ドローンの業務利用の動向
私がドローンビジネスをはじめた2015年ころ、国内のドローンの利用者はほぼ個人の一般ユーザーでした。
空撮したり、操作技術を習得したり、RC(ラジコン)航空機のひとつとして楽しんでいる方が大半で、(あくまでもうちの実績の割合ですが)ほぼ10割が個人ユーザーでした。
首相官邸にドローンが墜落した事件以降、法改正によって無人航空機に対する規制が強まり、一般の方が利用しずらい環境になると、法人や業者(事業性個人含め以降は法人と表記します)が事業に無人航空機を利活用する事例が増えてきました。
主に個人ユーザーは趣味利用、法人ユーザーは事業利用となりますが、個人利用の方が趣味の範囲を超えて、自身の事業に活かせないかと模索する動きも広がっていきました。
2017年頃には、個人ユーザー2割、法人ユーザー8割となり、一転してドローンの事業利用が本格化してきます。
業務利用の内訳は、建設業(測量含む)と農業がそれぞれ5割、他の業界に先駆けて業務利用がすすみました。
事業利用の用途としては、
建設業
現場写真空撮(進捗確認)
航空写真測量
設備・施設点検
農業
農薬・肥料の空中散布
以上がメインでした。
いずれも、当時はまだ実証実験に近い段階で、本格的な運用をはじめているケースは非常に少数でした。
2018年ごろから、実証実験を終えて事業に活用できることが明確になりだしたケースで実用化されはじめます。
特に、航空写真測量と農薬散布は一般に広く普及しはじめました。
2018年の秋には、山形大学のナスカの地上絵研究にドローンを利用したいとの要請をうけ、現地に渡り初期調査と並行してドローンチーム、スタッフを育成し、研究調査の分野でもドローンの利活用が有効に機能することがわかりました。
2019年には、個人ユーザーと法人ユーザーの比率は2015年当時とは完全に入れ替わり、ほぼ10割が法人ユーザーになります。
以降、建設(測量含む)、農業の分野で導入が加速し、より精密な作業をもとめ位置情報の即位精度が求められるようになります。
従来のGNSS(Global Navigation Satellite System)即位より高精度な、RTK方式の即位も普及してきました。
これにより、より作業精度が大幅に向上し、これまで困難だった業務も実用化していきます。
その後、新型コロナウイルスの世界的大流行により、原材料の調達や輸送面で多大な影響を受け、新規の機材導入は難しい時期が続きましたが、研究開発や実証実験が進むなど、コロナ禍あけには様々な取り組みが見られるようになり、現在に至っています。
ポイント
ドローンの業務利活用に関して、大きなポイントのひとつは、
従来からある業務をドローンで代替している
点です。
これまでドローンというキーワードばかりがフォーカスされてきましたが、ドローンはあくまでツールです。
業務でドローンを活用する場合、ドローンを使うことが最終的な目的ではなく、ドローンを導入していかに効率よく低コストで安全に業務を遂行できるかを考えなければなりませんが、ドローンの価格や性能はもちろん重要な検討事項です。
ただし、それだけでは不十分で、関連する法律やルール、制限なども理解していないければ、現実的なプランニングは難しい場合がほとんどです。
立場的に様々な相談をうけますが、これらが抜けているケースが多く、技術的には可能でも現実的には実現が困難な場合もありますので、ドローンを事業に利活用する場合は、その点を意識してくださいね。
今後もドローンの業務利用は増加が見込まれます。
2025年にはエアモビリティ(空飛ぶクルマ)の商用運航開始が予定されています。ドローンも無関係ではないので、常に最新の動向をチェックするようにしてください。