トレンチコートとわたし

大人になんてなりたくない。
今がとっても楽しいから。
ずっとそう思っていた。
幼稚園の時も、小学校の時も、中学校の時も。

でも想像はしていた。
きっと大人になったら
自動的に身長は168㎝になるものだと。
一重の切れ長の瞳に艶やかなロングヘアーとトレンチコートをなびかせて、珈琲を片手に颯爽と歩く。そんな大人になるのだと。
生まれたときから二重だというのに。
まさか珈琲すら飲めないとは。
 
でも、何故168㎝なのか。
本当に一重になりたいのか。
トレンチコートなんて買えば良いし、紅茶で事足りるし。
漠然と思い描いてた大人像。
そこに1つも意味はなかった。

 
今だって168㎝になりたい気持ちも無くはない。
一重への憧れも少し。
けど、わたしは格好良くなりたかっただけなのだ。
168㎝と一重に意味がある訳ではなかった。

今の私は、あの頃思い描いていた「格好良い大人」じゃない。でも。
ねぇ、子供のあたし。
トレンチコートとロングヘアーは似合わないけど、
月が綺麗だから信号待てちゃう大人になったよ。
 
こんな格好良さもあったんだな。


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