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バンドの同期演奏の方法と必要な機材

最近はライブで同期演奏をするミュージシャンは多くなっています。

「同期演奏」はあらかじめ用意していたキーボード、ピアノ、ギター、効果音などの音をバンドの生演奏と同じタイミングで(観客側やモニター用の)スピーカーから出す方法です。

・キーボードがいないバンドなのに華やかなシンセやピアノが流れている

・ベースがいないバンドなのにベースの音が出ている

・ドラムがいないバンドなのにドラムの音が出てる

・・・・といったバンドを見たことがある人も多いと思います。

こういったバンドは演奏と再生機器から流した音を同じタイミングで鳴らす「同期」という方法を使っています。

同期演奏については「生演奏の良さが無くなってしまう」とネガティブな意見もありますがが、プロのミュージシャンでも同期を使った演奏をしていることも多いですし、アマチュアのミュージシャンにとっても全パートが揃わなくても練習やライブが出来てしまうのはメリットです。

また「ライブが数週間後に迫っているのにメンバーが突然抜けてしまった」とか「インフルエンザを発症してしまった」いう危機的な状態の時にも、同期演奏ができるようにしておくとピンチを切り抜けることができたりします。

さらに、同期を使うと生演奏だけで不可能な世界観を演出も出来たりするので、前衛的な音楽をやっている人や、ヴィジュアル系のミュージシャンなどは好んで同期演奏を場合も多いと思います。

このように同期演奏ができるようにしておくと少人数でもバンドができる、あるいは表現の幅が広がるといったメリットがありますので、同期演奏のやり方を学んでおいて損になることはないと思います。

そこで今回はバンドで同期演奏をする方法と必要な機材について説明をしたいと思います。


◆音源を再生する機材


まず同期演奏をするためには「音源」(キーボード・ピアノやクリック音など)を再生するための機材が必要になります。

「音源を再生する」方法の例を挙げると

① MTR(マルチトラックレコーダー)を使う方法

② パソコン(Windows・MAC)やiPadとオーディオインターフェイスを使う方法

③ スマートフォン(又はMP3・CDプレイヤー)やミキサーを使う方法

などがあります。

以下順番に説明していきます。

① MTR(マルチトラックレコーダー)を使う方法

アマチュアやインディーズのライブで最も使われている方法がMTR(マルチトラックレコーダー)を使う方法です。

MTRはもともと演奏を録音するための機材で昔のミュージシャンはMTRを使ってデモ音源やCD音源を作っていました。

最近はDAW(パソコンを使って録音をするためのアプリケーション)が主流になったこともあり民生用のMTRを販売しているメーカーも激減していますが、今でも「ZOOM」というメーカーが「同期演奏」に便利なMTRを販売し続けていて、MTRを使って同期演奏をしているミュージシャンの多くが「ZOOM」の製品を使っています。

昔から多くのバンドに愛用されているのが「R8」というMTRですが、残念ながらこちらは既に廃盤となっており中古市場はフリマサイトでしか手に入らないという状況です。

現行機種としては「R12」や「L-8」などがありますので、新品で購入をしたい人は現在も販売されているこの2つが選択肢になると思います。


「R8」の後継機種の「R12」はタッチパネルが付いてますが


① 値段が高くなった

② タッチパネルの画面が小さくて物理ボタンが減ったので細かい作業が難しくなった

③ 録音フォーマットが「44.1 kHz」のみとなり「48kHz」での録音が出来なくなった

・・・等、「R8」よりも微妙だな・・・という点がいくつかあります。

タッチパネルの画面が小さいというデメリットについては100円ショップなどで売っているタッチペンを使うことで解消できますが、暗いライブ会場ではタッチペンを使うのはなかなか難しいので、出来るだけ指だけで操作できるように慣れておくしかないです。

一方でタッチパネルはDAWのように波形が表示されてどの部分を演奏しているのかが分かりやすいので、その点ではR12には便利なところもあります。

録音フォーマットが「44.1 kHz」に限られるという点はデメリットにも思えますが、「R12」を同期演奏だけで使う場合には問題はありません。

というのも「44.1 kHz」はCDと同じフォーマットなので音質が悪いということはありませんし、普通の人は「44.1 kHz」と「48kHz」と聞きわけることは不可能です。

仕事で録音をするような場合にはフォーマットを「48kHz」に指定されることが多いですが、仕事で録音をする時にMTRを使う人はほとんどいないと思いますので、あまり気にする必要はないかなと思います。

「R8」や「R12」よりも機能が多くてサイズも大き目な機材が「L-8」です。


「L-8」は

・ デジタルミキサーとしての機能もあるので同期演奏以外にも配信や簡易的なPAで使える

・ 物理ボタンが多いので操作性は良い(タッチパネル式ではない)

・ 録音フォーマットも「48kHz」が選べる

というメリットがあります。

「R12」の仕様が微妙だなと思った人は「L-8」を選択肢に入れても良いと思います。

「L-8」のデメリットを挙げるとすれば

・ 「R8」や「R12」よりも縦長で大きく持ち運びが少し面倒

・ タッチパネルがないためDAWやスマホ世代の人には馴染みにくいかも

・ 値段が少し高め

というあたりです。

MTRを用意したら「ライブで再生したい音(ピアノ・シンセ・ギター・効果音など)」をMTRの中に入れます。

普段からDAWを使っている人であればDAWで作った音源を「WAV」のフォーマットで出力し、MTRとPCをUSBケーブルで繋いだりして、MTRに挿しているSDカードにコピーします。

そして移動させた「音源(ピアノなど)」をMTRのトラックに読み込んで「メインアウト」から再生させます。

「メインアウト」から出したケーブルはPAさんにお願いしてミキサーに繋いでもらい、観客用のスピーカーとモニター用のスピーカー(返し)から出してもらいます。

そして「メインアウト」とは別に「ヘッドホンアウト」の端子からは「クリック」の音を出力するように設定します。

ZOOMのMTRにはもともとクリックが用意されているのでそれを使っても良いですし、DAWなどで自分で作ったものを使っても良いです。

ヘッドホンアウトに繋いだヘッドホン・イヤホンは基本的にドラマーが付けて、ドラマーが「クリック」の音とタイミングが合うようにドラムを叩くことで「同期演奏」ができるようになります。

ドラマーによっては「クリックの音だけでは叩きにくい」「他の人の演奏も聴きながら叩きたい」という人もいるので、その場合は小さめのミキサーを1台用意して、MTRから出力した「クリック」の音と、PAさんから返してもらったモニターの音をミキサーに入れます。

そしてミキサーのヘッドホンアウトから「クリック」の音と「モニター」(返し)の音が一緒に出るようにして、ドラマーがこれを聞きながら叩きます。

ミキサーはドラマーの近くにおいてあげると、ドラマーが自分の好みで「クリック」の音と「モニター」(返し)の音量バランスを調整できます。

小さ目のミキサーを用意する場合は、予算や好みに合わせて選ぶと良いと思いますが、耐久性を重視するのであれば「ヤマハ」や「MACKIE」などが安心感があると思います。


あと他の方法でも共通する話ですがライブ前にセットリストを出す際には、自分達で用意する必要のあるケーブル類をライブハウス側に確認をしておかないと、ライブ当日にケーブルが足りないという事故が発生する可能性があるので注意が必要です。



② パソコン(Windows・MAC)とオーディオインターフェイスを使う方法

MTRが無い場合でも、ノートパソコンやiPadを持っている人であればオーディオインターフェイスを用意することで同期演奏ができるようになります。

MTRの時と同じように、オーディオインターフェイスから「音源」の音と「クリック」の音を出力する必要がありますので、オーディオインターフェイスは最低でも出力が2チャンネル(個)があるものを使う必要があります。

ただ出力が2個しかないと、「音源」と「クリック」がそれぞれモノラルになってしまうため、ドラマーのヘッドホンの片側からしかクリックの音しか出ない、ということになってしまいます。

このような事態を解消するためにモノラルであってもヘッドホンの両方から音が出るようにするためにする端子などもあります。

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とは言っても、できればオーディオインターフェイスは出力が4チャンネル以上あるものが望ましいです。

出力が4チャンネルある場合には例えば

・1チャンネルと2チャンネルはPAに繋いで観客用スピーカーとモニタースピーカーから出してもらう

・3チャンネルと4チャンネルはステレオでクリックを出力してドラマーが聞きながら叩く

ということもできますし、ベーシストがライブ直前に行方不明になったような場合には

・1チャンネルはモノラルでPAに繋いで観客用スピーカーとモニタースピーカーから出してもらう

・2チャンネルはベースの音を出力してダイレクトボックスからPAとベースアンプに入力する

・3チャンネルと4チャンネルはステレオでクリックを出力してドラマーが聞きながら叩く

というようにするとベースがいなくてもベースが弾いているのと同じような演奏が出来たりします。

オーディオインターフェイスは持ち運ぶことを考えるとコンパクトなサイズで耐久性の高いものが良いですし、パソコンのアップデートでドライバが不安定になったりしないようにドライバの安定性が高いものを選ぶべきです。

他ミックス作業をする時と違って、ライブでは細かい音質の差はあまり気にならないので、無理をしてで高額なものを選ぶ必要もないと思います。

同期演奏用におすすめのオーディオインターフェイスをいくつかピックアップします。


ROLAND ( ローランド ) / Rubix24


同期演奏用のオーディオインターフェイスとして比較的コスパが良くて無難なのがRolandの「Rubix24」です


Rolandは昔からキーボードや「ジャズコーラス」というギターアンプなどを作っているメーカーです。

ボロボロになったRolandの機材が現役で使われているのを見かけることも多いですが、Rolandの製品は日本のメーカーということもあって耐久性が高く壊れにくいものが多いです。

「Rubix24」というオーディオインターフェイスも金属製の筐体が使われていて、ぶつけたり落としたりしても壊れにくいですし、他の機材から発生するノイズなどにも強いです。

コンパクトサイズのオーディオインターフェイスは接続したパソコンからUSBケーブルで電源を供給するタイプのものも多いのですが、このタイプはPCから供給される電源が不足することでは動作が不安定になることがあります。

しかし、「Rubix24」はUSB端子が2個付いていて、背面の「POWER SOURCE」スイッチを切り替えることで市販のUSBアダプターから電源を供給できるようになっているので、電流の不足によるトラブルも防止できます。

さらにヘッドホンアウト端子から出力する音声もオーディオインターフェイスの背面の物理スイッチで切り替えることができるようになっているのも便利です。

出力される音も味付けのない素直な音でライブで使う分には全く問題ありません。

「Rubix24」のデメリットを挙げるとすれば、大きさの割にはやや重め(1.2kg)であるという点です。

それから過去にRolandのオーディオインターフェイスを使っていた際に、パソコンのOSのアップデートのタイミングでドライバが不安定になり、「プチプチ」といったノイズが発生しまいメーカーに問い合わせても解決しなくて困ったということがありました。

Rolandはハード(筐体)の信頼性は高いのですが、ドライバなどソフトウェアのほうはちょっと心配だなと思うところがあります。

Rolandの製品に限らずにOSのアップデートでオーディオインターフェイスのドライバが不安定になるということはありますので、ライブの直前の時期にはOSのアップデートを停止しておいたり、新しいソフトウェアを入れたりしないようにしておいたほうが安全だと思います。


STEINBERG ( スタインバーグ ) / UR44C


ドライバの安定性を考えた場合、使っている人が多い機種のほうがメーカーが早く対応してくれる可能性が高く、解決のための情報も得られやすいという傾向があります。


日本国内ではSTEINBERGの「Cubase」というDAWのシェア率が高いこともあり、STEINBERGのオーディオインターフェイスを使っている人が多いです。

そしてSTEINBERGは現在はヤマハの子会社なのでメーカーとしての信頼性もあります。

STEINBERGの製品の中で同期演奏にお勧めなのが「UR44C」です。

「UR44C」を新品で購入すると「Cubase AI」というDAWが付いてくるので「DAWを持っていない」という人でもパソコンがあれば同期演奏ができるようになります。

「UR44C」も電源アダプターから電源を供給できるようになっています。

また「UR44C」はヘッドホン端子も2個あるので、複数のメンバーもクリックを聞く必要が出てきた際にも別途ヘッドホンアンプなどを用意しなくても済むのも便利です。

敢えてデメリットを挙げるとすればこちらも1.5kgとやや重めで筐体が大きいところです。

Native Instruments / KOMPLETE AUDIO 6 MK2

Native Instrumentsの「KOMPLETE AUDIO 6 MK2」も同期演奏で使われることのあるオーディオインターフェイスです。

入出力の端子の数が多い割に価格も安くフリマサイトなどでも中古が安く売られているのでコスパも良いです。

(Native Instrumentsのハード製品を買うと、ソフトウェアのライセンスが大量に付いてくるので、「ライセンスだけもらってハードは転売する」という人によって中古価格が安くなっているように思われます。)

重量も850gと軽く持ち運びも楽です。

こちらもヘッドホン端子も2個付いているので複数人でクリックを聞きたい場合には便利です。

「KOMPLETE AUDIO 6 MK2」を新品で購入するとAbleton Live LiteというDAWが付いてきます。

Ableton Liveは「Live」という名前が付いてるように音を流しながら演奏したりDJ的なプレイをすることが便利なDAWでプロでも同期演奏にAbleton Liveを使っているアーティストは多いです。

「ライブで同期を使いたいとPAの方に話したら、“Liveが良いらしいよ”と教えてもらって使うようになりました。ライブでは同期音源のシーケンサーとして使っていて、やることはMTRとほぼ一緒ですけど、いろいろな意味でLiveは融通が効くんですよね。Liveは全体で1個の楽器のように感じるんです。シーケンスやプラグインがシングル・ウィンドウで表示されて、オーディオをダブル・クリックすれば波形が出る。クリップ・ゲインもすぐいじれるし、オート・フェードを自動的にバックグラウンドでやってくれるのも助かります。直感的だし、音を作ることや鳴らすことに専念させてくれますね。Live 11からコンピングができるようになったので、制作でもガンガン使っています」

サンレコ「感覚ピエロがAbleton Liveを使う!ライブ実用例」 

「KOMPLETE AUDIO 6」デメリットを挙げるとすると電源がバスパワーだけであるという点と、日本ではややシェア率が低いメーカーなので困った時に周りの人に聞きづらいかも知れない、使わなくなった時に高く売りにくい、という点かなと思います。




ZOOM ( ズーム ) / U-44

「できるだけ荷物を小さく軽くしたい」という人にはZOOMの「U-44」がお勧めです。



大きさは約20cm×10cmと非常にコンパクトで重量も310gしかありません。


「U-44」を新品で購入するとAbleton Live Liteの他に、iPhone・iPad用の「Cubasis LE」というDAWも付いてくるので、自分の好みや環境に合わせてDAWを選べるのもメリットです。

出力端子はメインアウト2個(ステレオで1トラック分)とヘッドホンアウトというシンプルな構成ですが、「BALANCE」というツマミを回すことで、ヘッドホンにクリックの音とメインアウトの音を好みのバランスでミックスすることができるようになっています。

「クリックと一緒にオケの音も聞きたい」というドラマーにとっては有り難い仕様です。

電電もDC 5V端子に専用アダプター(AD-17)や市販のUSB 電源アダプター、USB モバイルバッテリーなどを接続することで供給できるようになっています。

「U-44」で注意が必要なのが仕様で「AMD製CPUは動作保証外」となっている点です。

ZOOMの製品は基本的にAMD製CPUを動作保証外としているものが多いです。

最近はAMDのRyzenを使ったパソコンでトラブルが発生するということは少なくはなってきていますが、仮にRyzen搭載PCで不具合が発生してもメーカーが基本的に対応してくれないという点は注意が必要です。

そのため「U-44」の購入を検討している人は、自分のパソコンのCPUがAMD製かインテル製かを確認してから購入するようにしたほうが良いです。


MOTU ( モツ ) / M4 オーディオインターフェイス


音質を重視したい人には、MOTU の「M4」もお勧めです。


他の4アウトのオーディオインターフェイスと比べると価格は少し高めで機能もシンプルですが、5万円以下のオーディオインターフェイスの中ではトップレベルに出音が良いです。

ライブ会場では細かい音質の違いは分かりにくいので出音の品質にあまり拘る必要はなかったりもしますが、自宅でも作曲やミックス作業にも使いたいという場合には出音の良いオーディオインターフェイスのほうが良いです。

ただ、こちらは電源がバスパワーだけなのが少し残念なところです。


③ スマートフォン(MP3・CDプレイヤー)を使う方法

これまで、「MTR」や「オーディオインターフェイス」を使って音源を再生する方法を説明してきましたが「機材を買うお金がない」という人には、手持ちのスマートフォン(又はMP3・CDプレイヤー)などを使うという方法もあります。

同期演奏をするためには、

① スピーカーから出すピアノやキーボードなどの音

② クリックの音

の2種類を出す必要があります。

そして、スマートフォン(MP3・CDプレイヤー)は実は「右」(R)と「左」(L)という2種類の音が出ています。

そこで、DAWの「PAN」を使って

① スピーカーで流すピアノやキーボードなどの音を「右」(R)に振り切ったトラック

② クリックの音を「左」(L)に振り切ったトラック

を用意して、ミックスダウンをすると、

「右」(R)チャンネルからはピアノなどの音源が出る

「左」(L)チャンネルからはクリックの音が出る

というようにすることが可能になります。

その上で、スマートフォン(MP3・CDプレイヤー)にYケーブルを繋いで、

「右」(R)側をPAのミキサーを通じて観客側やモニターのスピーカーから出してもらう

「左」(L)はミキサーなどを通してドラマー用のヘッドホンに繋いでクリックを聞いてもらう

というように接続すれば同期演奏ができるようになります。

大きな音が行き交うライブハウスの中ではスマートフォン(やMP3・CDプレイヤー)から出力される音量ではクリック音が聞こえない場合があるため、その時はYケーブルの「左」(L)側をミキサーやヘッドホンアンプなどに繋いで音量を大きくしてあげる必要があります。

またYケーブルの「左」(L)側から出てくる音声信号はそのままヘッドホンに繋いでも「左」側からしか出てこなくて「右」側からは音が鳴りません。

ドラマーによっては「左耳でクリックを聞いて、右側で他のメンバーの演奏を聴くので、右側からはクリック音が出なくても問題ない」という人もいますが「両耳でクリック音を聞きたい」という人の場合には、「モノラルの信号が両耳から出力されるようにするアダプタ」などを使うと良いです。

スマホを再生機器として使う場合、着信があったりすると音が途切れてしまうので、Wi-Fiやデータ通信をオフにした上で通知音や着信音が鳴らないようにしておく必要があります。

この「スマートフォン(MP3・CDプレイヤー)とミキサーを使う方法」の最大のメリットは、手元にあるスマホなどと小さめのミキサーなどを用意すれば良いのでコスパが良いという点です。

またスマホはバンドメンバー全員が持っているので予めデータを共有しておけば、スマホが壊れた等のトラブルがあった時にも他のメンバーのスマホなどを使うという方法で乗り切ることができること、使う機材が少ないので荷物が少なくて済むことなどもメリットです。

MTRやオーディオインターフェイスを使う予定の場合にも、万が一の事故に備えてスマホに同期用の音源を入れておくと安心だと思います。


◆同期演奏に使うその他の機材など

同期演奏をする上で「音源を出す(鳴らす)機材」以外に必要な機材や、あると便利な機材も紹介しておきます。


◇イヤホン(イヤモニ)・ヘッドホン

クリックを聞く時にイヤホンかヘッドホン必要になります。

演奏をしている時にズレてくると面倒なので、イヤモニ(インイヤーモニター)というモニター用のイヤホンを使うか、側圧の強いヘッドホンを使うかのが無難です。

プロもミュージシャンは高額なイヤモニを使っていたりしますし、楽器屋さんに行くと高額なイヤモニを勧められることもあると思いますが、個人的にはヘッドホンやイヤホンは使う人が「使いやすい」と思うものであれば何でも良いと思っています。

私はSONYの「EX800ST」というイヤモニを使うことが多いです。

「EX800ST」はレコーディングスタジオなどでモニター用に使われるMDR-CD900STに近い音質なので違和感がなく、耳にひっかけるタイプになっているので演奏中に身体を動かしてケーブルが引っ張られても抜けにくいようになっています。

ただ「EX800ST」も人によっては「耳にひっかける部分が違和感がある」「付けるのが面倒」「耳の形によっては外れやすい」という人もいるので、万人にお勧めなイヤモニというものは無くて、自分に合ったものを探す旅を続けている人が多い印象です。

(プロのミュージシャンは自分の耳にあったイヤモニを特注で作る人もいたりします。)

イヤホンではなくヘッドホンを使う人もいます。

ヘッドホンを付けていると、いかにも「同期してます」という印象を与えてしまいますが、敢えて派手な色合いのヘッドホンを付けてサイバー感を出したりと、敢えて演出として使っているバンドもいたりして、個人的にはそれはそれで良いなと思います。

ただ、音量の稼げないヘッドホン(AKG K240など)や開放型のヘッドホンではクリックの音が小さくて聞こえない可能性もあるので注意が必要です。

そのため遮音性の高い密閉型のヘッドホンや、カナル型のイヤホンが好まれる傾向がありますが、敢えて外の音が聞こえやすい開放型のヘッドホンを使うことで、クリック音だけでなく他のメンバーの演奏も聴けるようにしたいという人もいたりするので、やはりイヤモニやヘッドホンは自分にとって使いやすいものを選ぶのが良いと思います。

◇ワイヤレスシステム

クリックや音源をドラマーだけがイヤホン等で聴く場合にはあまり問題がないのですが、ドラマー以外にもクリックなどを聴きたいメンバーがいる場合、イヤホンなどのケーブルが届かないという場合があります。

そのような時にはイヤホンの延長ケーブルを使うという方法もありますが、イヤホンの延長ケーブルは細いので暗いライブ会場では踏まれて断線してしまったり、引っ張られて耳からイヤホンが抜けてしまうというトラブルの可能性もあります。


そのためライブではイヤモニ用のワイヤレスシステム(音声信号を無線で送信する発信器と受信機のセット)を使っている人も多いです。

ただワイヤレスシステムは価格が高いものが多く、複数人分の受信機を用意する場合などには、予算がオーバーしてしまうという場合もあると思います。

もっと安いものが良いという場合には、簡易的で価格の軽いワイヤレスシステムも売っていたりします。

ワイヤレスシステムは便利ですが実際にライブハウスで使ってみると他の電波と干渉して使えないという事故が発生することもあるので、念のためイヤホン用の延長ケーブルも保険として持っていくと安心です。


◇ヘッドホンアンプ

クリックを複数人で聞きたい場合で、ワイヤレスシステムを持っていない場合や、ワイヤレスシステムの受信機の数が足りない場合には、「分岐ケーブル」を使うと複数人でクリックを聞くことができるようになりますが、「分岐ケーブル」を使う場合、音量が下がってしまうとの、聴く人ごとに音量の調整ができないというデメリットがあります。

そのため複数人で同じ音を聞く場合にはヘッドホンアンプがあると便利です。


ヘッドホンアンプは高いものから安いものまで様々ですが、MACKIEが頑丈で安くてコンパクトなので個人的には使い勝手が良いと思っています。


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