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X-Pro3を1年使ってみて。

富士フイルム X-Pro3のお話。


発表当時、色々と物議を醸した富士フイルムのミラーレス、X-Pro3を購入したしてから1年が経った。1年使ってみて感じたことなどを書いてみようと思う。

初めから正直に言っておくが、こんな事を書いて、それを読んでくれた方が居たとしても、「カメラ購入の参考になった」「迷ってたけど買おうと決めた」とはならないと思う。「使いづらそうだから買わない」「かっこいいから欲しい/買った」のどちらかしか無いのだろうと思っている。

そしてわたしは残念ながらX-Pro2を知らない。X-E3が最初に購入したカメラだ。
故にX-Pro2と比較した感想は書けない。

その事を先に頭に入れた上で記事を読んでいただきたい。


1.ある意味富士フイルムの顔たるProシリーズ

Xマウント機はProシリーズから始まったらしい。
らしいというか、調べればそのくらいのことはわかるのだが、その時代を知らないのでそうだと断言するのはおこがましいような気がして、こう表現させてもらう。
レンジファインダーライクのデザインは他の国産メーカーにはない。とにかくかっこいい。富士フイルムが他社のように総合的なカタログスペックの高さでシェアを取りに行くメーカーではなく、撮る楽しさ、見た目、カメラ文化と言ったアプローチから勝負を仕掛けているメーカーであることをよく表している機種で、間違いなくメーカーの顔的なポジションのシリーズだと思う。

Pro3からは腕時計などに使われているデュラテクト加工という技術が用いられたモデルも登場した。わたしもこのデュラテクト加工が使われたDRシルバーというモデルを使っている。塗装のシルバーやアルミ加工のものより黄みを帯びて鈍く輝き、とてもかっこいい。

2.例の液晶

そんなProシリーズだが、X-Pro3はとある仕様により富士フイルムの踏み絵的カメラ、問題児と呼ばれる様になってしまった。
そのとある仕様とは、Hidden LCDの事である。

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(X-E3 touit32mmf1.8にて撮影)


Hidden LCDとは、通常カメラボディの背面にあるLCDディスプレイをチルトパネルの内側に隠してしまい、開かないと見られないようにして代わりに小さなメモリー液晶を載せた仕様のことだ。
他所でも散々言われていて、メーカーの偉い人も言っているように、この仕様は不便にするために設けられたものだ。この小窓を付けて便利さを維持するならバリアングルモニターにする。というか、そもそも液晶を隠すのがおかしい。小窓で表示出来るものはLCDディスプレイにも表示できる。大した節電効果もない。この小窓でしか出来ない事がない。
これは他の機種でありがちな、ある機能を実装するためにオミットされたものでは無く、完全に"不便にする目的"で設けられたものだから賛否両論議論が巻き起こるようになった。

取材記事などを読むとどうやらこれは「撮ったあとすぐモニターを確認するのは良くない。写真を撮る楽しさを損ねている。」という考えの元で作られたらしい。
ユーザーからしてみれば道具をどう使うかはユーザー次第、モニターを見たくない人は見ないようにすれば良いと思う人も多いのだろうが、それは機種が売れるか売れないかの話であってユーザーが気にするところでないのだろう。わたしは元々LCDディスプレイはほとんど使っていなかったので気にならず、躊躇いもなく購入したが、正直こんなどう考えても売れなさそうな仕様のカメラをリリースする富士フイルムの人は正気なのかと疑いたくなる気持ちはある。
とにかくX-Pro3はPro2より更に実用性や市場ウケを捨ててメーカーの哲学重視、ロマンの塊、でもかっこいいからいいよね、的なカメラなのだ。

3.一番の短所はOVFの仕様

Proシリーズにはレンジファインダーライクな光学ファインダーが搭載されていて、これもProシリーズの特徴的な機能の一つである。ガラスの素通しではあるものの、撮影範囲の外を見る事が出来るのはたまに便利。ただし当たり前だがEVFのように露出やWBを反映させることは出来ないので、動いてるものを撮るとか、スナップで歩いてる人を入れたいとかでなければ実用性はEVFに劣る。
露出やWBを反映できないと書いたが光学ファインダー内の右下にちいさくEVFを表示する事は出来る。この部分は通常レンズでケラれる部分だからここにEVFを表示するのはとても合理的だと思う。個人的にはこの機能は良い意味で変態的で好きだ。

しかし X-Pro3のOVFについては素人目からしてみれば改悪と言わざるを得ない。
わたしはX-Pro2を使った事がないので詳細はわからないが、X-Pro2では3種類あったOVF倍率が1種類になっている。23mmや27mmの焦点距離だとちょうどよく使えるが、50mmとなるとちょっと広すぎる気がするし、16mmになるとOVFの範囲外まで写る。これでは意味がない。
メーカーによればOVFは使っている人が少ないからEVFを強化したとのことだが、アイデンティティを削っているような気がしてしまう。

一方EVFについては有機EL液晶に強化されている。個人的にTFT液晶は発色でアテにならないと思っていて、ここがX-Pro2の購入を渋っていた最大の要素だったので嬉しい。ただやはり、どうにかしてOVFの倍率変更と両立出来なかったのかと思わなくもない。

4.フィルムシミュレーション「クラシックネガ / Classic Neg.」について

X-Pro3で初めて搭載されたフィルムシミュレーション。今では以降発売されたX100V、X-T4、X-S10、X-E4にも搭載されていて、Pro3より前の機種でもCapture oneを使うと適用出来るのでそこまで珍しい物でもないが、一応書いておく。

はっきり言うがクラシックネガはあまり使っていない。

初めはとても"エモくて"良いなと思った。わたしはあまりフィルム写真に馴染みがある世代ではないが、一応小学校の修学旅行では写ルンですを持っていった世代ではある。子どもの頃のアルバムはほとんどフィルムを現像したものである。そんなわたしから見ても馴染みのあるフィルム写真のような発色をしている。たしかに、良い色をしている。とてもそれっぽい。
しかしこれはクセが強すぎる。クラシックネガで撮った写真を見返すと「良い色だ」という感想が出てくるものの、それ以外の印象が薄い(あくまで個人の感想に過ぎないが)
故に何回か撮影で使って飽きる。

某有名YouTuberの方も言っていたが、これはフィルムシミュレーションというよりOLYMPUSのアートフィルターみたいなものに近いと感じた。
わたしは、フィルムシミュレーションはそもそもコロコロ変えて遊ぶものというよりシャドウやWBシフト、カラーなどの設定も併せて「撮影者の世界観を表現するための色のプリセット」のようなものだと思っている。紙のアルバムにしても、Instagramにしても、例えばエテルナで撮った写真の中にベルビアで撮った写真があるとすごく悪目立ちする。デジタルカメラ故の便利さ・自由度の高さと、作品として表現する上での統一感を、フィルムメーカーの技術によって高いクオリティで両立させているのがフィルムシミュレーションという認識だ(もちろん、使い方は人それぞれなので、あくまで個人の認識の話)
"クラシックネガ"で撮った写真は"クラシックネガで撮った写真"になる。これがわたしがクラシックネガをあまり使わない理由だ。

それでも、上にも書いた通りいかにもフィルムらしい写真が"お手軽に撮れる"という意味ではかなりよく出来ていると感心する。作例を見て惹かれて購入するユーザーは多いと思うし、それがメーカーの存続に繋がるなら悪くはないだろうと思う。

それと、夜の写真に限って言えばクラシックネガはとても良い。夜の写真は全体的に黒が多いので色調変化が悪目立ちしづらく、シャドーもしっかり締まりつつ変に鮮やか過ぎない良い色が出る。わたしのようにクラシックネガの使い道が難しいという方は夜に使ってみて欲しい。

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5.まとめ

極論言えば、こんなカメラ買わなくてもいいのだ。
デジタルカメラなんてものは究極的にはセンサーとマウント(レンズ)とレリーズがあれば成立するわけで、富士フイルムでこれと同じX-trance4センサーを搭載しているカメラはX-T3、X100V、X-T4、X-T30、X-S10、X-E4と6種類もある。センサーが同じでマウントが一緒ならレンズも似通っていて、つまり同じような写真が撮れる。なにもX-Pro3じゃなくても同じ写真が撮れる機種がいっぱいあるのだ。あとはセンターファインダーかどうかや十字キーが付いているか、軽いとかグリップが深いとかなど、使いやすさの合う合わないだけだ(X-T4とX-S10はボディ内手振れ補正が内蔵されているので一緒くたには語れないが)
だからこれがフラッグシップで、これが最強でこれがあれば全部の環境で撮影できる唯一のカメラではないのだ。そういう役割がT3やT4であるし、そうでなくても同じクオリティの写真が撮れる機種がいくつもある。

だから気に入らない人は買わなくていい。明らかに万人にオススメできるカメラでも無いし、写真好きなら買え、富士フイルム好きなら買え、と言えるカメラでもない。なぜなら不便だし。

しかし、逆に言えば他のフラッグシップ機と同じクオリティの写真が撮れることを保証している。そしてわたしのように不便だと知りながらProシリーズを買う人はいる。カッコイイから買った。
他の機種と比べて性能のわりに高かったが後悔はしていない。とてもこの捻くれたカメラにとても愛着を持っている。

そういう愛着はあってもいいんじゃないかと思う。Proシリーズはきっと自分のカメラに愛着を持たせてくれる、自分のカメラをただのツールではなく相棒だと思わせてくれるシリーズなのだ。
X-Pro3はなによりもカッコいいカメラが欲しくて自分のカメラを相棒にしたい人にオススメできるカメラだ。


事実を見なかったことにしてヨイショするのは好きではないので正直に書かせてもらったが、結果的にネガティブな感想ばかりになってしまった。わたしはネガティブ要素も全部ひっくるめてX-Pro3をとても気に入っているので、それだけはご理解いただきたい。

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