『安かろう悪かろう』の時代じゃない

AI塗り和風

 良い時代になったなぁ、と思う。
 今や無料から千円以内のアプリで、AIが色を塗ってくれる時代だ。

 ちなみに上記のイラストは、人物の肌色と着物に、ごく薄く色を塗った状態で、『アイビスペイント』というアプリで、AIに色を付けてもらったもの。

 (※AI塗りは、まだ数回試してみた程度だが、下塗りの状態で激しく色付けの内容が変わるようだ。
 上記のは最初に試して、奇跡的に上手く塗れたものなので、感心して残しておいたイラスト。)

 私が塗るならこうするだろうと想像していたような濃い色合いではなかったが、色の変化や透明度がステンドグラスのようで、これはこれで綺麗だな、と思う。
 例えば簡単に描いたデッサンの色付け等になら、自分で考えて塗るよりも面白い効果が得られるかもしれない。

 もし、人類の『芸術』が、『バナナをテープで壁に貼り付ける』様なものばかりになるようなら、近い将来、『感性』の部分もAIに負けてしまうんではないかと心配ですらある。

 昨今もてはやされている『Art』と言われるものは、どうも話題性や作者の知名度、もっと酷いと外見やパフォーマンスに左右されがちで、本当に自分の『魂をかけて』静かに表現している作品や作者さんは、見向きもされない傾向にある気がする。
 そのうち、『芸術』作品さえも、『いいね!』の数で価値を判断されるようになりそうで怖い。
 
 と、まあ、ちょっと絶望的な未来観測の話は置いておいて。
 タイトル通り、“『安かろう悪かろう』の時代じゃない”の話に戻ろう。

 もともと機械音痴の私が、最初に「タブレットで絵を描いてみよう!」と思い立った時に、まず購入したのがiPadプロだった。

 なぜなら、『それが最善』と、CMでのイメージも、ネットでの評判も、ある程度の刷り込みと評価があるからだ。

 そういう訳で、タブレットで絵を描くならば、性能の良いタッチペンも必要だろうと、初期には充電式やら筆仕様、透明ディスクの付いた重いペンから軽いペンと、とにかくクチコミで良いと言われているものは購入して試してみた。
 なぜなら、そりゃ機械音痴でデジタル画で描きなれていない自分が上手く絵を描くには、「まずは性能の良いものが絶対に必要だ」と思ったからだ。

 結果。
 現在イラストや漫画を描くのに使用しているのは、iPadの半額程度の中国製のタブレット(悩んだ末にandroid版を購入し、2019年の11月に到着)と、一本数百円程度の、導電繊維タッチペンである。
 これがまあ、購入前は安いだけに色々と不安だったが、サクサク使えて余計な事(何かするたびの認証等)を求めてこないので、気楽に使えて心地が良い。

 iPadは長年使用しているせいか容量オーバーのせいか知らないが、やっとお絵かきアプリでの制作環境に慣れてきたと思ったら、数分おきに認証を求めるメッセージが出てくるし、突然落ちるしで、今や落ち着いて絵が描けない始末。

 一万円前後はした高額のタッチペンは、プラスチックの下敷きにボールペンで描いているようで、上滑りの感覚が気持ち悪く、どうにも肌が合わない。なので最初に数回使った時点で却下。(引き出しで眠る。)
 筆仕様のタッチペンはザックリ塗るには楽しいけれど、細かいペン入れをしようと思ったら、どうしても揺らぎが出るので、細かい所が描けるよう、すぐに持ち変える必要がある。というわけで、結局ほとんど使用しないまま。

 いっそ百円ショップのシリコンゴム製のタッチペンでも描き味は問題ないのだが、ウェットティッシュで画面を掃除した時に、うっすら黒くなる気がするので、ペン先からの色移りや画面の曇りがないよう、ゴムよりも導電繊維の方を選んだに過ぎない。
 ちなみに、画面の保護シートは、無いよりもあった方が、手の感覚がアナログで紙に描いている質感に近くなる気がするので、個人的には貼る事をオススメする。

 過去の私に告ぐ。
「タッチペンもタブレットも、アプリさえも、無料か安い順に試して、根性で自分の手の方を合わせた方がずっと安上がりだし、結局それに落ち着く。CMで語られる万能性や、上辺のイメージに騙されるな。『どんなものも、高額で知名度の高いブランド物の方がより良い』なんて時代は終わったんだ」と。

 まあ人によってはもちろん、超高額な充電式タッチペンが一番しっくりくる、という事もあるだろう。
 けれど、いざ絵を描きたいと思っても、お金がかかって手が出せない、と思っている人には朗報です。

 今や上手く見せる技術や加工のぎっしり詰まったアプリが無料で試せる時代です。
 そこからチャレンジしても、まったく問題ないどころか、たぶん良いものに出逢えます。

 本当に、絵具や水彩紙、Photoshopに費やしていたお金や、スクリーントーンやコピック、原稿用紙に巨額をつぎ込んで漫画を描いていた過去の自分と比べたら……。
 ほとんど全て、無料かつ、技術の習得もなしで描けるなんて、良い時代になったなぁ、と。(涙)

 効果線を墨で引いたはいいけれど、手でこすってしまって、修正も綺麗にできないので、結局丸々一枚、原稿を描き直したような過去の私のあの時間と苦労はいったい……。

 何だか簡単すぎて逆に空しい瞬間すらありますが、これからの漫画は、アシスタントさんの手も借りず、個人でいくらでも完成度の高いものが描ける時代なんだなぁと思いつつ。
 
 今後は私もその恩恵にあずかりながら、自分なりに良い作品を描いていけたらと思っております。
 
 ※下記のイラストは、投稿作品として描いてはみたものの、結局没にした下絵に軽く色を付けてみたもの。
 もちろん、こちらはAIの手は借りておりません。(^ェ^);

制服


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