朝の寒空の下、大きな駅の一隅に座り、佇んでいるひとがいた。そばにはリュックがあって、ぱんぱんに膨らんでいた。焦点が合っていないような顔つきで本を眺めていた。一瞬、何を読んでいるのですかと聞こうと思ったけれど、あまりに汚れた身なり風貌に声だけが蒸発した。冷たい人間の仲間入りをした。

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