見出し画像

ゆっくり休んでね、とただ一言だけ言うために、色々考えたオタクの話

※実在の人物について、一個人が思考を語った文章です。芸能人の体調不良による休養、それに対する感情を記述しております。中にはこの考えが受け入れ難い方もいらっしゃるかと思います。

※万が一にも本人や関係者の目に触れないよう、固有名詞を排して記述しております。


 普段、メール通知はあんまりちゃんと見ないのに、何となくすぐ開いた。ぼーっと見たら彼の名前と並んだ「ご報告」の文字。
 逸る気持ちで強めにリンクを押しながら、その可能性に至るよりも早いくらい瞬時に「あの特典映像の時に、コテージで『誰か1人でも欠けたら閉じよう』と言っていたから違う」と思った。
 彼の名前しかないならば、解散だけは絶対にない。じゃあ何だろう、とにかく早く内容を知りたかった。

 幸い私は、すぐにサイトに繋がった。真っ先に「休養」の文字が読み取れた。解散ではなく彼が休養することになったことが分かった。

 体調不良、難聴……じゃあストレス?ずっとだったんだ。いつ戻って来られる?夏のライブは、いやそんなのはいい、彼は今、何を思ってどうしているんだろう。
 読み終わったけど文字が目を滑って、その下に彼の言葉があってこれも目を滑ってしまった。閉じて開いてTwitterを見て、何度目かでやっと理解出来た。
 気持ちを語ろうとしてTwitterをまた開いた。TLのツイートにとにかくいいねを押す。自分も二、三言呟いて、またTLを見てしばらく過ごした。

 病名についてネット検索をした。病気の原因を軽く読んで、あとは「治るには」「治し方」というサジェストに従った。
 ストレスを除くにはどうしたらいいのだろう。
 休むならば家にいるのだろうか。貧困なイメージながら、都内のマンションを思い浮かべてみる。彼が、広いリビングのソファに腰掛け、毛布にくるまり虚空を見つめているのを想像した。あまりに不安なさまだったので、イメージで温かいごはんを付け足しておいた。部屋には家電の明かりはなく、カーテンの隙間から日光が差す。そこにインターネット、膨大な人の言葉が彼に届いてしまう術は、あってはならないと即座に思った。私の想像の中、暗い部屋に無気力に座る彼が、果たして安まっているのかはもちろん私には分からない。

 そんな休養を得るために、彼はどれだけ葛藤したのだろう。
 沢山のやることがあって、そこにはやるべきもやりたいも溢れかえっていたと思う。それから、ありとあらゆる人の感情や意見にずっと晒されていたに違いない。不意にそれらを受けて傷付くこともあっただろう。いちいち傷付くことすら許されず、それをやり過ごそうとしたとしても、無いものになんて出来ない。
 そうやってすり減っていって、体調が悪くても気持ちが休まらなくっても、それでもこの日まで走り続けたという。想像を絶する。

 またTwitterに戻った。「ごちゃごちゃ言ってる人はどんな神経しているんだろう」そんなツイートを見て、急にいたたまれなくなって自分のさっきのツイートを消した。また何か言おうとしたけど、上手く話せない気がして、しばらく別のことをしようとスマホを手放した。

 結局、私は私の日常を過ごすしかない。毎日予定もある。心配しても出来ることなんてない。そう思って普通に過ごした。

 YouTubeで彼らのMVを見た。再生リストをたどり、いくつか見た。どの瞬間を切り取っても、好きをはじめ様々な感情が溢れる。電車内だったので、降りる時に動画を閉じた。普通の日常を過ごした。

 帰宅してから彼のことを考えた。彼は1日をどう過ごしたのだろう。

 同じグループのメンバーが出したという記事を見た。原文ママとのことで、いつもと同じ文体にホッとしながら読んだ。
 良くなって欲しいが、そう思ったとて必ず良くなるものではない。だからといって悲しみ過ぎず、心配しすぎず、またみんなで笑える時のために、目の前のことに向き合っていこう。そういう意味だと捉えた。

 そうだ。やっぱり私はいちファンに過ぎない。私の声や想いが彼本人に届くわけはない。早く治りますようにと願っても、「待ってるよ」の言葉がかえってストレスにならないか迷うことも、いま私がどれだけ心を揺らそうと彼には何にも届かない。
 だったら、私は私の日常を過ごすしかない。いつも通り幸せになるために生きよう。

 私は不遜にも、大好きな彼に対する私の想いが、彼にとって何か良い影響を及ぼすことをいつも願ってきた。
 でも、今回のことで改めて感じた。私がどう声援を送ろうと、私が個として彼の役に立つ日は来ない。どれだけ心を割こうと言葉を選ぼうと、自己満足の域を出ない。
 でも、どうせ自己満足なら、私は私として日常を過ごそうと思った。どうせなら、彼の休養の事実で心配だの不安だのとメソメソした人間より、どっしりと構えて自分のことに集中出来る人間を増やした方がいい気がした。やはりやはり自己満足だけれど。彼からすれば、自分のせいで悲しむ人なんて少ない方がいい。それはすごくプレッシャーで負担だと思うから。一人二人の違いは、彼には伝わらないとしても。

 あなたへ。私は私が幸せになるために生きます。いつも通り全力で生きます。
 だからあなたは、今はゆっくり休んでください。もちろん、笑顔でいてくだされば、それが嬉しいです。でもそれが今かなわなかったとしても、当然です。心身ともに休まって、それでも良くなる時も良くならない時もありますよね。だから焦って回復しようとして辛くならないで欲しい。時間をかけたって、いつか曇りなく笑える時のために、今はどうかゆっくりと休んでください。

 私の推し軸「幸せを与えてくれたあなたに、私はいつか何かの形で役に立ちたい」。これは変わらない気がします。でも、届かないであろうことを改めて感じて、少し気持ちが変わりました。私があなたを好きでいることで、私自身が満たされて、成長していきます。

 結局、いつも私はもらうばかりで、今回も大切なものを沢山もらってしまいました。きっとこの構図はいつまでも変わらないです。でもだからこそ、あなたが幸せになるためにはどうしたらいいのか?ずっと考え続けたいのです。その結果、彼から隔たっていて、直接コミュニケーションを取ることなどできない私に言えることは、たった二言に尽きると思いました。

 いつもありがとう。ゆっくり休んでね。

 一介のオタクより。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?