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音楽練習・ライブの録音におすすめのレコーダー

スタジオ練習をする際に演奏を録音することで、客観的にミスやタイミングのズレなどを確認することができるようになるため、演奏スキルの向上に役立てることができます。

タイム感やミュートの正確性などの点で演奏スキルが高い人は、レコーディングなども含め「自分の演奏を録音して聞く」という経験を繰り返していることが多いです。

気軽に自分の演奏を録音できるレコーダーが手元にあるかないかで、演奏技術に差が出てくる場合があります。

また自分が出演するライブを撮影することで、後から何度でもその瞬間を楽しむことができるだけでなく、バンドの進化・成長を確認する手段としても役立ちます。

そのため、スマホやハンディカメラで撮影しているミュージシャンも多いと思いますが、スマホやハンディカメラに内蔵されているマイクで録音すると、音が割れてしまったり、歪んだり、自動で音量補正がかかってしまい、ライブ会場の実際のサウンドとかけ離れたものになってしまうこともあります。

そのような時にも気軽にライブ会場に持ち込めるレコーダーがあると便利です。

多少手間はかかりますが、スマホ・ハンディカメラで録音した映像と、音声録音用のレコーダーで録音した音声を、映像編集ソフトで組み合わせることでよりクオリティの高い動画を作ることもできます。

そこで、音楽練習・ライブの録音におすすめのレコーダーを選ぶ時のポイントと、おすすめのレコーダーを紹介したいと思います。



◆レコーダーを選ぶ時のポイント


◇サンプリングレートとビット深度

レコーダーの仕様を見ると「44.1kHz、24bit」といった表記があります。

「kHz」は「サンプリングレート」で、(ざっくり言うと)「1秒間に音を分割する数値」(音を横に分割する数値)です。

CDの音質が「44.1kHz」なので基本的には44.1kHz以上であれば音質的に問題がないことが多いですが、仕事などで録音をする場合には48kHz以上を指定されることも多いです。

「bit」は「ビット深度」で、(ざっくり言うと)「音量を分割する数値」(音を縦に分割する数値)です。

こちらもCDの音質が「16bit」なので、16bit以上であれば大丈夫・・・と言いたいところなのですが、ビット深度は録音した後にDAW等のソフトで編集をすると音質が悪くなる場合があるので、後からDAW等で編集をする予定がある場合には数値が大きいほうが無難です。

ビット深度を「32bitフロート」(32bit Float)で録音すると、(理論的には)DAW等で音量を調整しても音質が劣化することはなく、しかも録音する時のゲイン(入力レベル)調整も基本的には不要になります。

↓はZOOM ( ズーム )  の説明書の図が分かりやすいと思います。

ZOOM H4essential オペレーションマニュアル

最近ではZOOM社の製品のように「32bitフロート」(32bit Float)に対応することでゲイン(入力レベル)調整をすることなくすぐに録音できることを売りにしたレコーダーも出てきています。

録音する度にゲイン調整するのは面倒ですし、ゲイン調整を失敗すると「プチッ」というノイズが発生してしまい、せっかくの録音物が台無しになっってしまうので「32bitフロート」に対応したレコーダーは非常に魅力的です。

ただし、「サンプリングレート」や「ビット深度」の数値が大きくなるにつれて、ファイルのサイズも大きくなっていきます。

前記の「44.1kHz、24bit」などは「WAV」(ワブ、ウェイブ)という形式で録音する場合の話ですが、ファイルサイズを少なくしたいという場合には「MP3」という形式で録音ができるレコーダーのほうが便利な場合もあります。

例えば「スタジオ練習を録音したものをすぐにメンバー間でデータ共有したい」という場合、「WAV」で録音したファイルサイズの大きいデータを送るとメンバーから嫌がられることがあります。(スマホのパケット代やダウンロードにかかる時間などの問題で)

DAW等で編集をする予定がない場合には、ゲイン調整をちゃんとしていれば「MP3」の形式で録音しても音質は十分、というケースも多いです。


整理をすると以下のようになります。

・DAW等のソフトで後で編集をする予定がある
 →「WAV」の24bitや32bit Floatで録音できるレコーダーがおすすめ

・ゲイン(入力レベル)の調整が面倒・苦手
 →「WAV」32bit Floatで録音できるレコーダーが楽

・DAW等で編集はしない、ファイルサイズは軽いほうが良い
 →「MP3」の形式で録音可能なものがおすすめ


◇外部マイクを接続するための端子の有無・形状

多くのPCMレコーダーにはマイクが内蔵されていますが、音量が大きいバンドやライブの演奏の場合には、内蔵マイクでは音が歪んでしまったり周波数バランスが崩れてしまうことがあります。

またギターアンプやドラムの近くにマイクを置いて録音する場合にも、音圧が強すぎて内蔵マイクでは上手く録音できないことがあります。

このような場合、レコーダーに「外部マイクを接続するための端子」が付いていると、高い音圧にも耐えられるマイクを接続しながら録音することが出来るので便利です。

マイクは基本的に「XLR(キャノン)」と呼ばれる端子の付いたケーブルで繋ぐものが多いため、XLR(キャノン)に対応した端子が付いているレコーダーがあると便利です。

スタジオやライブハウスには「XLRケーブル」とSHUREの「SM58」「SM57」といった大音量の録音に適したマイクが置いてあることが多いです。

そのためケーブルとマイクを借りることが出来る環境であれば「レコーダーだけを持って行き、ケーブルとマイクはスタジオで借りる」という方法をとると、少ない荷物でも大音量の録音が可能になります。

レコーダーによってはXLR(キャノン)に対応した端子が付いておらず、「ミニプラグ」(イヤホンの端子と同じ大きさ)用の端子しか付いていない機種もあります。

ミニプラグの端子しか付いていない場合には「XLRとミニプラグ」を変換するケーブルを使うことで、XLR端子の付いたマイクをレコーダーに接続することができます。

このような変換ケーブルやスタジオ・ライブハウスには置いていないことが多いので自分で用意する必要があります。


◇ファンタム電源・プラグインパワーの有無

コンデンサーマイクなどファンタム電源が必要な機器をレコーダー接続する予定がある場合には、ファンタム電源を供給できる機能のあるレコーダーを用意する必要があります。

またレコーダーによってはステレオミニプラグ(3.5mm)から「プラグインパワー」という電源を供給することで特定のプラグインパワーマイクを使える機種もあります。

なお、ファンタム電源とプラグインパワーは全く規格で、ファンタム電源対応のレコーダーでプラグインパワーマイクを使うことはできませんし、プラグインパワー対応のレコーダーでファンタム電源が必要なマイクを使用することもできませんので注意が必要です。

◇録音できるトラック数

ハンディタイプのレコーダーはステレオ1トラック分(LチャンネルとRチャンネルが各1トラック)の録音ができるものが多いですが、4トラック以上の録音が可能なレコーダーもあります。

「4トラック録音可能」と書いてある場合にも、ステレオ1トラックを「2トラック」と数えて表記していることが多いので注意が必要です。

個人的には3トラック以上の録音が必要な場合には、ハンディタイプのレコーダーよりもMTR(マルチトラックレコーダー)を使うほうが便利だと思います。


◇スマートフォンからの操作の可否、Bluetooth機能の有無

最近のレコーダーはスマートフォンから無線で「録音、停止、入力レベル調整」などの操作できるものもあります。

スタジオやライブハウスでは「スマホで遠隔操作できる」という機能は非常に便利だったりします。

スタジオ練習で録音する時は、特定の楽器の音が大きくならないようにドラム・アンプ・スピーカーなどから一定の距離を置いた場所や、マイクスタンドの上にレコーダーを設置することが多いですが、「演奏を始めるたびに楽器を置いて、レコーダーのところに行って、録音ボタンを押して、演奏が終わったら、またレコーダーのところに行って・・・」という作業を繰り返すのは苦痛です。

またレコーダーが離れた場所や高い位置にあると「録音」の状態になっているかの確認が難しいため「録音ボタンを押したつもりがスタンバイの状態になっていて録れていなかった・・・」みたいな事故も良く起こります。

こんな時にレコーダーを手元のスマホで操作できると、わざわざ録音の度にレコーダーのある場所に足を運ぶ必要がありませんし、手元のスマホで録音の状況や入力音量がピークを超えていないかといった状況を確認しながら演奏ができるので事故が起きにくくストレスがありません。

ライブの時にも観客席側やPAミキサーの近くにレコーダーを置いて、ステージの上からスマホで録音や停止の操作ができるのも便利です。


◇外部スピーカーの接続の可否

ハンディタイプのレコーダーには録音したデータを確認するためのスピーカーが内蔵されていることが多いですが、正直なところ内蔵のスピーカーは音質が悪かったり音量が小さい機種が多く、録音したデータを確認しようとしても現場で「上手く録れたか分からない・・・」という状況になることも多いです。

そんな時にはイヤホンで確認をすれば良いのですが、スタジオ練習の合間にメンバー全員で録音した演奏を聴きたいというような場合や、練習が終わった後に自動車で確認したいという場合には、イヤホンでは不便です。

そんな時にBluetoothで外部スピーカーに接続できる機能があると、Bluetoothスピーカーや自動車のスピーカーで大きめの音量で演奏をチェックできるので便利だったりします。

なおレコーダーにBluetooth機能がない場合には、ミニプラグをPAミキサーの端子用に変換するケーブルを使ってスタジオのPAミキサーに接続し、PAスピーカーから音を出して確認をする、という方法もあります。


◇バッテリー駆動時間

最近のレコーダーは性能が高くなっている反面で、バッテリーの駆動時間が短いものも増えてきています。

自分の経験では製品の仕様に書かれている「駆動時間」よりも実際の駆動時間(バッテリーが切れるまでの時間)のほうが短いというケースも多いので、多少の余裕を持たせた上で駆動時間がご自身の用途に合っているかを確認したほうが安全だと思います。


◇大きさ・重さ

「気軽にスタジオなどに持ち込んで録音する」ということを考えた場合、大きさ・重さも重要なポイントになってきます。

機能・端子が多くなるほど大きく重くなり、機能・端子が少ないほうが小さく軽くなるという傾向がありますので、自分が求める機能と持ち運びの利便性を比較して、ご自身にとって丁度よいサイズ・重さのものを選んだほうが後悔は少ないと思います。


◇耐久性

耐久性は実際に使ってみないことも多いですがRolandのような日本のメーカーの製品は壊れにくい製品が多く、壊れたとしても国内の会社に送る形で修理してもらえるというケースが多いです。

またレコーダーの各ボタンは「カチッ」という音が鳴らないように「ゴムのような柔らかい素材」で作られている場合がありますが、モノによっては「ゴムのような部品」が経年劣化で加水分解してきたり、ベタベタしてきたりすることもあります。

事前に通販サイトのレビューなどに目を通して、部品が劣化しやすいという情報がないか確認しておいたほうが安全かなと思います。


◇別売りオプション(風防など)の有無、数

レコーダーには別売りのオプションで専用のウィンドスクリーン(風防)、ケース、スタンドなどが用意されていることも多いです。

特に対応したウィンドスクリーンが無いと屋外で録音した時に「ゴォッ」という風切音が入ってしまうことがあるのでで、屋外で内蔵マイクを使う予定がある場合にはオプションのウィンドスクリーン(風防)が用意されているか確認しておいたほうが良いです。

なお、内蔵マイクではなく外部マイクを使う場合には外部マイクに対応した風防があれば問題はないです。

例えば前記のSHUREの「SM58」の場合には最初から風防が付いているので、それで風切音を防止できたりします。

SHUREの「SM57」も一応グリルの中にスポンジは入っていますが、楽器録音用のマイクなので風切音には少し弱いです。

そのためSHUREの「SM57」には専用のウインドスクリーンが用意されていたり、他社からも風防が販売されていたりします。

このように、

・屋外で録音する予定があるか

・内蔵マイクを使うか、外部マイクを使うか

を踏まえた上で対応するオプション製品があるか事前に調べておくと安心だと思います。


◇使い勝手の良さ

ハンディタイプのレコーダーは正直なところ慣れるまで操作方法が分かりにくい機種も多いです。

小さいサイズに多くの機能を搭載しようとすると、どうしても使い勝手が悪くなる傾向があるので仕方ないことではありますが、「ぱっと」見て使い方が分かるようなボタンの配置になっているかも1つのポイントだったりします。

使い勝手については「どんぐりの背比べ」的な側面もあるので、結局は説明書を読み込んで慣れるしかないということも多いですが、前記のようにゲイン(入力レベル)調整は初心者にとっては失敗しやすいポイントなので、ゲイン調整が不要な機種や、自動でゲイン調整をしてくれる機能のある機種のほうが便利だと感じる人は多いと思います。


◇パソコン・Mac・スマホなどへのファイル転送の方法

レコーダーで録音した音源は、パソコン・Mac・スマホなどに転送するケースが多いと思います。

古いレコーダーはSDカードを取り出して、パソコンなどに挿して・・・という面倒な作業が必要なものもあったりしますし、今時はSDカードを差し込む端子が付いていないパソコンも多いです。

最近のレコーダーはUSBケーブルでパソコン等と接続してデータ転送できるものも多いですし、無線でデータを転送できるものもあります。

中古で古い機種を買うような場合には、お手元の機材にデータを転送する手段があるか事前に仕様を確認をしておいたほうが良いと思います。




◆おすすめのレコーダー


◇ZOOM ( ズーム ) / H4essentialなど


ZOOMはハンディレコーダーやマルチトラックレコーダーなど、数多くの種類のレコーダーを販売しており、コストパフォーマンスも優れた機種が多いです。

ZOOMのレコーダーの中で、比較的機能が充実しておりコスパが良い機種が「H4essential」です。

「H4essential」のビット深度は「32-bit Float」なので、ゲイン(入力レベル)の調整をすることなくすぐに録音することができ、レコーダー内部でクリップが発生することもないのがメリットです。

内蔵マイクで録音できるだけでなく、ファンタム電源対応のXLR(キャノン)端子が2個、 プラグインパワー対応のMIC/LINE IN端子もあり、様々な環境や音量に合わせてマイクを選んで録音することが可能です。

説明書の仕様では「最大同時録音トラック数」は「6」となっていますが、内蔵マイクによるステレオトラックを含んだ数なので、基本的には内蔵マイクか外部マイクでの2トラック(ストレオ1トラック)で録音するという運用をするケースが多いと思います。

MTRのような使い方をしたい場合には後述の「R20」「LiveTrak L-8」などの専用機のほうが良いと思います。

オプションの専⽤無線アダプター(BTA-1 など)を接続すると「H4essential
Control」というアプリを利用することでレコーダーを操作できるようですが、現時点ではiPhoneのアプリしかなく、今後Androidに対応する予定があるのかは不明です。

電池を使用した場合の駆動時間は仕様によると

・2トラック(内蔵XYマイク)録音
 アルカリ乾電池:約9時間

・4トラック(内蔵XYマイク、INPUT 1/2)録音、ファンタム電源OFF
 アルカリ乾電池:約2.5時間

となっていますが、ファンタム電源を使った場合にはこれよりも短くなると思います。

「H4essential」のデメリットを挙げるとすれば以下のとおりかなと思います。

MP3で録音することができないためファイルサイズが大きくなること

・スマホによる遠隔操作は現時点ではAndroidには対応しておらず別売の専⽤無線アダプターを購入する必要がある

・バッテリー駆動時間がやや短め

あとZOOMの以前のレコーダーにはボタン部分が経年劣化によりベタベタしてくる機種もありましたが、今回の「essential」シリーズはそうならないことを願いたいところです。

上記のような多少のデメリットを踏まえた上でも、「H4essential」ではビット深度を「32-bit Float」に固定することで、ゲイン(入力レベル)の調整を不要とし、レコーダー内部でクリップが発生する事故も防ぐことができるというのは、かなり大きなメリットで魅力的な製品だと思います。

あまり難しいことを考えずに録音したいという人にはおすすめです。


「外部マイクは使わないので安い機種が良い」という人は「H1essential」が選択肢になってくると思います。

逆に「内蔵マイクは使わない、外部マイクしか使わない」という人は「H1 XLR」が選択肢に入ってくると思います。

「トラック数が多いフラッグシップモデルが良い」という人には「H6essential」という上位モデルもありますが、個人的には複数トラックの録音をする予定があるのであれば、筐体が大きくなってしまいますが 「R20」「LiveTrak L-8」などのほうが汎用性があって使い勝手も良いかなと思います。

「LiveTrak L-8」は時期にもよりますが「H6essential」とあまり価格差がない時もあります。


またZOOM社の製品は別売りオプションが充実しており価格も良心的なものが多いのも嬉しいポイントです。


WSU-1 ウィンドスクリーン

ACアダプター AD-17A

TPS-5 三脚

HRM-7 マイクスタンドなどに取り付けるやつ


LMF-2 ラベリアマイク(胸元に装着して声を録音できる)

ダイナミックマイク ZDM-1

ZPC-1 マッチドペアのペンシル型コンデンサーマイク



◇ROLAND ( ローランド ) / R-07


個人的にスタジオなどに持って行くことが多いPCMレコーダーがROLAND ( ローランド ) の「R-07」です。

「R-07」のメリットは以下のとおりです。

・Androidを含めスマホで遠隔操作できる(別売りの部品は不要)

・Bluetoothで外部スピーカーに接続できる

・過酷な環境でも録音してくれることが多い

・MP3を含めて様々なファイルサイズを選んで録音できる


特に「Androidを含めスマホで遠隔操作できる」という点は便利です。

「R-07」をスマホで遠隔操作するためには「R-07 Remote」というアプリを使います。

「R-07 Remote」の使い勝手は特別良いという訳ではありませんが、AndroidでもiPhoneでもレコーダーを簡単に遠隔操作できるので便利です。

しかも遠隔操作機能を使うために別売りのオプションを購入する必要がありません。


また「R-07」は内蔵マイクの部分を含め、飛び出した部分がない「四角い」形をしているので、何かに引っかけたりぶつけたりして壊すという事故も置きにくく、あまり気を使わずにエフェクターボードなどにポンと入れて持ち運ぶことができます。

また野外ライブなど炎天下といった過酷な環境でも「落ちる」ことなく録音できることが多いです。

35度近い日に、日影の無い炎天下で、アツアツのパイプ椅子の上に「R-07」をポンと置いて2時間近く録音をしましたが「落ちる」ことなくちゃんと録音できていました。

ちなみに「R-07」の近くで撮影をしていたスマホやデジタルカメラは熱で「落ちて」しまい全滅でした。

また「R-07」で録音をしていて電池が途中で切れてしまったという経験もないため駆動時間も長いほうだと思います。
(仕様ではアルカリ電池使用時で連続録音15時間となっています。)

そういった点で「R-07で録音できなければ他の機材でも無理だろう」という信頼感のようなものがあります。


その他、「R-07」はWAV形式だけでなくMP3でも録音できます。

DAWで編集する予定がある場合にはWAVで録音をし、メンバーにすぐに送信するためにファイルサイズを抑えて録音する時はMP3で録音してそのまま送る、というように、時々の事情に合わせて形式やファイルサイズを使い分けることができます。


「R-07」のデメリットを挙げるとすれば以下のとおりです。

・内蔵マイクが普通(悪くもないが良くもないという印象)

キャノン端子がなくファンタム電源にも対応していない

32-bit Floatに対応していないのでゲイン調整に失敗すると事故る

・ボタンが誤作動することがある


「R-07」の内蔵マイクは悪いという訳ではありませんが「普通」という印象です。

大音量の練習やライブを録音する時にはSM57などの音圧耐性の高いマイクを使ったほうがバランス良く録れることが多いです。

SM57がない場合には、多くのスタジオに常備されているSM58を借りる形でも良いと思います。

「R-07」にはミニプラグ端子しかなく、XLR(キャノン)端子が付いていないので変換ケーブルを用意する必要があります。

また「R-07」はZOOMのレコーダーと異なり32-bit Floatに対応していないので、録音前にゲイン調整をする必要がありますし、ゲイン調整に失敗してクリップさせてしまうと「プチッ」というノイズが入ります。

「R-07」には一応、ゲインを自動で調整してくれる「リハーサル機能」があるのですが、ゲイン調整をするまで時間がかるので、私は自分の指で「INPUT」のボタンを上下にポチポチ押して調整しています。

ただ私の持っている製品の個体の問題なのかも知れませんが、「INPUT」のボタンをポチポチ押しているとボタンが引っ掛かってしまい、「ボタンをずっと押した状態」になってしまうことがあります。


「R-07」には専用のウィンドスクリーンも用意されていますので、内蔵マイクを使って屋外で録音する予定がある場合には、買っておくと安心だと思います。





◇TASCAM ( タスカム ) / Portacapture X6 

TASCAM ( タスカム )というメーカーに聴きなじみの無い方もいるかも知れませんが、TASCAMはもともとMTR(マルチトラックレコーダー)などの業務用機器で有名なメーカーです。

昔のバンドマンはTASCAMのカセットテープ用のMTRでデモテープを作ることも多かったです。

このように歴史のあるTASCAMですが現在でもハンディタイプのレコーダーを含め、様々な録音機器を販売しています。

その中でもスタジオ・ライブ録音用としてバランスが良い機種が「Portacapture X6」です。

価格は若干高めですが前記のZOOMとRolandのレコーダーの良い部分を両方兼ね備えたような仕様になっています。

ビット深度は32-bit floatに対応しているだけでなく、MP3を含め様々なフォーマットに対応しています。

そのため32-bit floatを選択してゲイン調整や音割れを気にすることなく録音することもできますし、MP3を選択してファイルサイズを抑えながらの録音も可能です。

入力端子もファンタム電源に対応したXLR(キャノン)端子と、 プラグインパワー対応のミニプラグ端子が用意されています。

別売の「AK-BT1」というBluetoothアダプターを装備することでiPad、iPhone、Android用の「Portacapture Control」というアプリを使ってレコーダーを遠隔操作することもできます

「Portacapture X6」のデメリットを挙げるとすれば価格の高さと重さだと思います。

「Portacapture X6」は前記のZOOMとRolandのレコーダーの良い部分を両取りしたような機能を持っている反面、価格は高めになっています。

また電池を入れた状態で比較すると、ZOOM「H4essential」が243 g、ROLAND 「R-07」が150g、TASCAM 「Portacapture X6」が365gなので、「Portacapture X6」は重いほうの部類に入ると思います。

上位機種として入力端子などの機能が充実した「Portacapture X8」という機種もありますが、こちらはより価格も高く、電池を含めた重さは472gとなっています。

コスパの良い機種としては「DR-40X」がありますが、こちらは32-bit floatに対応しておらず、スマホによる遠隔操作にも対応していないようなので、同価格帯のZOOM「H4essential」やROLAND 「R-07」と比較してしまうと少し物足りないと感じる人もいると思います。




◆より良い音質で録音するために

性能の高いレコーダーを準備しても録音の方法が良くないと、良い音質で録音することができません。

そこで最後にレコーダーを使った録音の基本的なコツについても説明をしておきたいと思います。


◇レコーダーの設置場所

録音をする時に「どこに」レコーダーを置くかによって音が全然変わってきます。

練習用スタジオの場合

ドラムの近くに置いてしまうとドラムの音圧で他の楽器の音が聞こえづらくなってしまいますし、エネルギーの大きいベースアンプの延長上に置いてしまうと低音成分の多いサウンドになってしまいます。

他方で練習用スタジオではボーカルはモニタースピーカーの延長線上でないと音量が小さいことも多いので、モニタースピーカーの延長線上にレコーダーを置くことでバランスが良くなることもあります。

またスタジオやライブハウスなど「壁」がある環境では、音が反射することによって低音成分の強い場所と弱い場所が「まだら模様」のように点在しています。

そのため

・ドラムからある程度離れた場所に置く

・ベースアンプの近くやアンプの延長線上には置かない

ということを意識した上で、全体で演奏をつつ、身動きの取りやすいボーカリストに動きながら「音がバランス良く聞こえるポイント」を探してもらい、そのポイントにレコーダーを置くと良いと思います。

ライブハウスの場合

ライブハウスの場合には、ハコの形にもよりますが基本的にPAさんが座っているミキサーの付近が音のバランスが良いという場合が多いです。

というのもPAさんは自分の座っている位置で音を聞きながら音のバランスを調整しているからです。

そのためPAさんにお願いをしてPAミキサーの近くにレコーダーを置かせてもらえるようであれば、そこに置くのが良いと思います。

(実際にライブハウスではPAミキサーの前にレコーダーがずらっと並んでいる光景を目にすることも良くあります。)

PAさんの近くにレコーダーを置けない場合には客席側の後方にスタンドを立てて、ある程度高い位置から録音をすると良い感じのサウンドになることが多いです。

客席の前の方はアンプやPAスピーカーとの距離が近すぎて楽器ごとのバランスが取れていないことが多いですし、レコーダーやスタンドに観客がぶつかってくることもあります。

観客が沢山入ってしまうと観客の身体や服が音を吸収してしまうため人がいる位置と同じ高さにレコーダーを置くと「こもった」感じのサウンドになってしまうことがあります。

そのため客席側の後方にスタンドを立てて高い位置から録音すると良いケースが多いです。


逆相に注意

外部マイクを2本以上使って録音する時に注意が必要なのが位相の問題です。

ここでは位相の細かい理屈は省略したいと思いますが、1本のマイクを音が向かってくる方に向けて録音し、もう1本のマイクを180度反対の方に向けて録音すると「逆相」の状態になり、2本のマイクの音を合体させた時に音が小さくなってしまったり、違和感のあるサウンドになってしまうことがあります。

レコーディングの現場では2本のマイクを敢えて180度反対の方向に向けて録音をすることもありますし、逆相の問題はDAWなどのソフト内で解決できることもありますが、明確な意図がない場合には2本マイクの180度反対の向きにして録音することは避けたほうが無難です。


◇スタンドを使う

レコーダーを机や床に置いた状態で録音すると、床から伝わる振動や低音を拾ってしまいブーミーなサウンドになってしまうことがあります。

先ほど紹介したレコーダーの多くにはマイクスタンドやカメラ用スタンドに取り付けるための「穴」がある機種も多いため、スタンドに取り付けて録音することで振動や余計な低音が混入することを防ぐことができます。

SM57やSM58などのハンドタイプのマイクをレコーダーに接続して録音する時は、通常のマイクスタンドにマイクを取り付ければOKです。

ただし狭いライブ会場などでは観客やPAさんの邪魔にならないように置き場所に気を使う必要はあります。


◇コンデンサーマイクだけでなくダイナミックも試す

ネット記事などでは「ダイナミックマイクよりもコンデンサーマイクのほうが音質が良い」という記載を目にすることも多いと思います。

そのためレコーダーに外部マイクを接続する場合に、ダイナミックマイクではなくコンデンサーマイクを取り付けたいと考える人もいると思います。

確かにコンデンサーマイクは感度が高いのですが、細かいノイズ・足音・空調音などまで拾ってしまうことも多くですし、大音量の録音が苦手なコンデンサーマイクもあります。

スタジオやライブハウスでの大音量の演奏をコンデンサーマイクで録音するためには、それなりの知識、経験、準備が必要になってきます。

そのため録音の経験が少ないうちは、ダイナミックマイクで録音をしたほうが楽に「良い感じ」のサウンドを録れることが多いと思います。

ダイナミックマイクは前記のSM58やSM57でも十分だと思いますが「マイクにこだわりたい」という場合には以下の記事も参考にしていただければです。




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