彼の葛藤を勝手に思ったらやっぱり愛しかった話


 2024年5月。予告なく始まった大倉君の「一杯だけ呑みませんか?」のスペース。リアタイ出来なかった私は、その録画を聞いた。

 このnoteを書こうと思ったきっかけは、「契約のことなんて普通みなさんに知らせることじゃない」という旨の話。彼は、続けて会社のことに触れ、「また変な風に取り上げられても困るから」と締めくくっていた。
 私はこれらを聞いて、大倉君は、様々な視点を含みおいて物事を俯瞰する能力が高いと感じた。一般人ないしファンの視点を、通例に照らし合わせ、世相や将来までも見通した上で判断して意見をまとめる。そんな能力があるからこその一連の発言だと思った。
 今回の話は、私が無知であるだけで、実際には考えるまでもなく自明なのかもしれない。ただ、今までに大倉君のずば抜けたバランス感覚を示唆する場面は数知れずあったはずだ。
 大倉君が無二のアイドルであると同時に、トップオタク的視点を持ち、敏腕プロデューサーでもあることは、その力ゆえではないだろうか。色々な考えに思い至れるから、色々な立場を取りうる。役割、すなわち目的そして需要を意識できる。

 だからこそ、P業は一層しんどいかもしれない。
 大倉君の意識には、自身の決断が誰にとっても最良でないという事実が、常にあるのかもしれない。全ての人を満足させる方法などない、相いれぬ利害を、どこかで誰かが不満だということを、いつも分かってしまうのではないか。
 お気持ちぶっぱオタクこと私は、「手前の気持ちには手前で折り合いをつけるもんでしょうが!」と本気で思う。幸せは歩いちゃ来ず、自ら迎えにいこうとする営みが人生だと信じているので「マジで不満は自己の課題なんで、あなたはあなたらしく輝いて」と切に願う。
 けれど、彼は見知らぬ他者の不満すら、構造の中にすぐに見つけてしまえる。それってきついんじゃないか。

 これで、大倉君がもっとドライだったら、もっと話はシンプルかもしれなかった。でもそうじゃない。
 そもそも、彼自身が泥臭くアイドルにこだわっている。色んなアイドルの素晴らしさを噛み締めている。そして私たちのことを愛してくれている。こだわりと愛が十二分にある人だ。それをもって今日までやってきたのではないか。
 そんなこだわりと愛の人が、誰かの気持ちを……広い世界の中の知らないたった一人の気持ちでさえ、簡単に踏み越えられるとは思えない。意識の有無に関わらず。
 彼は傲慢でも非情でも何でもない。ある力に秀でたこと、ハートフルであること。そこに努力や出会いや様々なものが重なり、世の人へエンターテイメントを提供し続けている。その尽力のありようは、世の多くの人……少なくとも私には理解しえない。あまりにも過酷だという想像だけができる。
 膝を折りそうになっても、心身に不調を来しても、それでも今なお彼は前線に立っている。あまりの壮絶さに、つい奇跡と表したくなる。

 大倉君、スペースを開いてくれてありがとう。リアタイ出来なくてごめんね。
 以前、移動車の中から届けてくれた時よりも、大きめで少し上ずった、でも優しい声。お家でリラックスして歌う鼻歌に混ざって、グラスに氷がぶつかる音。取り留めなく色んな人に(特定の誰か、あるいはファンたちみんなへ)気持ちを溢れさせる言葉。全部好きでたまりません。

 清塚先生の話の時に「俺らに愛情なんて持たなくていいのにさ」との言葉。これだけ見たら如何様にでも捉えられる。けれどこの言葉は、人に優しい気持ちを注げる先生へ尊敬の念が滲んだ言葉だったのだと、私は解釈した。
 もし万が一、あなたと話す時が来たら、私からは「パブリックイメージはもちろん、たまにファンに向けた言葉も一見ドライな時があるくせに、すごく人を愛していて人に敬意を払う、そういう所が可愛いね」と言いたい。そんで「俺は何を言われてるんだ?誰?」という気持ちにさせたい。あなたは意味わからんと戸惑うかもしれないけれど、私にはそうとしか思えない!
 それとも、あえてドライに取られかねない物言いをしていることもあるのかな。聡い彼ならありえるし、だとしたら小悪魔がすぎる。

 そして、私の与太話はこんな風にネットの壁打ちで消えていく。
 あなたはスペースで、一方通行で悲しいなんて言っていたけれど、こっちだって寂しくて、やっぱりくだを巻きたくもなるよ。大倉君、私はあなたと同じ時代に生まれたことが嬉しい。全然違うけれど似ている寂しさをそれぞれ抱えて、これからも同じ時代を生きていこうよ。

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