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小説 ー名前ー

ー名前ー 1

俺はいつも独りだ。

私は両親にしか名前を知られてはならない。

俺は何をするにも、全ては両親からの言いつけ。

私が唯一名前を教えてもいいのは1人いる。

俺は何もできない。

それは…………。


俺はいつもの勉強に飽きていた。
やらなくてもわかる問題を。つらつらとずっとやっているのだ。

それより街にかり出て色々と見た方が楽しい。
外に出るのにも俺の後ろには“あいつら”がついている。

いつもは気にしない。なのに今日は嫌だった。

あいつらと少しラフな談笑がしたかったのもあるが、どこか嫌だった。

だから今日は“あいつら”をまいた。


「敦。」↑今野敦。いわゆるふわふわ系の男だ
「藍翔くんだぁー!」
俺が名前を呼べば明るい。人懐っこい笑みを浮かべこちらに駆け寄る。

「どうしたの?藍翔くん?。珍しいねー。誰も後ろに付けないで街に来るのー………………?藍翔くん?」
敦の質問に藍翔が答えないのだ。いつもどんな話でもきっちりしている男が。
(ここで余談俺岩本藍翔いわもとあいとはこの国の国王の息子。一応王子だ。ん?今の時代か?今は……一応戦国時代 だ。)
「ん?あ、あぁ。いや、ね。」
藍翔らしかぬ驚いたひょうじょうだ。
「藍翔くんどしたのー?何かビックリすることあったのー?」
「あれを見てみろ。」
藍翔がそう言い目線を預けている先は複数の(と言っても2〜3人だ)男が何かを囲んで罵詈雑言を浴びせている。その中で罵詈雑言を浴びせられている者を藍翔は一瞬だが見てしまったのだ。
「敦。行くぞ。」
「いーよー」
そして2人はその者達の元へ歩み寄った。

「おい。お前ら何をしている。」
そう藍翔が言えば男どもはあぁ?と言った態度で返してきたが、藍翔の顔を見た途端さっきの態度はなんだったのか幻なのでは?と疑うほどに態度を翻してきた。
「あ、岩本の……!い、いえ。私共はこの薄汚れた者を見かけ話しかけるものを考えろと教えていただけです!!」
男共はさも、正当な理由で話していたと言い張る。少し間が開き敦が
「あーあ。怒らせちゃったー。俺はもー知らないよー?」
敦はそう言うとどこから取り出したんだ。とツッコミたくなるが、家から持ってきたのだろう団子を(敦は「陽の泉」 ひのいずみの息子。そして大食い。)食べだした。
「真のことか嘘のことかそれぐらい俺にもわかる。」
そして藍翔は、彼らの元に歩み寄り多分その中の代表格であろう男の方に手をかけた。すると足に力が入らなくなったのかのようにがくりと落ちた。
「今はこれで許してやる。今すぐ俺の前から消えればな。」そして2人は驚き男を担いで逃げていった。

そこに残ったのはひとりの少女。
顔を面で隠した少女。
藍翔にとってどこか懐かしさを感じるものだった。

「大丈夫か?」
「大丈夫ー?お団子食べるー?」

声をかけると少女は黒い綺麗な髪を揺らし面を被った顔をこちらに向けた。
「助けていただきありがとうございます。岩本藍翔殿。そして今野敦殿。」
黒髪の少女は二人の名をさぞ当たり前の事のように言ってのけた。
「おい。何故俺達の名を知っている?俺はまだしも敦まで……。」
すると少女は面の上からでも分かるような動揺っぷりで一瞬あたふたしたがすぐに何も無かったのかと錯覚するほど落ち着いた。そして
「申し訳ありません。御二方のお名前を知っていた。それ以上は…………。」
藍翔は静かに考え答えた。
「分かった。無理には聞かない。だからお前の名を教えてくれないか?」
少女はしどろもどろになり慌て始め告げた。
「私の……名は……サヤネと申します。以後お見知り置きを。」
そう言うと少女は立とうとした。だがあの男達は見えないようにだが罵詈雑言だけではなく暴力まで振るっていたようで少女は立とうにも立てなかった。
仕方なく2人は少女いや、サヤネを連れ隣の国の国王のお抱えの医者の息子。加差野白雨(かさのしろう)(彼はその医者の息子)の家に連れていくことにした。