BOSS「GT-1」の良い点と悪い点(マルチエフェクター)
BOSSのマルチエフェクター「GT-1」を数年間使った後に手放してしまったのですが、今考えると「GT-1」は非常に使い勝手の良いエフェクターで、手放さなければ良かったなと感じることもあります。
「GT-1」は今でも非常に人気の高い機種で購入を検討している方や、他にもっと使い勝手の良いエフェクターがないかと探している方もいると思いますので、「GT-1」の良い点(おすすめできる点)と、悪いと感じた点について整理したいと思います。
◆BOSS「GT-1」のお薦めできるポイント
◇小さくて軽い
「GT-1」の最大のメリットは「小さくて軽い」という点だと思います。
大きさは305cmx152cmx56mm、重さは約1.3kg程度で、フットスイッチやペダルが付いていることや機能の豊富さも考慮すると非常にコンパクトな機材であると言えると思います。
最近ではHOTONEの「Ampero Mini」にように、より小さくで軽いマルチエフェクターもありますが、「Ampero Mini」はフットスイッチが2つしかなくペダルも付いてないというデメリットがあります。
マルチエフェクターでコンプレッサーなどをオンにするとギターを弾いていない時にハウリングが発生してしまうことがありますが、そのような時には演奏をしていないときだけGT-1でのペダルで音量を下げると解決したりします。
また曲の途中でブレイクを入れた時にギターだけ「ぴーっ」という音が鳴ると格好が悪いので、ブレイクの瞬間にペダルでギターの音量を切ってあげるとブレイクが良い感じになったりします。
このようにペダルがあると何かと便利だったりします。
フットスイッチやペダルは後付けが可能な機種も多いですが、後付けをすると結果的に「大きくて重い」エフェクターボードになってしまうことも多いので「フットスイッチが3つとペダルが付いてて幅30cm以下、約1.3kg」というGT-1のサイズ感と重さは絶妙なバランスではないかと思います。
ちなみに「GT-1」は「ギターのソフトケース(ギグバッグ)のポケットに入るサイズ」と言われることもありますが、ソフトケースにGT-1を入れてシールドや小物(交換用の弦など)を入れようとするとパンパンになるので、別途エフェクターケースやバッグで持ち運ぶほうが良いと思います。
◇電池駆動ができる
私は現在「GT-1000Core」という上位機種を使うことが多いのですが、「GT-1のほうが便利だったな・・・」と感じることが多いのは、電池駆動が可能であるという点です。
マルチエフェクターはアダプターで電源を供給する必要があるタイプが多いですが、アダプターも地味に重量があって荷物になりますし、スタジオでは電源の取り合いに巻き込まれることもあり別途延長コードを用意しておかないと不安になってしまったりと、何かと気を遣うこともあります。
しかし「GT-1」であればエフェクターを取り出してシールドをギターとアンプに繋いですぐに音を出すことができますし、片付けも早くて楽です。
「たかが電源」と感じる人も多いと思いますが、GT-1からGT1000Coreなどに切り替えて「面倒だな・・・」と感じることが多いので、電池で駆動するというのは大きなメリットだったんだなと感じます。
GT-1を電池で駆動させるためには単三電池が4本必要になりますが充電式の電池を使うことで電池代を節約することができます。
◇アンプに繋いだ時の音が良い、JC-120対策として優秀
GT-1000Coreなどの新しい機種と比較すると、ギターアンプに繋いだ時は「GT-1」のほうが「良い感じの音」を作りやすいと感じることが多いです。
「GT-1」のサウンドは「GT-100」という1世代前のフラッグシップモデルのサウンドとほぼ同等と言われていて、実際に「GT-100」と同じような音を出すことができます。
そして「GT-1000」よりも1世代前の「GT-100」や「GT-1」の音のほうが「好き」とか「使いやすい」という人がいます。
「GT-1」はスタジオやライブハウスにあるマーシャルやJC-120(ジャズコーラス)に接続すると比較的簡単に「良い感じ」の音を作れることが多いです。
「GT-1」には「OUTPUT SELECT」(アウトプットセレクト)という機能があっ接続するアンプに合わせて音質を自動で調整してくれるのですが、「アウトプットセレクト」を何個か試すと「これで十分」という感じのサウンドになることが多いです。
そして「GT-1」はJC-120(ジャズコーラス)との相性も良いです。
JC-120(ジャズコーラス)は「音を大きくするだけの機械」「音が固すぎて使いづらい」などと言われることもありますが、GT-1はJC-120の販売元であるRolandが開発したマルチエフェクターということもありGT-1をJC-120に繋ぐと簡単に良い感じの音が出せるようになっています。
◇フットスイッチについて細かい設定が出来る
「GT-1」には「コントロール・アサイン」という機能があってフットスイッチを踏んだ時のエフェクトのオンオフやパラメーターの細かい設定ができます。
例えばコントロールスイッチ1(CTL1)を踏んだ時に
・アンプシミュレーターのゲインを20上げる
・ブースター(歪みペダル)をオンにする
・ディレイをオンにする
・コーラスはオフにする
・・・というようにスイッチ1つに様々な設定ができます。
GT-1のフットスイッチは3つだけですが「コントロール・アサイン」を使いこなせるようになれば「フットスイッチが足りなくて困る」という場面はそうそう無いと思います。
◇外付けでフットスイッチを増やすことが出来る
前記のとおり「コントロール・アサイン」を使えばフットスイッチは3つだけでも十分であることが多いですが、フットスイッチが足りない場合には後付けでフットスイッチを増設することができます。
フットスイッチについては「BOSS「GT-1」「GT-1000 core」に利用できるフットスイッチ」という記事も参考にしていただければです。
◇価格が安い
昔のBOSSのマルチエフェクターは安くても3万円くらいしましたが、GT-1はそれよりも安く、コンパクトエフェクター1個か2個分くらいのお金があれば買えるので学生でも手が届きやすい価格になっています。
しかも前記のようにGT-1は昔のフラッグシップモデルのGT-100とほぼ同じサウンドクオリティなので安いと言っても音は悪くありません。
そのためGT-1が発売開始された当初は価格破壊的なインパクトもあり売れすぎて在庫切れが続出しているという状況だったのも納得できるところです。
価格が安いということは故障などのリスクをあまり気にすることなく気軽に持ち運べるというのもメリットです。
インフレの影響もあってかGT-1は少しずつ値上がりされていますが、円安の影響で海外メーカーの機材も値上がりしているので、相対的にGT-1のコストパフォーマンスが良いという状況は続いていると思います。
ただ最近になってZOOMが「G2 FOUR」と「G2X FOUR」が大幅に値下げしたんですよね。
正直なところ「G2 FOUR」と「G2X FOUR」のほうが販売時期が新しいということもありラインアウトの音は「G2 FOUR」と「G2X FOUR」のほうが良いと思います。
機能の豊富さや同時に使用できるエフェクト数などではGT-1のほうが上回っている点もあるので、今からGT-1を買おうとする場合にはG2X FOURと悩みそうだな・・・とも思います。
◇ネットから大量のプリセットを入手できる
「GT-1」に限らずBOSSのマルチエフェクターは「BOSS TONE CENTRAL」というアプリをパソコンにインストールすることで大量のプリセットを入手することができるようになっています。
「GT-1」には最初からプリセットが大量に入っていますがネットからも大量のプリセットを入手できるので「音作りが面倒だ」という人は大量のプリセットの中から好きな音を選んで微調整すればすぐに「使える音」を用意することができます。
◇使い方について分かりやすく説明された本が売っている
「GT-1」は2016年頃に販売開始されてから多くのギタリストが使っているためネットやYoutubeで「GT-1 使い方」とか「GT-1 音作り」などと検索すれば参考情報が大量に出てきます。
それだけでなくGT-1については「BOSS GT-1の教科書」という本も販売されていて、細かい点も含めて使い方が分かりやすく説明されています。
マルチエフェクターを初めて使う人であっても本を読みながら使い方を覚えれば挫折することなく使えると思います。
◇足がぶつかっても痛くない
些細なことのようですがGT-1の筐体の角の部分は丸く加工されていて足がぶつかったりしても痛くありませんし、ギグバッグなどに入れても角がポケットを突き破る心配もありません。
昔のマルチエフェクターは角が尖っていたため、自宅で靴下しか履いていない状態で角に小指をぶつけて悶絶する・・・というような事故もあったりしました。
こういった細かい点も配慮されているのも嬉しいポイントだと思います。
◇日本のメーカーという安心感
機材を持っていると「壊れた時にどうなるのか」という問題にぶつかることいがあります。
海外のマニアックなメーカーの機材の場合には壊れても修理対応をしてもらえなかったり、修理を依頼するのに英語でやり取りをしなければならなかったり、メーカー自体が廃業していたり・・・といったリスクがあります。
しかしGT-1を販売しているのはRolandという日本の老舗のメーカーなので壊れた時にも修理依頼をしやすい、というのはメリットがあります。
◆BOSS「GT-1」悪いところ
◇ヘッドホンアウト、ラインアウトの音は古い
先ほどGT-1は「アンプに繋いだ時の音が良い」という話をしましたが、ヘッドホンアウト、ラインアウトは1世代前のサウンドという印象を否めず古い印象を受けてしまいます。
私がGT-1000Coreに乗り換えた最大の要因はこれでした。
自宅でギターの練習をする時は「オケの音」をGT-1に流し込み、GT-1のヘッドホンアウトから「オケの音」と「自分が弾くギターの音」を一緒に聞くという方法で練習をしていたのですが、最近のアンプシミュレーターに比べるとGT-1の音は分離感・解像度が低く、オケと混ぜて弾くと「自分のギターの音がよく聞こえない」ということが多かったです。
昔であれば不満はなかったと思うのですが、最近では無料のプラグインのアンプシミュレーターもクオリティが高いものが多いので、他のアンプシミュレーターを使った後に「GT-1」のヘッドホンアウト・ラインアウトの音を聞くと「古い音だな・・・」と感じてしまいます。
他方でGT-1000Coreでオケとギターの音をミックスしながら聞くと、自分のギターの音もしっかりと聞き取ることができることが多く、練習がはかどりやすいです。
そのため自宅で練習する時はGT-1000Coreを使うことが増えていき、GT-1の使用頻度が減ってしまったため結局手放してしまいました。
しかし前記のとおりスタジオなどのアンプに繋ぐ場合にはGT-1のほうが比較的簡単に「良い感じ」の音を出しやすかったですし、GT-1には電池駆動できるというメリットがあるので
自宅の練習やレコーディングをするとき ⇒ GT-1000Core
スタジオで練習するとき ⇒ GT-1
という使い分けにしたほうが便利だったかな、とも思っています。
実際にKemperやHelixを持っている人でも軽いセッションの時は「重くて大きい機材を持ち運ぶのが面倒だからGT-1だけ持ってきた」という人もいたりするんですよね。
ちなみに前記のとおり最近になってZOOMが「G2 FOUR」と「G2X FOUR」が大幅に値下げしました。
ヘッドホンアウトの音はGT-1よりも新しい「G2 FOUR」と「G2X FOUR」のほうが良いので自宅での練習を重視する人はZOOMのマルチエフェクターを選択肢に入れても良いかなと思います。
また同じBOSS製品であればKATANAシリーズもGT-1より音が良い(解像度が高くて輪郭がはっきりしている)と感じます。
◇古いモデルであること
GT-1が販売開始されたのは2016年頃なので販売開始されてからもう8年くらい経っているんですよね。
GT-1の後継機種が出てくるかどうかは分かりませんが
GT-1を買った瞬間に後継機種が発表された・・・
というような事故が発生する可能性が無い訳ではありません。
私も「GT-1の後継機種が販売されら買いたい」とずっと思っていたのですが、GT-1000Coreというコンパクトサイズの上位機種があるため、もしかしたらGT-1の後継機種は今後も発売されることは無いのかも知れないと思い、待ちきれずにGT-1000Coreを買うことにしました。
◇センドリターン端子がない
GT-1にはセンドリターン端子が付いていません。
GT-1と同じくらいの価格帯のマルチエフェクターにはセンドリターン端子が無いのが普通なのでデメリットと言えるかは微妙なところですが、センドリターン端子がないということはアンプシミュレーターだけ別の機種のエフェクターに置き換える、みたいなことができないことになります。
最近ではIK Multimediaの「TONEX One」ように小型で高性能なアンプシミュレーターも出てきているのでGT-1にセンドリターン端子が付いたら、「TONEX One」のような小型のアンプシミュレーターと組み合わせることでコンパクトで強力なボードを作れていたかも知れません。
センドリターン端子があることを重視する人で、コンパクトなサイズの機種を探している場合には前記のGT-1000CoreやBOSS「MS-3」(Multi Effects Switcher /マルチエフェクター スイッチャー)などが選択肢になってくるかなと思います。
◇サブアウトがない
これも価格が安いので仕方ないことですがGT-1には「サブアウト」の機能がありません。
サブアウトがあるとライブの時に1系統はアンプに繋ぎ、もう1系統はPAに送って観客席側のメインスピーカーから出してもらうということができたりします。
GT-1はそのような機能がないので普通どおりに出力端子からアンプに繋ぎ、アンプの出音をマイクで拾ってもらってPAに送るという形になります。
◇アンプシミュレーターを2台並列して音作りすることができない
GT-1000などの上位機種ではエフェクトのルーティング画面でアンプシミュレーターを2台並列に通して音作りをすることができたりします。
アンプシミュレーターを2台使うことで「もの凄く歪んでいるけれどもクリーントーンの芯が残ったような音色」なども作ることが出来たりして音作りの幅が広がります。
そのような複雑な音作りをしたい場合にはGT-1は物足りないかも知れません。
◆まとめ
以上、「GT-1」の良い点(おすすめできる点)と、イマイチと感じた点についての説明でした。
購入を検討されている方のために敢えてGT-1のデメリットも挙げましたが、正直なところ「GT-1」を手放した後に「売らなければ良かったな・・・」と感じています。
やはり
・小さいのにフットスイッチが付いている
・JC-120で簡単にまともな音が出せる
・電池で駆動するので気軽に持ち運べる
というのは大きなメリットだったと思います。
バッグにGT-1とシールドを2本をポンと入れてスタジオにあるジャズコーラスに繋いで気軽にセッションできる、というは楽だったな・・・と思います。
他方で最近は各社から魅力のあるマルチエフェクターが多数販売されいますのでGT-1の購入を検討されている方は他のマルチエフェクターの機能などとも見比べながら決めるのが良いように思います。
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