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励ましのサイエンス 其の8 ハヤカワ五味さんの場合

ハヤカワ五味さん
株式会社ウツワ 代表取締役

これまで励まされた言葉もたくさんありますが、私の場合、態度で示してもらえることが一番嬉しいと感じます。

たとえば、ものすごく忙しいはずなのに時間を割いて会ってくれたり、連絡をくれること。「あの時、こうだったけど大丈夫?」と覚えてくれていて、継続的に思い出してくれること。

相手にとって何のメリットもないはずなのに、そんなふうに態度で示してくれるのは、すごいことだと思います。励まされますし、良い意味でのプレッシャーも感じて、もっと頑張ろうと思える。

大学時代、カヤックなど何社かでインターンをさせてもらいました。正直、会社側にメリットはなかったと思います。私は在学当時から起業していて、卒業後に就職する予定もありませんでした。

ある会社でインターンしていた時、その経営者からこう言われました。

「お前は、今後も社長をやり続けるだろう。だから、いま社会人経験をさせてやりたいんだ」

その会社で私はほとんどバリューを出せていなかったと思います。でも、そう言って面倒を見てくれて、おかげで最後に少しだけ成果らしきものを出せて、その成功体験が今も生きています。

その人と私は似たところがあったように思います。だから自分の失敗を繰り返してほしくないと考えて、応援してくれたのかもしれない。そんなふうに勝手に思っています。

やなさわ:なるほど、面白い。その経営者は、自分のメリットは考えていない。そこがポイントなのですね。損得を考えて近づいてくる人は、どんなにいいことを言っていても、励ましに聞こえないと。それは今までこの「励ましのサイエンス」で解明してきたことでもあるんですが、すべての励ましに共通する点かもしれない。

ハヤカワ:励ましって、きっと等価交換じゃないんですよね。自分には何の得にもならないはずなのに、私のことを気にかけてくれている。そんなスタンスそのものにすごく励まされる気がします。

やなさわ:人生のある場面で、あの人のたった一言に励まされたというエピソードもあるけども、誰かがずっと変わらず気にかけてくれて、その存在そのものに励まされることもある。そんな励ましのスタイルもあるかもしれないということですね。なるほど。

ハヤカワ:辛い時って孤独に感じやすいですよね。誰も味方がいないし、自分のことなんか見てくれない。そんなふうに考えがちです。だから、あなたのことを見ていますよ、気にしていますよということを伝えることだけでも、すごく価値あることではなんじゃないかなって。

「どうしているか気になって」という一言だけでも励まされると思いますし、自分も、そんなふうに励ませる人でありたいなと思います。すごく上手な人っていますよね。絶妙なタイミングで連絡をくれる人。

やなさわ:なるほど。となると、その上手なタイミングというのはいつなのだろうか。僕らは励ましの再現性を解明したいので、そのタイミングがわかれば良いのだけど、たとえば業績悪化が囁かれたり、外から見てネガティブな状況にいると思われた時などに、きっと落ち込んでいるだろうからと声をかけるのは、ちょっと意図的な感じもしますよね。

ハヤカワ:こちらが大変な時に連絡をくれるのは、すごく心強いしありがたいですよね。でも本当に落ち込んでいる時、うまく行かずに自信を失っている時は、悲鳴さえあげられない。連絡が途絶えがちですよね。特にベンチャー界隈だと音沙汰がなくなる時が一番マズイと言われたりもします。

それらは大抵、結構しんどい時です。だからこそ、何もない平場の時、しんと静かになった時にこそ早めに連絡できるかどうかは、励ましの再現性につながるのかもしれません。

辛い時は孤独に感じますし、人は孤独に陥ると、よくわからなくなって、判断を誤る場面もある。そういう時に人を頼れる人間でありたいし、頼られる人間でありたいとも思います。

やなさわ:なるほど。ということは日頃から、つまり平場の時にこそ、励ましたい相手のことは励まし続けることが重要だと。

ハヤカワ:はい。だから私も、折に触れて、とりあえず連絡するようにしています。でもそのタイミングは難しいので、たとえば街中で知人の担当したクリエイティブを見つけたり、本屋さんで著書を見つけたら、とりあえず連絡してみます。「見かけたよ」「どうしてる?」って。たとえば鎌倉にきたら、やなさんにメッセージしてみるとか。

そういうことを続けていれば、きっと確率論で、絶妙なタイミングで相手に届くこともあるはずですから。全部が届かなくてもいい。そう思って、気がついた時に数を送るようにしています。

やなさわ:なるほどなるほど。何かその人のことを想起することがあった時が励ましのタイミングで、それを続けることが励ましの方法論につながるということなのですね。


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