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病気との距離感

患者さんのニーズは常に一つ、「早く治してほしい」

それは、医者もよくわかってます。

でも、その「早く」という言葉の解釈が、医者と患者の間でまるで違う。

医者は「場合分け」して考える。
患者は、「早くと言ったら早くだよ!」「すぐに!」

「早く」という単語一つの解釈で、お互いの間にかかるはずの、コミュニケーションの橋が落ちるので、気を付けたいところです。


医者の頭の中にある「場合分け」とは

大別して2つ。
さらに小分類2つに分かれて、全体で3つのレイヤーがあります。

◎大別して2つ。

(1)正しいやり方をやれば早く治る病気
(2)どうやろうと、絶対時間がかかる病気


(1)でいう、「正しいやり方」とは?

(1)を別の言い方でいうと、「治療法が確立している病気」ということ。

治療に必要な「行程」が100あるとしたら、その行程を短期間で終えてしまうことが、「早く」治すということ。

要領よくやれば、これは叶うことです。

一回に10ずつ行程を進めれば10回。一回に20ずつ行程を進めれば、半分の5回に短縮できるという考え方。

1回の治療時間を30分でなく、1時間やれば、10→20になるし、30分を90分に延ばせば、当初の3分の1の期間で治る…といったことです。


(2)どうあがいても時間がかかる病気

これが、さらに小分類に分かれていて、
具体的には、「体質改善」や「治療法が分からない疾患」の2つ。

①体質改善

冷え性やPMSなど。

当院は、このパターンの場合、栄養療法併用です。体質の悪さって、別の言い方をすると、「何かの栄養の摂り方が足りない」か「特定の栄養素の吸収が悪い」かなんで。

栄養療法は、体の中に「一定量」の栄養を摂りこむことが、治癒の「発動条件」になるのですが、(1)と違って、人が食べる量を3倍にするなんてことは、現実的ではありません。

お肉を、いきなり今日から3倍食べて、と言われても食べられませんから。

食の細い人もいますし、何せ体質改善が必要なほど、栄養の吸収が悪いってことは、胃腸そのものがあかんくなっています。

少量から始めて、量食べれるようになるまでだって、結構時間がかかるんです。

発動条件を満たすまでの期間、3か月から半年というのも、短く見積もっての話。

大の大人は、そもそも、「私はもともとこういう体質」とか、「それはユーチューバーの誰それが身体によくないと言っていた」とか、言い訳を考えだす天才ですから、強制することもできませんしね。


②治療法がない、確立してない疾患。

アトピー性皮膚炎が典型ですが、治療法というものが確立していない疾患。

こういうのは、東洋医学が比較的得意とするところです。

それは、東洋医学が徹底した対処医療だから。

つまり、免疫力、回復力を高めて治す…病気の機序を無視して…というものだからです。


ただ、このタイプの病気で、「早く」というのは、神ならぬ人には不可能。

治し方のわかっている治療法だからこそ、「逆算」で考えることができます。治療の標準型があるから、アレンジしようもある。

でも、治療法が確立していない病気。アレンジしようもない。

この場合は、逆算じゃなく、順算で試していくしかないんです。


ただ、ひとつだけ。
順算式の場合の「早く」…は、色んなやり方を、短期間に試しまくることです。


以上「早く治す」を考えるうえで、3つの分類があります。

この分類のどれに当てはまるか?
ここを見誤ると、話が食い違い、不信感が募ります。

これを、病気との「距離感」を掴む、といいます。


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