。  パパが「向こうのお店行くよ」って私の手を引いたけど、私はあの子を指差して「あの子欲しい」と言った。  パパは「ダメ」と言って私の手を引こうとしたので、私は必殺技を使うことにした。  パパの手を振り払って、床に大の字に寝転がっ

          三題噺 ちょっとした話c

          三題噺 転生したら藁だった件について(笑)

          おおきなかぶ かぐや姫 わらしべ長者  「妾と結婚したいというならばこれを持ってこい」  と言った僕の初恋の相手はとんでもない物を要求した。  “月面に存在するおおきなかぶ”    「絶対無理ですよ。  今何時代だと思ってるんですか?」  「まるで何時代になれば宇宙に行けるか知ってるかのような物言いですね。  私はいつまでもまっていますよ」  そう言ってかぐや姫は妖艶に笑った。    僕は国中を歩き回って、カブというカブをかき集めてかぐや姫の所に持っていったけど、全て偽物だ

          三題噺 転生したら藁だった件について(笑)

          三題噺 大きなライター

          飛行船 タイプライター 何者    カタカタカタカタカタ夕、力カカタ夕……  文明開花とは恐ろしいものだ。  ボタン一つで文字を打ち込める機械が出来た。お陰で執筆スピードが格段に上がった。  だから、この惨劇を冷静に素早く記す事が出来る。  「お客さん!早く逃げんさい!」  場所は飛行船。そこは逃げ惑う人と人がぶつかり合い、阿鼻叫喚としていた。  そんな人々の邪魔にならない場所。窓際の角を陣取り机と椅子を向き合わせていた。  現在の高度は高い筈なのに、気温がどんどん高くなる。

          三題噺 大きなライター

          三題噺 40全てを失った角田義人

          夜・逆転・開放  『はい、こんばんは始まりました突発生配信YouTuber、“オトルニイ”だよ! 初めましての人に簡単に紹介しよう。 このチャンネルは、我が家の家族喧嘩を生配信して、オトルニイが、解説したり茶々入れたり感想を言うチャンネル。 一応我が家の人間以外煽って無いから迷惑系YouTuberのつもりでは無い。 あと、我が家はどう言う訳か、本名で呼び合う習慣が無いし、このpcと、下の部屋に設置した盗聴器には音声変換機能を付けてるからリアル割は出来ないからなぁ〜』 コメ

          三題噺 40全てを失った角田義人

          三題噺 美しい空へ跳べ

          お城・きらきら・ふかふか    「美空、前に言ってたよな。  あの海の向こうを埋め尽くす雲が出来たら、空の上に大きなお城があるんだって。  そこで王子様と結婚するって」  「いつの話よ、一郎君。  確かに昔そんな夢見たいなこと言ったけど、私もう高校三年生だよ」  「あるんだ」  「え?」  「そこに行くには高度1500mまで飛ぶ必要がある。  そして、俺はその為に野球部に入部して、如何に高く打球を飛ばせるかを三年間研究した」  「お、おーい。スカウトマンのみんな。  明日決勝

          三題噺 美しい空へ跳べ

          三題噺 義務ネマデート

          りんご・紅茶・甘いの苦手なんだよね  「サキはいつもそのお茶飲むよね」  「ん?」  「なんて言ったっけ?ギムシナ?」  「ギムネマね」  デートのティータイム中、タイチが唐突に言った。  ここはとある商業施設の喫茶店だ。  映画館やゲームセンター、ファッションやコスメ等の店が乱立するここは、デートの定番スポットだ。  一通り遊んで今は休憩がてらいい雰囲気の喫茶店に入っていた。  デートスポットにこの場所が選ばれてから、事前に念入りに下見して、さり気なく誘導したコースだ。

          三題噺 義務ネマデート

          三題噺 Open gate

          パラレルワールド・チェンジ・デスティニー  魔がさした。という言葉がある。  ふっ、と人の心に悪魔が入り込んだように、その人が絶対に取らないだろう行動を取ってしまうときに使う言葉だ。  浩司の取った行動も、魔がさした……という事なのだろう。  取り返しのつかない魔が。  浩司は私の、私と浩司の間に産まれた息子を殺した。  「そこのお嬢さん。お困りですね」  顔に白い布を被された我が子と二人きりで安置所にいると、唐突に声を掛けられた。  その部屋は、出入り口が一つしか無いし

          三題噺 Open gate