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いなせだね

射精後にコンドームを付けたまま眠るSEXは遠い8月の安いラブホテルでクーラーを最低温度で付けっぱなしたまま起き上がった身体はキンキンに冷えておりもう1発かましてから一風呂浴びたいところだが全くもって時間は無く急いでバイクに跨りつつも背中に全神経を集中させたのは柔らかいおっぱいが原因であり熱過ぎる股間に似た眩し過ぎる太陽に照らされてはアイスクリームがゆっくりと溶けていく様に穏やかに幸せが額を濡らす汗は2度と流れない。

財布に万札が入らなかった頃。上新庄に3千円のラブホテルがあるらしいと聞きつけては普通電車に乗って快速のおちんちんを目指した。 その名も『ABCホテル』。「D」を「デー」と発音するだろうおばあが玄関でスリッパを揃えてくれるプライバシーも糞もあらへんがなストロングスタイル。

入ってみるとやはり、おお3千円だなあ〜だった。南こうせつの神田川が、掛軸の裏に大量のお札が、ちょんまげが刀を磨く和室だったのである。机にはポットと緑茶の粉末と確実に湿気ってるであろうバームロールが2つお盆に載せてある。勿論それらには手を付けず全くいつ見ても新鮮な女の子を頂いた。

2度と来るか!とは思えない程に悪くは無かったし何よりも私は若かったし貧しかったし面白がっていたしで女の子にこそ悪いけれどもその後も少なくない回数を利用させて頂いた。そんな中で1度、小中の同級生、後藤たけしに出くわしてしまった。中学を卒業ぶりに激安ラブホテルで再会。果たしてどんな言葉が適切だっただろう。

たぶん私は、「おっ…大人になったなあ」と、たぶん後藤は「せっ…せやなあ」と返した。 強烈にお互いが苦笑いだった事だけ鮮明に覚えている。 一瞬にしてケツの穴見せ合った様な、わざわざ高槻から上新庄までノコノコとヒソヒソとやって来てもうてる同志の共感や照れや恥じらいが奇しくも絆を結んだ瞬間だった 。

時は遡り小4。 私は阿武野小学校から赤大路小学校に転校した。黒板の前で担任の福岡先生が自己紹介を促す。 頭を下げる事が精一杯な緊張とは裏腹に教室の全員が自分を全く知らないという事は全ての嘘が全て嘘にならない訳で本当の自分を自分しか知らないという奇妙な優越感に酷く興奮していた。まるで凶悪な殺人犯が善人のフリをしてひっそりと女子供に笑いかける様に。

その癖は35歳の私にも健在であり、初めて降りる駅で、遠い街で、やかましい繁華街で、寂れた商店街で、ビール瓶に躓く裏路地で、誰も居ない公園で、トイレットペーパーが無い臭い公衆便所で、暖簾がちぎれ過ぎてもはやファサッと掻き分ける意味の無い汚い居酒屋で、知らない誰かになって、今も心踊る。(猥雑で溢れたピンクの看板に向かって大声で叫ぶゲボみたいなサラリーマン達以外の)

赤小に慣れてきた小4の2学期。 教室を開けたとたん誰からもいじられてないのに、「誰がジャイアント馬場やねん!」と怒鳴るノリが自分の中で流行っており最終的には、「もうキレた!」と叫びながら机の上に立っておちんちんを出し奇声を発する下品な始末。

そろそろろ、「馬場そのノリもうええで」の呆れ声が聞こえても執拗に叫び続けていた所ぬるっと現れたのが後藤たけしだった。静かに近寄りゆっくりと私のおデコに真顔で手をかざす、「うん。熱はないみたいやな」と耳元で囁き過ぎ去った。

痺れた。スカしツッコミとでも言うんだろうか。こちらの力を利用した合気道みたく匠な技にいなされては敗北を感じた。こいつめさめさおもろいやん…の衝撃でおちんちんは縮こまり口も身体もポカンと動けなかった。

ポカンと動けなかったと言えばラブホテルに着いてSEXをする前に彼女が先にお風呂に入った。待っている間、画面に垂れ流してあるAVでシコシコとお努めしているとバスタオルで髪の毛を拭いていた彼女がガシッと両手を止めて、「私おんのに!?」と怒ってくれてしまったけれど、自分にとってそれは礼儀というか本番で早く果ててしまわない為の予防であり居酒屋入る前にコンビニでウコンかます感覚と全く一緒だった。

全く一緒と言えばやはり後藤たけしで彼は春夏秋冬、半袖半パンだった。クラスに1人は居たタイプで有名のアホだ。毎年真冬になると充血した赤い目で鼻水を凍らせながら(桑原の霊剣に似ていた)震えているアホに、「寒くないん?」と聞けば、ひび割れたドス黒い紫の唇で、「全然寒くない」と答えた。アホだ。
今更やけど、「うん。熱はないみたいやな」あの天才的なツッコミこっちのセリフや。デコ触るんワシやこのドアホが。

ラブホテルの再会から10数年経った夏、天才が死ぬと言われている年齢、27歳、39度のとろけそうな日だった。近所で後藤たけしを発見した。天才を見つけるなり私は、「お前いつまで半袖半パンやねん!」とボケさせて頂いた。 彼はあの時の様にお得意の合気道で、「いやっまあ…夏やからなあ」と小さく呟いて少しだけ笑ってくれた。

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