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『パイオニア墓地対策考察』 2024 その2

 今週は前回の続きです。

《真っ白》

 最初は“リミテッド用のちょっと強い《精神腐敗》”程度の認識だったように思います。
 どこの30円ストレージにも突っ込んであったけど、今は大出世しました。100円くらいです。
 ……いや、まあ、元から通常パックのアンコモンだからねぇ。
 とはいえ、注目されていなかったけど、使ってみたら強かった典型カードですね。
 《虚空の力線》や《トーモッドの墓所》がハンドアドを失ってテンポアドを担保する墓地対策とすると、このカードはテンポアドを失う代わりにハンドアドを取る墓地対策です。
 ディミーアフェニックスやイゼットフェニックスは、《考慮》のような1枚使って1枚引くドローソースが多いです。
 《宝船の巡航》や《時を越えた探索》で手札を増やすので、これで一度墓地を吹き飛ばしつつ手札を削れば、テンポとハンドのどちらもダメージを与えられます。
 更に、他の墓地対策ではハンド差で損しやすい《記憶の氾濫》を“ついで”で対策できるのも評価したいですね。

一度打たれるのはいい、しかし、二度打つのが許せん……!

 墓地に1~2枚落ちている状態でロングゲームでフィニッシャーを探すというのが青系コントロールの勝ちパターン。
 それを手札を削るついでに防げるのは評価できますね。
 他の墓地対策だと、むしろそれを使うことでハンド差がついてしまいますし。
 半面、微妙なのが《脂牙》の対策としてですね。
 3マナなので、相手が先攻で1~2ターン目に墓地を肥やし、3ターン目に《脂牙》が着地する最速をキメられると引いていても間に合っていない。
 更に先攻3ターン目で一度墓地を掃除しても、構えていた《忌まわしい回収》で墓地を肥やし、相手の後手3ターン目で《脂牙》着地、《パルヘリオン》が着地してゲームをキメられても防げません。

 アブザン探検に対しては難しいですね。
 《戦列への復帰》や《救出専門家》、《月皇の古参兵》をついでに対策できるのは理想的ですし、
 手札を増やす手段が探検くらいしかないのでハンデスで削れれば《集合した中隊》を打つことも難しくなるはずです。
 とはいえ。
 ビートプランもあるデッキなので、盤面を捌けない状態で撃つとそのまま削り切られる可能性も高い。
 3ターン目にフルタップしてしまうのも、《アマリア》&《野茂み》の必殺コンボを打たれて負ける裏目もあります。

 また、ルール的な小技。
 追放してしまっているので《無駄省き》とシナジーし無さそうに見えるかもしれませんが、捨てさせてから追放しているので問題ありません。
 あとは、あまり見ませんが《無効皮のフェロックス》や《ロクソドンの強打者》を落とすと普通に戦場に出ます。

 パッと見、「墓地に落ちてから戦場に戻る誘発効果」っぽいんですが、実際は「墓地に送られる代わりに戦場に出る」常在型能力なので、
 効果の解決中でも適応されますし、そもそも墓地を経由せず戦場に出るので、墓地対策である《真っ白》の更なる対策としても有効といえるかもしれませんね。
 ただまあ、フェニックス系や青系コントロールがこんなカードをサイドに取るかって話。
 一応色が出なくても戦場に出せる方法があるとはいってもなァ。
 ということで、仮想敵に対しては裏目ることはほぼなし。
 総合的には対コントロール、対フェニックス系特化と考えて良いように思います。

 

《クチルの側衛》

 新進気鋭の墓地対策カード。
 クリーチャーのETBで墓地対策が付いているのは結構あるし、
 瞬速持ちも前例はあったけど、兼ね備える3マナのカードはパイオニアに存在していなかった。
 というか、「瞬速・墓地ひとつリセット・3マナ・ETB」は筆者が調べた限り、下環境で大活躍するピッチサイクル、《忍耐》の素撃ちしか該当がない。

統率者や下環境でお馴染み。

 もちろん、想起でのゼロ撃ちの選択肢がなく、タフネスもかなり劣る。
 総合力でいえば、《忍耐》の方が二回りくらい強いと思います。LO対策にもなりますしね。
 比較対象がエターナル環境のハイエンドカードなんだから分が悪いのは当たり前といえば当たり前。
 しかし、その《忍耐》と比較しても、ただの下位互換になっていないのはこのカードの地力の強さの証明ではないでしょうか。
 具体的には《側衛》にはライブラリートップの調整モードもある。
 2点回復・2占術はクリーチャーに付いているオマケとしてはかなり強いです。
 土地が足りてからなら土地を1枚引くより占術2で不要牌を弾いた方が強い場合も多いですしね。
 他の墓地対策はそれ以外に仕事をせず、軽度の墓地利用に対しては腐らず、とにかくツブシが効く1枚。
 最低限パワー3があるので、《脂牙》相手ならリアニメイトを防ぎつつ、《脂牙》のタフネス3なので本人の殴り込みも咎めることができます。 
 さすが猫。ネズミに対して負けるわけにはいきません。

 猫といえば、細かい点ですが、猫なんです。このカード。

 コントロールデッキでクリーチャーなしのリストにして相棒に《カヒーラ》を指定し、捌き合ってからフィニッシャーにすることができます。
 《側衛》ならサイドインしても猫なので、《カヒーラ》の相棒条件を阻害しません。

 最近、アゾリウス系のサイドボードで入るサイド後のフィニッシャーも猫なので、猫シナジーにも期待です。
 ねっこぶっぞく。ねっこぶっぞく。ねっこぶっぞく。猫部族ー!
 肉球で揉み殺せー!(モフモフ党過激派)

 更に《集合した中隊》・《召喚の調べ》からも出せるので、
 アブザン探検のようなデッキのミラーマッチで決め手になるかもしれません。

 ちなみに、パイオニアではほぼありませんが、無限頑強のような戦場と墓地を行き来するようなギミックが有る場合、
 1番上の効果でこのカードに無限にカウンターを溜めることができます。
 (一度戦場を離れると別のオブジェクトになるため別勘定)
 そういうコンボデッキを組めるかもしれませんね。

 ギリギリでもタップアウトせず、腐らず、コントロールミラーでは打撃でライフを削れます。
 強引に欠点らしい欠点を挙げるならアゾリウス系の中で、ロータスコントロールと呼ばれるデッキタイプがあります。
 《睡蓮の原野》の出たときに土地を生け贄にするデメリットを《厳しい試験管》で封じ込め、マナ加速を行うデッキですね。
 これだと《厳しい試験管》が《側衛》の効果を阻害してしまうため、色は合いますが採用は難しいと言えます。
(《試験管》不採用型のリストもありますが)
 それ以外でしたら、白が絡むデッキなら隙がなく、裏目のない強力なサイドカードと言えますね。

《漁る軟泥》

 統率者デッキ初出の万能墓地対策。
 僕が始めた頃は統率者デッキのみの収録で結構値段がしてたんだけど、
 基本セット2021に収録されたことで一気に値段が安定するのと同時にパイオニアリーガルとなった。
 このカードの特徴は、墓地対策であると同時にフィニッシャーでもあるということ。
 ゲームが長引くと、お互いの墓地からクリーチャーを漁りまくって10/10くらいになることもザラ。
 更に少量ではあるもののライフ回復効果もあり、“長引く”ことを狙いやすい。
 サイズとライフ回復効果から、赤系の火力系カードに対しても相性がいいです。
 確定除去を持たない赤緑系のミラーマッチだとお互いに能力を構え合うなんてこともあります。
 メインボードからでも採用できる強力カードといえますね。

 欠点は1回ごとにマナが掛かるので、2ターン目に出しても墓地追放ができず、継続的に墓地を片付ける能力は《虚空の力線》や《未認可霊柩車》に見劣る点。
 マナが有っても緑しか使えないので、多色デッキだと思うようにサイズアップできないことも。
 メインから搭載できるものの、環境トップメタ、ラクドスミッドレンジ相手だと相互作用がかなり大きいカードでもあります。
 2ターン目に雑に出すと《砕骨の巨人》の出来事の2点火力の的になり、どれだけ育てても《致命的な一押し》で処理されてしまう。
 反面、《クロクサ》には強いし、《ヴェールのリリアナ》や《インティ》で墓地を相手が増やしくれることもあり、
 構造的にマナさえあれば《墓地の侵入者》に負けず、サイズとゲインで《黙示録、シェオルドレッド》にも対抗しうるなど、強い側面も多いんですけどね。
 高い汎用性、カウンターシナジー、回復シナジーなど、受けの広さは魅力。
 緑が一定以上の比率で出せるデッキであれば採用に足るカードと言えますね

《アガサの魂の大釜》

 カテゴライズとして墓地対策ではないような気がしますが、複合的な役割として兼任できるカードなのは間違いないので。
 墓地対策としての特性は1枚限定の《未認可霊柩車》で、カウンターシナジーは《漁る軟泥》並。
 メインボードに採用しているデッキも見られている。
 最低限の墓地対策とカウンター付与マシーンとしての性能も悪くないが、やはり相性の良いカードありきだろう。

追放しておけばカウンターの乗っているクリーチャーが全て《投げ飛ばし》内蔵。
連続砲撃で相手のライフを削り切れ!
最初からファイレクシアンやクレリックであるクリーチャーが能力を持てば、
2番目や3番目の能力から使用することが可能!
2枚並ぶと相互にアンタップできる。
《深根の巡礼》と合わせれば無限トークン。
カウンターの乗ったマーフォークを2体用意し、
《追随者》を追放できればやはり無限トークン。

 これらのカードがなくても、墓地さえあれば毎ターンサイズアップができる置物と考えれば、《光輝王の野心家》相当。
 もちろん、《野心家》は自力で殴れるし、墓地も参照しないから単純なビート性能では比べられないものの、コンボのキーパーツであり墓地対策として併用できるのは、このカードの唯一無二の性能といえますね。
 相手が《ラノワールのエルフ》のようなカードを墓地に落としたならそれを追放してマナ加速としても使えたり、思いもよらないコンボもあるでしょう。
 他のカードとの相性に依存しますが、メインボードに採用されてもおかしくないカードパワーであることは間違いないでしょう。


《塵へのしがみつき》

 低速の黒の入るデッキで用いられるカード。
 色々と書いてありますが、クリーチャーを追放したら3点回復。
 それ以外なら1枚ドロー、4マナ払って自分の墓地が超えてれば何度でも再利用できるよ、ってカード。
 《漁る軟泥》もクリーチャーで回復なので、肉食って超回復、的なイメージで連想付けると覚えやすいかもです。

 基本的には1マナキャントリップで使い、後半以降に脱出コストでリソースを稼ぐカードですね。 

だいたいはこのイメージ。

 基本構造が強いので、メインボードから採用しやすく、構えておけば墓地対策として奇襲性が高いのも長所ですね。
 ライフ回復のモードもあるので、高速相手でも低速相手でも仕事が有るのが嬉しいですね。
 メインから搭載できる墓地対策としてはかなり高水準なんですが、
 欠点は黒の1マナ域なら《致命的な一押し》や《思考囲い》と競合するので枠がないこと。
 それらのカードが入るなら、クリーチャーデッキなら枠がないのでこういう小粒でテクニカルなカードより、相手にとってプレッシャーになるカードを入れた方が良いです。
 そのため、あまりクリーチャーを用いず、呪文を連打するデッキで検討されますね。
 具体的にはディミーアコントロール系、ディミーアフェニックスなんかですね。
 墓地対策としての性能は1枚しか触れませんが軽量で汎用性も高いです。
 《真っ白》と比較すると、小回りの良さで採用される感じですね。
 アグレッシブなデッキでなく、黒が入るならば検討に値すると思います。


『その他のカード』


《死儀礼のシャーマン》

 下環境で禁止されているパワーカード。
 しかし、パイオニアではアンタップインできるフェッチランドがないのでマナクリーチャーとしては安定しない。
 あくまで1マナのマナクリーチャーとして運用できる前提だからこそ、他の効果が光るカードなのです。
 お膳立てさえできればもちろん強いんだけど、下環境でメインとして使われているマナ能力が機能せず、オマケ効果だけで戦うには厳しいのでは。
 このカードが真の輝きを放つのはアンタップインできるフェッチランドが使えるようになるときなので、パイオニアが終わるときだよな?

《屍肉あさりの地》

 アンタップインできる墓地対策土地。
 都合3マナと生け贄にすることで墓地を吹っ飛ばせる。
 マナ基盤に余裕さえあれば、別段デメリットがなく採用できる。
 しかしながら、繰り返しになるが墓地対策を必要とするデッキは他にも攻め手が多いわけで。
 3マナと土地を生け贄にして大丈夫って状況はゲーム終盤だし、強く使えるシチュエーションが少ない。
 だったらマナ基盤として同じ性能である《変わり谷》とかの方がシンプルに強いよね。

《碑出告が全てを貪る》

 墓地対策か?
 基本的に第一章でボロス召集、ラクドスサクリファイスのようなトークンや軽量カードを横並べするデッキを叩くカード。
 強力なサイドカードではあるものの、色拘束が厳しく、ラクドスサクリファイスなら搭載はできるものの、明らかに自分が損失を受けすぎる。
 結局、ラクドスミッドレンジの専用カードと言えそうだ。

《不屈の将軍、ジリーナ》

 弱いことが何も書いてないタイプのカード。
 自発的に生け贄になれるので、《砕骨の巨人》の出来事で狙われてもフィズらせて《砕骨》を墓地に落とせるの良いよね。
 アブザン探検は《召喚の調べ》などでサーチする動きで墓地対策と除去対策が可能。
 タッチ黒の人間アグロならメインボードから後半の除去耐性だけで仕事になるし、メインボードから対策可能。
 搭載する色が厳しいものの、いぶし銀の強力カード。

《悔恨する僧侶》

 単純な墓地対策としては《安らかなる眠り》に劣り、
 奇襲性と受けの広さで《クチルの側衛》に押されがちな1枚。
 しかしながら、アブザン探検では《ジリーナ》と同じく《召喚の調べ》からシルバーバレットできる。
 じゃあ《クチルの側衛》の方が盤面に戦力が残るから強いじゃん、って話だけど、3マナと2マナの差は結構デカイ。
 じゃあ《ジリーナ》で良いじゃんって話だけど、アブザン探検は人間がほとんど入ってないし、マナ基盤がシビアなのでシングルシンボルのコチラの方が使いやすい。一応飛んでるし。
 更にスピリットというクリーチャータイプも光るなど、痒いところに手が届く1枚
 あとはクレリックなので、エンジェルカンパニーなんかでも検討されうるかな。

《運命の神、クローティス》

 3マナ、毎ターン1枚だけ、最初の追放がターンが帰って来てからなど、遅すぎるカード。
 基本的に墓地利用系がブン回ると対抗しようがないが、《パルヘリオン》や《フェニックス》を墓地に落とすことを牽制するくらいはできる。
 破壊不能の非生物とかなり触りにくいので、相手の動きが鈍りさえすれば毎ターン2点ライフドレインが結構刺さる。
 搭載デッキは、グルールアグロ、グルールバードクラス、ニヴ再誕辺り。
 フィニッシャーの数を減らさずに墓地対策ができる器用なカードとして注目です。


 さて。
 実は他にもいくらでも墓地対策はあったりします。
 

LO=デッキ破壊対策を兼ねるが、
パイオニアではLOはティア1にはいない。
弱いことは何も書いてないけど、あまり使われていない。
1マナで《脂牙》が止まるってよ。

 墓地対策は各種エキスパンションごとに複数枚存在し、毎回増えていく。
 対策カードである以上、仮想敵を研究・考察できるならば、最適解は必ずしもひとつじゃない。
 現在はフェニックス系、パルヘリオン、蘇生からの探検コンボなど多岐に渡ります。
 色、コスト、対策の継続性、どこまで対処できるかの範囲、クリーチャーであるならサイズ、部族、対策以外の効能。
 様々な要素を検討し、最適な1枚を見つけたいですね。


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