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【鑑賞記録】フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024 浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルワールドドリーム・ウインドオーケストラ(2024/8/3)

 昨日足を運んだフェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024の浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラさんの演奏会の鑑賞記録です。

 素人目線の感想ですので内容が拙い部分もあるとは思いますがご容赦ください。

演奏会情報

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024
浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ

■日時
2024年8月3日(土)13時30分開演
(終演:15時30分)

■会場
ミューザ川崎シンフォニーホール

■演奏者
原田慶太楼(指揮)、浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ

出演者は以下の通り(プログラムより引用)

浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ出演者一覧(プログラムより引用)

■プログラム
(プレコンサート)
・R.シャーマン(高橋宏樹編曲): スーパーカリフラジリスティック エクスピアリドーシャス
・P.デスモント:テイク・ファイヴ
・中川峻彰: ゴールデンパインスムージー
・E.グリーグ(塩安真衣子編曲): ホルベルク組曲から 第1楽章

(本プログラム)
・三善 晃:吹奏楽のための『クロス・バイ マーチ』
・フランク・ティケリ:ブルー・シェイズ
・上田素生:あまやどり
・真島俊夫:三つのジャポニスム
  Ⅰ. 鶴が舞う Ⅱ. 雪の川 Ⅲ. 祭り

・山本菜摘:UTAGE~宴~(吹奏楽版世界初演)
・酒井 格 : たなばた
・リヒャルト・ワーグナー(カイリエ編):エルザの大聖堂への行列
・ジョン・マッキー:レッドライン・タンゴ
・ベルト・アッペルモント:ブリュッセル・レクイエム
  Ⅰ. 無垢 Ⅱ. 冷血 Ⅲ. 追悼~我ら甦らん Ⅳ. 新たな日

(アンコール)
・ジョン・フィリップ・スーザ:星条旗よ永遠なれ

曲目(プログラムより引用)

演奏会の所感

 2005年よりスタートしたミューザ川崎シンフォニーホール主催の「フェスタサマーミューザ KAWASAKI」は約2週間半にわたってほぼ毎日演奏会が開催される真夏のクラシック音楽祭です。
 公式ホームページによると毎年3万人が訪れるイベントとのこと。

 私自身も毎年楽しみにしているイベントで、予定が空いていて気になる公演があるときは伺うようにしております。

 直近だと2021年のジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団のオープニングコンサート(ヴァレーズ:アルカナ、ラヴェル:ピアノ協奏曲、ガーシュウィン:パリのアメリカ人など)や、同じく2021年のアンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会(レスピーギ:シバの女王ベルキス、ローマの松など)を聴きに行きましたが非常に満足度の高い演奏会でした。

 浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラについて、恥ずかしながら団体の情報をほぼ知らない状態で演奏会に足を運びましたが、パンフレットによると以下のような団体とのことです。

 1995年より「音楽の都 浜松」実現の一環として開催されている管楽器に特化した世界最大規模の音楽祭「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」の25周年記念で編成された特別吹奏楽団が母体の吹奏楽団。世界的に活躍する同アカデミー教授陣と日本を代表するトップアーティストで年度ごとに違うメンバーで編成されるまさに「一期一会のドリーム・ウインドオーケストラ」。

浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル
オーケストラ・プロフィール(パンフレットより引用)

 国内外のトッププレイヤーが音楽祭のために集結した団体とのことで、オーケストラだとセイジ・オザワ 松本フェスティバルで演奏を行う「サイトウ・キネン・オーケストラ」、吹奏楽だと2017年に活動休止した「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」と同じような立ち位置でしょうか。

 私が今回足を運んだのも豪華出演者たちに惹かれた、という点が大きな理由でした。
 全体的にトッププレイヤーが集まっているのですが、特にサクソフォン(須川展也、ジャン=イヴ・フルモー、住谷美帆、西尾貴浩、波多江史朗)そしてトロンボーン(ラーシュ・カーリン、桒田 晃、鳥塚心輔、野々下興一)が豪華なメンバーで、演奏会を非常に楽しみにしていました。

 以下、プログラムごとに簡単に感想を書いていきます。プレ・コンサートは間に合わず…、本プログラムのみとなりますがご了承ください。

・三善 晃:吹奏楽のための『クロス・バイ マーチ』

 演奏会オープニングは三善晃:吹奏楽のための『クロス・バイ マーチ』でスタート。いきなり難曲でスタートでしたが難しさを感じさせない華やかな演奏。テンポも全体的に速めで、爽やかにすら感じられる演奏でした。
 1曲目から身体全体を大きく使ったダイナミックな指揮をする原田さんが印象的です。

・フランク・ティケリ:ブルー・シェイズ

 2曲目はティケリの『ブルー・シェイズ』。指揮の原田さんはこの楽曲を2021年の東京交響楽団 正指揮者就任記念コンサートや他の演奏会でも演奏しており、十八番のレパートリーのようです。

 コントラバスの地代所さんが演奏前に電子楽器を持ち替えていて、あれはなんの楽器だろう?と思って興味津々で聴いていました。(後程、原田さんのMCで「サイレント・ベース」という紹介がありました。)
 約60人という大きな編成に対してサイレント・ベースが1人でしたが、しっかりと存在感のある音で聞こえてきて驚きました。

 ブルー・シェイズも相当難曲だと思いますが、演奏者が非常に楽しそうに吹いていて見ているこちらまで楽しくなるような演奏でした。
 途中の長いクラリネットソロを吹くのはマイケル・コリンズ氏。洒落っ気たっぷりの演奏で素晴らしかったです!ソロのあとに観客に拍手を促す原田さんも素敵でした。

・上田素生:あまやどり

 3曲目の上田素生『あまやどり』は初めて聴く楽曲です。2023年5月に播磨国吹奏楽団演奏会で初演されたばかりの新作とのことで、以下Youtubeに初演時の演奏動画がありました。

 冒頭のソプラノ・サックスソロをはじめとした木管楽器の音色がどこかメランコリックで切ない雰囲気を醸し出していて素敵でした。
 このまま切ない雰囲気で曲が進むかと思いきや、予想を裏切って打楽器や金管が活躍し音楽が高揚していく展開となり聴いていて非常に楽しい作品でした。

 作曲者の上田素生さんも2階席前方で聴きにきており、演奏後に原田さんから促されて立ち上がっていました。

・真島俊夫:三つのジャポニスム

 第1部最後の曲は真島俊夫『三つのジャポニスム』です。この作品は私が高校時代から非常に好きな作品で、CDでは繰り返し全曲の演奏を聴いていたのですが、プロによる全曲の演奏を生で聴くのは初めてだったのでこの演奏会の中でも非常に楽しみにしていた楽曲です。

 「Ⅰ. 鶴が舞う」の鶴の音の表現は扇子ではなく白いビニール傘をバサバサさせることで表現していたのが印象的。ミューザ川崎の大きなホール上では扇子だと音量が足りないと判断してのビニール傘かと思いますが、そんな工夫の仕方があるのかと目から鱗でした。

 「Ⅱ. 雪の川」のソプラノサックスソロは須川展也さん。吹奏楽コンクールだとオクターブ下げる演奏もある難易度の高いソロですが、楽譜通り完璧な演奏で鳥肌でした。

 「Ⅲ. 祭り」は冒頭と終盤が快速テンポでの演奏。崩壊寸前のテンポまで上がってのクライマックスはまさに祭りが熱狂していく様子が表されているかのようで凄すぎました…!

 私自身がトロンボーン吹きなのでどうしてもトロンボーンパートに注目してしまうのですが、トロンボーンの鳥塚心輔さんが楽器を吹いていない時も身体を揺らしてノリノリで聴いているのを見て、演奏者側も本当に楽しんでいるんだな、ということが伝わりほっこりしました。笑

・山本菜摘:UTAGE~宴~

 第2部最初の曲は山本菜摘『UTAGE~宴~』で今回吹奏楽版の世界初演とのこと。管弦楽版は今年の5月に群馬交響楽団されたばかりだそうです。

 曲の途中、八木節が聞こえてくるので外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」とどうしても連想してしまいます。5分半の短い楽曲でしたが非常に楽しく聴けました。
 第1部の最後が「祭り」で終わって、第2部の最初が「宴」で始まるというプログラミングも素敵ですね。

 第1部で取り上げた上田素生『あまやどり』と同様作曲者臨席での演奏でした。
 それにしても、指揮の原田さんは近年若手作曲家への委嘱に積極的ですね。また、演奏も委嘱した1回限りで終わらせるのではなく、繰り返し演奏会で取り上げていて非常に好感が持てます。

・酒井 格 : たなばた

 第2部の2曲目は酒井 格 『たなばた』です。

 ここまでの楽曲を割とダイナミックな指揮をしていた原田さんがたなばたの前半アレグロ部分に入ってからほとんど指揮を振らず、演奏者に音楽を任せていたのが印象的でした。
 音楽を演奏者達に委ねることによって原田さん自身も舞台上で心から『たなばた』の演奏を楽しんでいる様子で、見ていて非常に温かい気持ちになりました。

 演奏は終盤のトロンボーンソロの後に受け継ぐトランペットソロだけほとんど聞こえなかったのが気にはなりました。(恐らく一緒に書いてある伸ばしのppの記号と読み違えた?)
 ですが、そんな些細なことはどうでも良いと思わせるくらい遊び心溢れる演奏で、トッププロ達がこの楽曲を演奏するとこんな素晴らしい演奏になるのか…と感激してしまいました。

・リヒャルト・ワーグナー(カイリエ編):エルザの大聖堂への行列

 第2部3曲目は『たなばた』に続き、トッププレイヤー達のハーモニーを楽しむことが出来る『エルザの大聖堂への行列』へ。

 ミューザ川崎のホールに溶け込む美しいハーモニーで、ラストの音がオルガンの響きのようになっていたのが心地よかったです。

 残響が消えたあとも観客はしばらく拍手が出来ず、「この響きをいつまでも味わっていたい」という気持ちでホール全体が一つになっていました。

・ジョン・マッキー:レッドライン・タンゴ

 レッドライン・タンゴからは編成が若干大きくなるので舞台上の転換の間、指揮の原田さんのMCが入りました。

 「せっかく国内外のトッププレイヤーが集まっているのだから、本当に難しい曲をやりたい」というような意図で『レッドライン・タンゴ』『ブリュッセル・レクイエム』をプログラムに組み込んだというようなお話や、舞台上の楽器がすべてYAMAHA製であるという紹介などをしていて興味深かったです。
 また、「明後日も全く同じプログラムですが鰻を食べに浜松まで来てください!」という演奏会自体の宣伝も盛り上がっていました。笑

 レッドライン・タンゴは前半・後半のスリリングさを楽しむのも良いのですが、個人的には何と言っても中間部の物憂げなタンゴの部分が好きです。

 予想通りE♭クラリネットソロとソプラノサックスソロが素晴らしかったのですが、サックス奏者同士途中顔を見合わせて「ここはこう仕掛けよう!」という音の会話が伝わってくる部分があり非常に印象的でした。

・ベルト・アッペルモント:ブリュッセル・レクイエム

 演奏会最後の曲は指揮の原田さん自身「数多ある吹奏楽のレパートリーの中でも、演奏が特に難しい作品」と語るベルト・アッペルモント『ブリュッセル・レクイエム』です。

 SNSなどでは「こんな作品、レクイエムではない!」などの意見もよく見かけるので、色々と思うところがあったり無かったりする作品です。
 正直個人的には作品自体に別に罪は無いと思っていて、むしろ17分近くあるこの楽曲をわざわざ7分程度にカットして演奏するようなコンクール文化が良くないのでは?と考えています。
 「『ブリュッセル・レクイエム』はレクイエムではない」という意見についても、なんとなく昔ネットで見かけた「天野正道作曲『おほなゐ』の第3楽章は明るすぎる」に通ずるものを感じます。

 やや話が脱線してしまったので演奏の感想の方に戻します。

 前半・終盤の技巧的な部分が目立つ楽曲ですが、技巧的なソロを担当した楽器の中でもトロンボーンのラーシュ・カーリン氏(デンマーク放送交響楽団)のソロがピカイチで素晴らしかったです。

 また、中間部のユーフォニアムのデュオ(アントニー・カイエ氏、安東京平氏)も非常に美しかったです。途中舞台前方の左右で演奏するトランペットソロも同じく美しい演奏でした。
 終盤のテンポを上げる部分は駆け抜けるような演奏でした。

・(アンコール)ジョン・フィリップ・スーザ:星条旗よ永遠なれ

 アンコールは「星条旗よ永遠なれ」で、お祭りの最後感が出ていて楽しかったです。
 指揮の原田さんは最初にテンポを出した後はピアノ椅子で聴いていて観客のように楽しんでいるのが面白かったです。笑

総括

 全体を通して非常にお祭り感が溢れる演奏会で、難しいことを考えず率直に楽しめました!

 指揮の原田さん関連で素敵だな、と思えたエピソードを最後に少しだけ書かせてください。
 サマーミューザは音楽祭のイベントなので、普段吹奏楽を聴かない人も演奏会を聴きにきている(要は「サマーミューザだからとりあえず聴いてみよう」という方も一定数いる)ようで、客層が普段の吹奏楽の演奏とは異なり老若男女かなり幅広い客層でした。

 上記のように普段吹奏楽を聴かない人が多いのも影響してなのか、実は今回第1部の最後の曲『三つのジャポニスム』の「Ⅰ. 鶴が舞う」の後で、楽章間の拍手が起こってしまいました。

 私も最初は「え、ここで拍手?」なんて思ってしまったのですが、指揮の原田さんは咄嗟に機転を利かせて客席の方を振り向き「拍手してもいいんですよ」と優しくニッコリ笑ったのでした。

 これには「素晴らしいものは素晴らしいんだから、曲の雰囲気に圧倒されて思わず拍手をしてしまっても良いじゃないか。」と気付かされたような気持ちになり思わずハッとしてしまいました…!

 こういう咄嗟の機転や、途中のMCのトークなど含め、指揮の原田さんは演奏者や観客を盛り上げるのが非常に上手いなぁと思いました。
 いまやプロオケで引っ張りだこですが、ぜひ今後も吹奏楽をたくさん振ってほしい指揮者だと思いました。

 長文となってしまいましたが、演奏会の感想は以上です!浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラがサマーミューザに出演するのは今年が初めてとのことですが、来年以降もぜひ出演してほしいです!

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