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『顧客の期待値を超える』ということ

『顧客の期待値を超える』ということ「期待値を超える!」なんとも甘美で汎用的なスローガン。B2BでもB2Cでもこの気概は持っていたいもの。
でも、この謎の“期待値”って何なんでしょうね?
期待値の正体と、それの超え方を考えてみます。

そもそも“期待値”って何?
まずはみんな大好きウィキペディアで調べてみましょう。

確率論において、確率変数の期待値(きたいち、英: expected value)とは、確率変数のすべての値に確率の重みをつけた加重平均である。確率分布に対して定義する場合は「平均」と呼ばれることが多い。
例えば、ギャンブルにおいて掛け金に対して戻る金額の期待値とは、戻ってくる「見込み」の金額である。ただし、確率変数が期待値を取る確率が最大とは限らず、確率変数が期待値を取るわけでもない。しかし、独立同分布であれば、標本平均は期待値に収束することが知られている(大数の法則)。

うーん、ちょっと思ってたのと違う。。そうか、顧客満足みたいな文脈で使いがちだったけど、そもそもは確率論(数学)で使われる言葉だったんだ。
では、顧客満足における“期待値”とはどんなものでしょうか?私見ですが、こう定義してみます。

“顧客がモノやサービスの購入・導入を検討する“前”に、「これくらいはできるだろう」とか 「こういう効果が見込めるだろう」とイメージし、期待する状態”

といったところでしょうか。

つまり、B2Bであれ、B2Cであれ、客商売においてはこの期待値を超えることで、お客様に満足していただき、自社のファンになってもらえる ということが言えそうです。

顧客からの期待値はコントロールできるのか?

期待値_2

ここで、期待値コントロールという言葉にも触れておきたい。期待値コントロールというのは、つまり、顧客が期待しているハードル(効果効能や機能要件)の高さを購入・導入“前”に上げたり下げたりしておくこと。
といえます。

先の期待値の説明でも、ここの期待値コントロールの説明でも重要なのは、期待値が生まれるのは、顧客が製品やサービスを購入・導入する“前”に という点です。
期待値はあくまで、その製品やサービスを使ったあとではなく前にイメージするものなので、これをコントロールするタイミングは、必然的に購入・導入を検討している段階 となります。

期待値を超えるためには、上げるか下げるか?

顧客からの期待値が高かろうが低かろうが、自社が提供できるサービスレベルや機能特性は基本的には変わりません。
つまり、自社が提供できるアウトプットよりも、事前の期待値が低ければ、相対的に「顧客の期待値を超えた」状態となり、逆に事前の期待値が自社のアウトプットよりも高ければ、「期待値を超えられていない」状態となります。

期待値

① 期待値を超えるアウトプットを出す

前述のとおり、期待値を超えるためには自社のアウトプットが期待値ハードルを越えなくてはなりません。そのための方法として考えられるのが、アウトプットの質を高めること。
「簡単に言うなよ…」ですよね。はい、簡単じゃないです。
自社がこれまで提供していたサービスのクオリティを急に上げるなんて無理難題です。しかし、このような考え方をしてみてはいかがでしょうか?
「Aという機能に関しては、期待値を超えられていないけど、B・Cという機能においては期待値を超えることはできる。機能一つ一つではなく、トータルで期待値をこえる」というもの。

行動経済学の観点では、人が何か製品・サービスを選ぶときは、得てして不合理な理由であることが多く、これ!という一つの理由だけで選ばれるわけでもありません。
全ての人のすべてのニーズを満たす製品・サービスというものは存在しないので、顧客のニーズを細分化して、期待値を超えられる部分と越えづらい部分に分け、トータルで期待値を超えていくという方法です。

② 事前の期待値コントロールでアウトプットを良く見せる

前述の通り、顧客の中で期待値という基準が出てくるのは、購入・導入よりも前の段階です。
前ということは、例えば製品スペックを見ているときや、営業が商談をしているとき。検討段階を表すファネルでいうと、「比較検討フェーズ」以前ということになります。
ここで期待値を下げるために、安易に「いや~、それはできないっす」なんて言ってしまったら、期待値を超えるどころか購入してもらえなくなります。
あくまで期待値を下げるのではなく、コントロールすることが重要です。
例えば、
◆「AAは難しいのですが、BBやCC、それにDDの部分ならばご期待に添えると思います」
◆「お客様が〇〇までやっていただけるようでしたら、△△以降はこちらにお任せください」
◆「最初は難しいと思いますが、第二フェーズからは問題なくクリアできます」
とかいうセールストークになるでしょう。

このように期待値をコントロールするために必要なのは、大きな風呂敷や二枚舌ではなく、「顧客が本当は何を解決したくて、この製品・サービスを検討しているのか?」をしっかりと把握することです。
これって、つまり、ジョブ理論で書かれているプロセスと同じなんですね。

とはいえぶつかる“期待値”と“アウトプット” 緩衝材となるのは?

理屈ではわかっていても、営業は売り上げを負うものだし、サービス部門は効率やコスト責任を負うものです。必ずしも期待値がコントロールされつくしたビジネスばかりにはならないでしょう。そんな時に緩衝材となるのが、B2B界隈で話題のカスタマーサクセスです。
カスタマーサクセスとは?と今更説明はしませんが、カスタマーサクセスの本分は、「顧客を成功に導くこと」です。
期待値とアウトプットに多少のギャップがあっても、顧客満足を向上させ、成功ノウハウを伝え、伴走し、一緒に成功を目指します。
そして、すでに期待値を持った顧客と一番接点をもつのもカスタマーサクセスです。

多くの顧客に出会い、話を聞くことで、期待値ギャップが生まれやすいポイントやパターンが蓄積されていきます。
そのギャップを埋めることももちろん大事なのですが、カスタマーサクセスのもう一つの役割が、社内フィードバックです。
顧客の声から類推される期待値ギャップ発生パターンを、プロダクト部門や営業部門、マーケティング部門にフィードバックし、期待値ギャップが生まれにくいビジネスの数を相対的に増やしていくことも求められるのです。

カスタマーサクセスの役割は、力づくで何とかすること ではありません。(その要素も時には必要ですが…)

期待値を超える裏技! 「期待値をくぐりぬける」

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なんだそりゃ、という感じですが、高すぎる期待値のハードルを上からではなく下からくぐるという作戦もあります。「期待値超えてねーじゃねーか!」とお叱りを受けそうですが、ハードルを上から超えるという正攻法ではどうしても時間も労力もかかるという場合、さっさとくぐって通り抜けてしまい、別の(上から超えられそうな)ハードルに立ち向かうという作戦です。
新しい製品・サービスを導入した後は、使い方や運用など、当初想定した以外の躓きポイントが次から次へと出て来ます。それらを一個ずつ丁寧につぶしこむのではなく、超えられるハードルを先にいくつも超えてしまい、信頼や手応えをべつの部分で充分に感じてもらうのです。
そうすると(別に有耶無耶にするわけではありません)当初想定されていた期待値よりも大きな満足感を提供することができるのです。

期待値をコントロールすることで、より強くなれる

このように、期待値はそもそも検討段階で自然発生するものであり、そしてそれを相対的に超えることは可能です。
そもそも期待値があるということは、顧客が自社に期待を持ってくれているということ。いたずらに期待値を下げるのではなく、真の顧客ニーズを把握し、嘘無くできることを真摯に提案・提供することが大事です。
そして、そのプロセスを回し続けることで、自社にとって最適な顧客像が見えてくることでしょう。このプロセスを繰り返すことは、効率的に最大限の満足を提供するための重要なプロセスといえるのではないでしょうか。

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