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仙台のファストフード・K

先日の出来事。

デスクワークのお仕事の日は、
いつもならお弁当を持っていく。

でもたまに作れない時もあって、そんな時
私は仙台のビジネスマン御用達のうまい、早い、日本式ファストフード、に食べに行く。

そばの神田である。
(このお店仙台にしかないらしい?)

そばの神田は基本、立ち食いそばスタイルなので
女性にはハードルが高く感じるのだが、営業職の時はこの早さがありがたかったのでよく使わせて貰っていた。
営業の頃、朝から夜遅くまで走りっぱなしの事もあるから注文からご馳走さままで10分はありがたかった。しかも、500円でお釣りまで来る。

現在は、椅子席のある神田も出てきて、ビジネスマン以外も入っている様子だ。

月に2〜3回来るこの店舗は25人程、壁側に椅子席があり、立ち席は半分くらい。ガラス張りの調理場では3人が忙しそうに手元を動かしている。
立ち上る湯気が、慌しく換気扇に吸い込まれては、すぐに消えてゆく。
まるで、このお店にやってくる人の流れのようだと思った。多くの人は時間に追われ、流れていく。

店内は13時を過ぎているが15人は居るだろうか。
スーツ姿に鞄を持った人、作業着姿の男性、私服姿の大きいカバンを持った女性。
椅子席の方はほとんど埋まっている。
一番奥から3席目が空いているので、そこに座り、蕎麦が茹るのをしばし待つ。

考えてみたら、お蕎麦、おむすび、お稲荷など
日本食には、昔からファストフード的なすぐ食べれるものや、冷めても美味しく食べられる食文化があったんだなぁー。

そんなこと考えてるうちに、
「わかめ冷や蕎麦のお客様〜どうぞ〜」

さすが、ファストフード。
この早さが世のビジネスマンのランチの時間を短縮し、その分午後の活力お昼寝の時間を伸ばしてくれる。

神田は蕎麦がすぐ茹だるように細麺なので、冷やし蕎麦が個人的にはおすすめ。

美味しい。神田を好む理由は、普通に美味しいからもある。100円程でトッピングも選べるし、蕎麦つゆの味って好み分かれると思うのだけれど、個人的には飽きがこない感じが好きだ。

食べ終わって席を立つ。
お皿と蕎麦湯を飲んだコップを返却口に戻しに行く。

すると、びっくりする声が飛んできた
「いつも有り難う御座いまーす!」
男性が蕎麦を茹でながら笑顔でこちらを見ている。

目が合っている。え?私かな?

「ご馳走様ー」
小さく挨拶を返して外に出る。

ビジネスマンの聖地で、OLのわたしが「いつも」と言われたのがなんだか少し恥ずかしくて、背中のあたりがむずがゆくなった。あの人、いつも来てるのね。なんて思われちゃっていたのだろうか。
「月に2.3回くらいなんだけどな〜覚えられちゃったか…」

歩きながらふと、営業時代を思い出す。
私は当時“お客様日記“をつけていた。

これは、記憶力が悲しいほどなかったから始めたことだったのだが、後々とても役に立った方法の1つだ。
ルーズリーフとバインダーを用意して、1枚に1人の名前を書く。
その下に、訪問した日付と、話した内容を簡単に書いていく。そうして、次回の訪問の前に、少しだけ目を通す。すると、面白いことが起こる。

いくら新しい話を持っていっても、聞き耳を立てない人が居たので、会う事がちょっとしんどくなっていた。ネタ切れしていたし、前回、前々回の訪問の時の話を話題にしてみたところ反応がとても良かったのだ。初めは、今日は機嫌がいいのかな?と思ったのだが、

「よく覚えていたね〜」
この人が何気なく言った一言が、答えだった。

人は自分に興味を持ってもらえると嬉しいのだ。
特に営業において、大事なことは聞くことだ。
でもこれは、きっと人間関係でも同じだと思う。

貴方にとっての誰か(友人、知人)は沢山いるけれど
誰かにとっての貴方は、1人しかいない。

案外、この1人ととことん向き合う姿勢が取れていない営業は多かった。
お客様=その他大勢になってしまうと、曖昧な返事が多くなる。すると一気に信用がされなくなっていく。

“お客様日記“はすぐに効果は出なかったが、
長いスパンで見たら、信用が詰まれ、紹介が出るようになっていたからやって良かったと思う。

さっきの「恥ずかしい」の感情には「嬉しい」の成分も少しは含まれていたのかもしれない。そう思えたら、少しだけ口角が上がっていた。

そう思ったら、なんだか営業時代のあれこれを思い出してお昼時間よりも回想の時間が長くなってしまった。

足早に会社に戻る。
営業職もまぁまぁ楽しかったかな…
そんな事を思いつつ、午後もひたすらパソコンの画面に文字を打ち込む。